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中国ビジネス、中国学、中国語などに飛び込もうとする人たちに読んでもらいたい書籍③
日本国内ではけっこう「闇の組織」化してしまっている、「中国共産党」という組織。
「気味が悪い」とか「非合法組織」めいたイメージばかりが広がっているが、原則的に言えば、中華人民共和国の政権与党、執政党なので、公的な組織であることは、ちょっと考えればわかるようなもの。
それでも「恐怖の闇組織」と言われてしまうのは、組織トップそのものの透明性にあるのだろうが、本書はそうした部分を取り払い、非常に客観的に、かつ冷静に「中国共産党」という組織を解説している書籍。
まさに、中国という国と付き合うための基礎的な組織と言えるだろう。
(そもそも、ヘゲモニー政党制とか民主集中制とか言われるやつである)
書名:中国共産党世界最強の組織~1億党員の入党・教育から活動まで
著者:西村晋
出版:星海社新書
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まず中国共産党に入党するというのは、それなりにハードルがある。
私も上海の大学院に在学中、「今年の学生はみんな優秀で、党員に推薦できる人が多い」みたいなことを事務の教員が言っていた。
しかし、教授クラスになるといわゆる「民主党派」の先生がいたりと、必ずしも共産党員と言わけではなかった記憶がある。
党員であると、もちろん国営企業などへの就職も有利だし、ものの分かった企業であれば「党員=優秀学生」という印象を与えてくれる。
なので、中国共産党員というのはごく普通の、ありふれた存在なのである。
また組織機構も実はけっこうシステマチックだ。
もちろん中央政治局なんかだと、泥沼の政治闘争もあるだろうが、そこから下がって民間に近い街道、社区などになって来ると、エリアの衛生とか季節の催し物などが入ってきて、同時に「社会の困り事の解決の場」にもなってくる。
14億もの総人口を、ある程度穏やかに統治するには、非常に適した組織構造になっているのである。
もちろん副作用もある。
ゼロコロナ政策時における過剰な移動規制などがそれに類するだろう。
上部の方針が下部に伝わる過程で、その層ごとにそれぞれの理解が加えられ、過剰な対策に走りやすいという部分である。
ただ、一般には「民衆の生活向上」のための相談窓口、というのが末端党員のお仕事となっている。
例えば、中国共産党員が総出で日系企業などに対してスパイ活動を行っているイメージがあるが、そもそも一般の「街道」と呼ばれたりする地域密着型の党員にとって、そういったものは非常に遠い話だったりする。
さらに言えば、上記のように就職に有利というだけで入党し、幽霊党員になったりするケースもかなり多い。
中国共産党を過善評価するつもりはないし、最近の中国政府(というか習近平さん)が「覇権主義的」になりつつあるというのも否定できない。
ただ、同時にそうした中国と相対するときに妖魔化したイメージだけではなく、「普通の人」の現状を冷静に見つつ、政治的、思想的、さらには人道的面から中国を評価する必要が求められていると感じる。