FIRE後の海外移住について
私は早期退職した後、生活の拠点を物価が安い海外に移すことを真剣に検討しました。
特に、タイに何度も訪問するうち、長期滞在している方達と知り合い、色々と話を伺いました。
しかし、海外移住後の生活実態を聞いてみたうえで、自分自身は当面海外移住をしないという結論に達しました。
なぜそのような考えに至ったのか書いてみたいと思います。
FIRE後の海外移住のメリット
FIREの条件として、年間総支出の25倍の金融資産を形成するというものがあります。
つまり、年間総支出額を低く抑えれば抑えるほど、FIRE達成のために必要な資産額が低くなり、その分早くFIREを達成することが可能になるということです。
年間総支出を低く抑えるための一つの手段として、物価が安い地方都市に移住する人もいますが、東南アジアなどに移住するという選択肢もあります。
私は元々地方都市出身で、田舎の生活に辟易していたということもあり、FIRE後の住居として地方都市という選択肢はありませんでした。
物価が安い東南アジアで日本人に人気がある移住先としては、タイの他にも、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどがあります。
それぞれの国には一長一短あり、完璧に100点満点ということはありません。
良い点、悪い点も含めて整理してみたいと思います。
移住先としての東南アジアの魅力
物価の安さ
東南アジアの国は、シンガポールやブルネイなど一部の例外を除き、物価はかなり安いです。
国によってばらつきがありますが、感覚的には日本の半分以下といったところでしょうか。
特に、人件費が安いため、タクシー代やマッサージ、床屋などのサービスの価格が安い傾向にあります。
また、家賃も全般的に安く、日本では考えられないような広さや設備のコンドミニアムに格安で住むことが出来ます。
また、国や都市によってばらつきがありますが、ホテルも格安で泊まれるため、コンドミニアムではなくホテルに滞在するというのも一つの選択肢です。
一方、海外からの輸入品、例えば自動車やスマホ、PC、洋酒、輸入食材などは高い傾向にあります。
また、最近は円安の進行によって、一昔前に比べると円換算した物価は全般的に高くなっています。
今後、円の相場がどのようになるか分かりませんが、日本と逆転することは無いのではないかと思います。
長期滞在ビザの取りやすさ
海外移住するためには、その国の長期滞在者用のビザを取得する必要があります。
東南アジアの国の多くでは、政策としてリタイア後の移住者を呼び込むために、リタイアメントビザを設定しています。
リタイアメントビザを取得するためには、多くの国では年齢が50歳以上や、一定額の預金や年金があることが条件となっています。
また、タイには、タイランドエリートという制度があり、お金を払えば50歳未満でも長期滞在ビザが取得できます。
このように、ある程度まとまったお金が必要ですが、海外からの長期滞在者を呼び込む政策を実施している国が多いのが、東南アジアの特徴です。
医療面での安心感
歳をとってから移住する場合、病気や怪我など医療面が心配になります。
この点については、大体どの国でも外国人向けの病院があり、かなり手厚く高度な医療が受けられます。
ただし、医療費がかなり高額になるため、民間保険に入っておくことは必須です。
私も一度、タイで激しい腹痛に襲われ病院に駆け込んだことがあります。
その病院は外国人向けの病院で、日本語通訳もいてとても親切に対応してくれました。
タイで病院に駆け込んだ時は、問診の後に血液検査と腹部エコー検査をやった結果、単なる食あたりということでしたが、検査費用と薬代だけで3万円くらいかかりました。
その時は、クレジットカードの付帯保険が適用になったので、個人負担はゼロでした。
ただし、クレジットカードの付帯保険は、90日の旅行までしか適用されないという条件が多いため、長期滞在者は別途保険に入っておく必要があります。
タイ以外の国でも、日本人や外国人が多く住んでいる大都市では、同じような医療サービスを受けられる病院があり、よほどの僻地に移住するのでない限り、医療面の心配は必要ないと思います。
移住のデメリットの検討
東南アジアへの移住はメリットばかりではなくデメリットもあります。
どの国に移住するかは、メリットとデメリットを総合的に判断する必要があります。
自然災害
地震大国の日本に比べれば、東南アジアは一般的に地震は少ないですが、2004年に発生したスマトラ島沖地震のように、大地震や津波が発生することがあります。
インドネシアやフィリピンは火山活動が活発なので、噴火や地震のリスクも考慮に入れる必要があります。
また、フィリピンやベトナムは、しばしば台風に襲われ被害が出ることがあります。
また、2011年のタイの大洪水のように、洪水もリスクになります。
地震や台風については、頻繁に襲われる場所と、全くと言って良いほど発生しない場所がはっきりと分かれているので、移住する際は自然災害リスクも考慮に入れて場所を検討する必要があります。
治安と政情不安
治安の良い日本に比べれば、海外はどこの国でも治安には問題があります。
日本と同じような感覚でいると、盗難や詐欺などに巻き込まれるリスクが高いでしょう。
現地の治安に関する情報をきちんと収集して、危ない場所に近寄らない、危険な行動をしないということに気を付ける必要があります。
ちなみに私は、これまで盗難や詐欺などに遭ったことはなく、自分自身が事件や事故に巻き込まれたことはありません。
ただ、長期在住者の話を聞くと、知り合いが被害にあったという人が多いのも事実です。
また、交通事故はたくさん見かけますので、自分が巻き込まれないように気を付けています。
また、東南アジアの国は一般的に政情が安定していないことが多いです。
軍隊によるクーデターや、選挙の際のデモや暴動など、日本では考えられないようなことが普通に起こります。
長期で海外移住する場合は、その国の政情が滞在にどのように影響するかも考慮に入れる必要があります。
食事とお酒事情
海外に長期滞在する場合、その国の食事が口に合うかどうかも重要なポイントになります。
私は海外旅行をする際、現地の人が食べているものと同じものを楽しむのが好きで、エスニック料理は全く苦になりません。
ただし、長期にわたってその国に滞在するとなると話は別です。
実際、海外移住者に話を聞いてみると、日本食しか食べられなくて、日本料理屋に行くか、自炊をしているという人もいました。
ただ、物価の安い東南アジアでも、日本料理屋は値段が高いわりに味がいまいちなことが多いです。
また、日本のコメや調味料、レトルト食品、お菓子などを売っている店もありますが、日本からの輸入品は日本の2倍から3倍くらいの値段の場合もあります。
また、インドネシアやマレーシアなど、イスラム教徒が多い国では、豚肉がタブーとなっているため、なかなか食べられない場合があります。
飲酒に関しても、インドネシアやマレーシアではお酒の入手自体が難しく、値段も高いです。
移住先を検討する場合、お酒事情も自分に合うかどうか重要です。
結局、海外移住するのか
以上のように、様々な点について検討したところ、結局私は海外移住はせず、日本に拠点を置いたまま、中長期の旅行を楽しむということにしました。
その最も大きな理由は、前回の記事で書いた通り、円安で経済的なメリットが減っているのと、両親の介護の心配があることです。
現在は非常に円高になっていて、海外移住した場合に必要な初期コスト、例えばリタイアメントビザを取得するための預金や、不動産の購入・賃貸費用などが高騰しています。
また、円換算した場合の生活費も、数年前の3割から5割増しくらいになっている印象です。
残念ながら現状では、日本の方が「安い国」になっているので、しばらくは日本での生活を楽しみたいと思います。
また、両親の介護については、現在二人とも健在ですがこの先どうなるか分かりません。
そのため、当面は東京近郊の現在の自宅に拠点を置きつつ、海外旅行4割、東北の実家1割、自宅5割くらいの比率で生活していこうと考えています。
海外移住は当面しないと決めたとはいえ、もともと海外旅行は好きなので、FIRE後はお金が許す限り行こうと思っています。
私が廻った東南アジアの移住先候補地についても、次回以降書いていきたいと思います。