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サイゴンで出会ったオランダ人・夫との馴れ初め
今年、結婚した。
結婚にあたって、これまでのことを思い出す機会が増えたので、「誰が興味あんねん!」という脳内ヤナギブソンに諫められつつも、オランダ人・夫との出会いを回想してみようと思う。
27歳。
これからの人生を惰性で生きていきたくない!
そんな衝動に駆られるお年頃、27歳。「人生一度きり。このままでいいのか?!」と不安に駆られるお年頃、27歳。一世一代の大冒険がしたいと夢に駆られるお年頃、27歳。
会社を辞めた。
会社を辞めて、まずしたこと?そりゃ、旅行でしょう。「人生の夏休み!」と銘打って
いざ行かん、ベトナムへ。
クィンちゃん
一人旅は気ままなので、大好きだ。でも、一方で、ご飯を食べる時は誰かとぺちゃくちゃ話しながら食べたいという願望がある。だからというわけではないが、わたしは一人で海外旅行する時、できる限り多くの現地の人と交流する。仲良くなった人たちと、食事をともにすることもしばしば。
ベトナムで出会った人の中で、One of the bestな出会いは現地人の女学生クィンちゃんだ。
なにがいいかって、まず、かわいい(前の記事からするにわたしは美形の女子に弱いようだ)。顎のラインが綺麗で、くっきりとした瞳と小さめなすっとした鼻、歯並びの良い口がバランスのよい顔立ち。その上、顔のサイズなんかは控えめにいってもわたしの3分の2くらいだ。エラを張り倒しているわたしの顔面が憎い。
そして、当時、21歳の彼女はとにかくピュアピュア。人の話を親身によく聞き、彼女の優しい心のフィルターで浄化された反応が愛しくて、「もう好き♡」ってなる。旅行中、自身の不注意でiPhoneを盗まれて傷心中だったわたしには、彼女の優しさがジュンジュワ〜と滲み入る。しかも、英語もうまく、頭の回転が速いので、ストレスフリーに会話が進み、深い話ができていい。仲良くなるのに時間はかからなかった。
多国籍なサイゴンのある夜
出会って2日目、クィンちゃんからお昼頃に「今、オンラインで知り合った旅行者の人と遊んでて、夜飲みに行こうって話になってるんだけど、一緒にどう?」とのお誘い。
わたしは、日中、別のベトナム人女子と遊んでいたが、その子は翌日仕事があるので、早々に帰宅。そのため、夜は空いていた。
夜、待ち合わせの時間。クィンちゃんが大きく手を振りながら、やってきた。
うん、かわいい。
そして、そのクィンちゃんの背後には、白人男性が。たれ目がちでグリーンがかった大きな瞳、クルクルとウェーブの間のような猫っ毛、フレンドリーな笑顔。髪の毛、眉毛の形、口元がどことなーーーくオーランド・ブルームっぽいとも言えなくもなくなくなくなく...∞...ない。彼がクィンちゃんが一緒に日中遊んでいた例の旅行者だ。
どうやら、日中、二人で映画やカフェをしていたらしい。いわゆるデートってやつだ。
ブルームは、オランダ人で28歳(当時)。仕事を辞めて、次の仕事を探す前に、3ヶ月間、カンボジア、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム...と東南アジアの国々を一人で旅をしているのだという。東南アジアでよく見かけるタイプの外国人だ。
わたしは軽くブルームに挨拶をし、3人で繁華街へと足を運ぶ。すると、ブルームの連れが男女5人がすでに待機していた。ブルームが道すがら仲良くなった旅友だったり、彼の同じゲストハウスの宿泊者だったり。みんなわたしと同年代くらいで、国籍は、英、米、仏、独、蘭と多国籍。
温暖な気候、気ままな一人旅、開放的な人々。ご飯も美味しいし、安い。お酒がぐんぐん進む...めっちゃ楽しい!若さを謳歌するというのを体現したような時を過ごした。
夜も深まってきた頃、クィンちゃんがそろそろ帰らなきゃというので、わたしも一緒に退席することにした。すると、ブルームも「クィンちゃんを送る」と言って、一緒に付いてきてくれた。繁華街で人は多いといえど、たしかに女性2人で真夜中に歩くのは、よくないので、心強い。
ある交差点で、わたしは自分のホテルの方向に。クィンちゃんとブルームは彼女の自宅の方に向かうため、お別れの挨拶した。クィンちゃんとは翌日も会う予定だったが、ブルームとはこれっきり....になるはずだった。
緊急会議
二人と別れた地点からホテルまでは100mほどの距離ではあったが、念のため、全力疾走。フロントデスクの兄ちゃんから不審者を見るような視線を受けながら、部屋に戻り、息を整えていると、クィンちゃんから現地で購入した激安携帯にピピピッとSMSが入った。今すぐ聞いてほしい相談があるとのこと。何事かと思い、「ホテル来る?泊まってってもいいよ?」と軟派な発言を繰り出すわたし。すると、「とりあえず、そっち行っていい?」と。
ほどなくしてクィンちゃん到着。
最初は、奥歯に物が挟まったような物言いだったが、少しずつ詳細を話してくれた。どうやら、わたしと別れたあと、ブルームと何かあったらしい。
「どうしよう。ブルームのこと好きになっちゃったかもしれない。今日、会ったばっかりだけど、彼のことが気になるの」とのこと。
え、なにそれ。か、かわいー!
『あの色男めェ』とニヤニヤしながら聞いていると、
彼女は続けて「実はね、さっき家まで送ってくれたでしょう?その時ね....」
うんうん。
「その時ね...........」
うんうんうんうん。
「キスされたの♡」
おい、ブルーーーーーーーッム!!!!!
外国人旅行者♂に御用心
いやはや、手が早い。
当時、わたしの中で、「アジア圏を一人旅する外国人男性」に対して、
外国人♂はアジアでやたらモテるのでヤリ逃げしがち
という頑ななイメージがあった。今思うと、ずいぶん失礼なイメージではあるが、自分自身そういう男性と関わらないように気をつけなきゃと用心していたのと、経験上、そういう人をよく見かけたというのも事実だ。
クィンちゃんによると「ちょうど送ってくれたから、家に入る前にお礼を言ったの。そしたら.....♡でも、その後、特に何も言わず、彼は立ち去って行ったわ」と。
めっちゃ思わせぶり!!
続けて、「どういうつもりでキスをしたのかな。彼もわたしのことが気になってるとか...明日、朝食を一緒に食べる約束をしてるんだよね。あーなんか、どうしよう!どんな顔して会ったらいいの?」と。
『もう、これだから外国人一人旅男子は!!!!いたいけなクィンちゃんを弄んで!!』とわたしは内心プリプリして聞いていた。
「クィンちゃん。ちょ、ちょっと落ち着こう。彼、けっこう飲んでたよね。しかも、数日後にベトナムを離れて別の国行くんでしょ?たぶんやけどね、あんまり期待しないほうがいいかも!そういう文化の人やねん。うちらが思ってるほど、キスの敷居が低いんよ。てか、腹立ってきた。ブルームさ、そういう文化の違い無視して、ピュアなクィンちゃんの唇を奪いやがって!!なんか、自分が特にアジア圏でモテ需要高いって分かった上で、そういうことしてない?!傲慢さが見える!クィンちゃんも、そういう人には気をつけていこう」
と、お酒の力に任せて勝手な説教を垂れ流した。実際、ブルームもクィンちゃんのことを好きになっていたかもしれないのに。
ひとしきりブルームのキス事件について、あーでもないこーでもないと考察をした後、クィンちゃんとはわたしはお互いの国のこと、家族のこと、将来のこと、めちゃくちゃ話し倒して、就寝。
翌朝、クィンちゃんはブルームとの会食へと向かった。でも、結局、朝食ではキスのことは話題に上がらなかったし、ブルームがクィンちゃんに気があるようなそぶりもなかったとのことだ。
ブルームめ。。。どういうつもりだったんだ、あいつ。
ベトナムから帰国。そしてインド。
ブルームへの苛立ちはさておき、ベトナムを満喫したわたしは身も心もエネルギー100%に充電され帰国する。
しばらく身辺整理をした後、転職活動をし、ベトナム旅行から半年後、わたしは転職先の勤務地インドへ飛ぶこととなった。まさか自分がインドで暮らすことになるとは思ってもみなかった。少し笑える。
渡印後、最初の数ヶ月は慣れない土地での生活や新しい仕事で覚えることがいっぱい。せっかくチャージされたエネルギーはすぐに消耗された。
そんな時、幸運にもインドの新年・ディワリで6連休をもらえることになったのだ。
「とりあえず、インドから離れたい!」
と、思い切って、弾丸一人旅を決行。今まで行ったことがなくて、飛行機がお手頃だったベルギーへ。
SNSで友人にベルギー情報を求めたところ、ブルームからプライベートメッセージが!
「ベルギー行くの?ベルギー(北部)だったら、オランダ語だし、行きたいところ案内してあげるよ。しかも、僕の住んでるところから、そう遠くないんだよね」と。
ベルギーで再会
実は、ブルームとはベトナム旅行の後も、月に1回あるかないかのペースで連絡をとっていた。わたしは旅行先で出会った人とオンラインで交流を長く続け流ということは少なかった。最初は、旅行の話やお互いの国での生活の紹介をし会うが、お互い忙しくなり出して、どちらからともなくフェードアウトしていくというのが定石だった。ブルームとも最初はそんな感じやりとりをしていたが、わたしが「日本では電車でめっちゃ寝てる人多いねん」と写真をつけて送ったことがきっかけで、「公共の場で寝ている人の写真を送り合う(メッセージなし)」という謎の関係に発展していた。
そのうち1、2回だけテレビ電話をしたのだが、思ってたより真面目でいいやつだということが判明した。
彼の印象は「パリピなプレイボーイ」から「意外と真面目なチャラ男」くらいに格上げされていた。ので、ベルギーでの再会に同意することにした。
もともと彼は、クィンちゃんのデート相手。そのため、ベトナムでも自分を可愛く見せたりという女子的に気張ることがまったくなかった。ベトナムで一緒に彼と写っている写真をみると、本意気100%の変顔を披露しているではないか。だから、再会するにあたって、ドキドキはなく、ただただ楽しみだった。
そして、ついにベルギーで再会の時が来た。
一人旅ほどの気ままさは当然ないが、普通の友達と行くよりずいぶん楽だった。興味がないところには「別に興味ないから、行きたくない」と言えてしまう感じ。これは、1度しか会ったことのない人にはなかなかできない踏み込みだ。
キスのこと
そして、わたしはこの調子で、そっとあのキスのことをブルームに聞いてみた。
すると、彼の回答は
「Well.... just happened」
チャ、チャ、チャ、チャラーーーい!
Just happenedて!さも自分の意思ではなく偶発的に起こってしまった事件かのように。キスなんてもんは、しようと思わなできませんがな!あんたの口は独立した意思があって、勝手にクィンちゃんの口元まで暴走したというのか。どんな唇しとんねん。
彼の文化では、たとえばクラブに飲みに行って、たまたま隣になった女子にキスをしたり、そのまま二人が乗り気であれば続きをしたり、逆になんとなく何もなかったり、みたいなことがよくあるそうだ。つまり、ちょっと気になった子に対して、キスしてみるというのはよくあることなのだそうだ。
だがしかーし!ベトナムで同じスタイルを展開するべからず。他文化の人に対して失礼になるかもしれないし、傷つけるかもしれないでしょうが。めっちゃ軽率や!と、しっかり説教おばさんモード発動。ブルームは本当に悪気がなかったみたいで、素直に「そうだね。どうしよう、今からクィンに誤っても遅いよね?」とめっちゃしょんぼりしていた。
はじまり
ベルギー・ブルージュで1日を一緒に過ごして、わたしはブルームに心を完全に開いていた。
その夜には、とんとんと大人な関係に発展。その後、恋人関係に。
インドに帰った時、
クィンちゃんに説教たれたわたしが一番ハマっとるやないか!
と、脳内フット後藤からのツッコミが入ったことは想像にたやすい。