晩秋。澄み渡る空。足元にしばれ。ああ、北海道。ああ、道東。
星に囲まれた時間にいます。
摩周湖の展望台で、星を待っています。
いや、現実は星を待っているわけではなく、お客が来るのを待っているのですが。
ひょんなことから星空の案内役をするように頼まれて、日々、夜空を見上げる日々です。
星座アプリを片手に、毎日のように夜空を見上げていたので一等星と季節の星座はあらかた頭の中に入りました。
そんな事情もあり、最近は飲み屋に入る前後にじっくりと星空を観察するのが日課になりました。
4時間ほど飲んで外にでると、天頂から南の空にかけて眩いばかりのオリオン座が輝いていて、その瞬間に「冬」を痛切に感じて、身体が震えました。
さて、現在、気温0℃。風速0m。
静寂に包まれた田舎町の風が吹かない夜。
気温0℃と風速0m。
季節の境界線。
ふと動きを止めた世界で
僕もまた動きを止めて
晩秋の夜気を吸い込み。
止める。
秋の終わりは、確実に、これからくる冬の予兆を強くはらんでいる。
15時を過ぎて沈んでいく太陽。
それは冬以上に冬を感じるサインのような気がする。
もうそろそろ、ストーブに、薪をくべて、のんびりとお茶を飲み、本を読みながらうたた寝したいのです。
それが道東での冬の仕事なのではないかと思うのです。
ちょっと話はズレますが、最近読んで面白かった本を一冊。
角幡唯介「極夜行」
極夜——「それは太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い、長い漆黒の夜である。そして、その漆黒の夜は場所によっては3カ月から4カ月、極端な場所では半年も続くところもある」
冒険家の角幡は、冬の極夜の時期に北緯77度47分のグリーンランド、シオラパルクを出発し、80日に及ぶ闇夜の中で冒険をして、人間にとっての太陽の存在を問う冒険をした。
冬を迎える前に、究極の寒さと暗闇の世界を想像すれば、今いる環境は大したことないと思うでしょ。