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「ローマ」
世界一周389日目(7/22)
お父さんが来る前に目を覚ました。
トイレで顔を洗い、歯を磨く。7時半になると職場の門が開く音が聞こえた。ジジのお父さんにグッモーニンと挨拶をする。
ここはイタリア、南にあるバーリという町。
ギリシャから昨日フェリーでビディンディシという町までやって来て、すぐにヒッチハイクを始めたものの、車がなかなか捕まらず二時間の待ちぼうけをくらった。イタリア一発目のヒッチハイクは失敗に終わりそうだったが、ガソリンスタンドでビートゥとジジの二人に出会い、今はジジの職場にに泊まらせてもらっているっていうーー…、長いね。
ようするに運がよかった。
イタリア二日目。
今日はローマに行く予定だ。
昨日、ジジとの会話の中で「明日はどうするの?」という質問があった。
ビートゥの話によれば今日はジジがローマに向かうから、一緒に車に乗せていってもらう予定だったのだが、どうやら違うみたいだ。きっと仕事の予定が変わったんだろうな。昨日寝床と美味しいご飯をごちそうになったんだ。これ以上求めることはない。
素直に電車でローマに向かおうかな。
「じゃあ、駅まで送ってくれる?」
「おやすいごようさ♪」
ジジは職場に9時頃屋って来た。僕たちはすぐに車に乗りこんだ。
「マルコのところに寄っていっていいかい?」
「いいよ」
昨日一緒にご飯を食べた友達のマルコと合流する。職場の前でマルコがやってくるのを待つ。イタリア人を見ていると脚が長い。なんだか日本の少年漫画に一番近い体系じゃないか。そう思った。ジジとマルコと一緒に朝のエスプレッソを飲む。本場のエスプレッソなんて初めて飲んだ。カフェにはエスプレッソマシンが置いてあり、後ろの棚にはお酒が沢山ならんでいる。文字通りのカフェバーだ。漫画の背景に還元できそうなものを実際に目の当たりにすると、思わずカメラを向けずにはいられない。
「やっぱりさ、イタリア人にはエスプレッソの飲み方みたいなのがあるの?」
「?ないよ」
特にこれといって飲み方はないみたい(笑)。
車の中でマルコが残念そうに言う。
「もう少しシミがこの町にいるなら、バーリの町を案内したんだけどね」
「うーん。今回は他にも沢山行きたいところだあるからね。またいつか。ね。」
シェンゲン協定さえなければ、ゆっくりイタリアをまわれるのになぁ。そう思った。協定を結んでいる国を3ヶ月でまわりきるなんて無理だ。僕の時間のかけたい国はチェコとドイツとスウェーデン。ごめんね。イタリアは駆け足で。
ジジの車で向かった先は駅の側のバス会社。あれ?
ジジとマルコは二人でオフィスの中に貼ってあるバスのタイムスケジュールを確認している。
「大丈夫だよ。チケットは自分で買うって」
「気にしないでくれ。これはおれたちからのプレゼントさ」
ヨーロッパに入って交通費がバカにならなくなった。主要都市間だったら30ドルは越える。だから僕はヒッチハイクで旅をして来た。それを二人はローマ行きのチケットを昨日会ったばかりのこのアジア人にプレゼントしてくれるというのだ。
僕が描いたイラストはそこまでの価値があったのだろうか?喜んでくれたのは確かだけど。
「グラッツェ...」お礼を言ってチケットを受け取った。
「じゃあバスは時間なればそこに停まるからね。旅を楽しんで!」
二人の粋なイタリア人は僕の前からカッコよく去っていった。パッと見、イタリア人の男性には「不良っぽさ」を感じていたけど、やっぱりどこの国にもいいヤツはいるんだな。ありがとう。イタリアが好きになったよ♪
時間まで隣りのカフェで2ユーロのカプチーノをすすって久しぶりにお小遣い帳をつけた。トルコの出費が雑貨の仕入れを除けば黒字になっていた。
38日間トルコを旅して来て、使ったお金が雑貨と郵送費の約3万円。宿に泊まったのはマルディンの一泊とカッパドキアの3泊。あとはちょっとの交通費だったり、観光費。メインはもちろん食費。野宿とヒッチハイクで節約して、バスキングでお金を稼いできたからな。ヨーロッパのレスポンスは今のところ良いとは言えないけど、やってけそうだ。
時間より少し前にカフェを出てバスを待った。
やって来たのは二階建てのバスだった。荷室にバックパックを預けて二階の席に着く。僕の他にも欧米人のツーリストがスーツケースを同じように荷室に預ける。
首都であり、観光地のローマ。きっとイタリア人にも人気なんだろうな。
バスの座席に着くと、そこからはひたすら外の景色を眺めたり、音楽を聴いたりする数時間だった。前に座ったイタリア人のカップルが15分おきにチュパチュパとキスをすることを覗けばこれと言って面白いことが起こる移動ではなかった。
ヒッチハイクは毎回、ドライバーさんとの出会いがあって、何かしらのストーリーがあるけど、バスの移動ってこんなにもあっけないんだな。お金で約束されたスケジュールと快適さを得る。それにしても暇だなぁ。iPhoneで日記書く気にはなれないんだよね。
ローマに着いたのは17時過ぎ。
「ゲイ」と書かれたスポーツジム的な何かの看板が気になった。
バスターミナルで0.6ユーロのトイレを済ませ、とりあえずコロッセオを目指すことに。その途中にある街の感じも楽しみたかったので、メトロやバスは使わなかった。トータル30kgの荷物を背負って歩く。
街は雨上がり。建物の影に西日が遮られ日陰が涼しい。
歩いていると、その整った街並に少しだけ窮屈な感じがした。旅を続けていればその綺麗さにも慣れていくんだろう。
にしてもやっぱり物価が高いんだよ。トルコで高いなと思っていたケバブがこっちでは最低価格だもんなぁ。小さな売店でプラムを買って食べながら歩く。
最初は街歩きだなんて調子乗ってたけど、30分も歩くと脚が痛くなってくる。バスターミナルからコロッセオ遠くねえか…???マップアプリを頼りにコロッセオの途中にあるゲストハウスの前まで行った。
建物は他にもお店だか代理店だか他のも色々な人が使っているようだった。電子ロックになっており、インターホンにそれぞれのテナントの名前が書いてある。一瞬泊まろうかと考えてやめた。いいよ。どこかに寝れる場所があるだろう。
イタリアに入って、色々な国の人を見るようになった。
お金を持っていそうな中国人の旅行者たちや、テレ~ンとした大きめのTシャツを着た黒人の群れ。時々日本人の旅行者も見かけるが、僕なんかみたいにバックパックを背負っていない。どこか小綺麗だった。
歩きに歩いて、日が沈んだ後にコロッセオに着いた。
ライトアップされており、一部は修復工事中だ。
日中であれば中に入ることもできるようだったが、僕は外からコロッセオを眺めただけで十分だった。ああ、あれがコロッセオね。そんな感じ。そこまでの感動はない。やっぱり日本で受けたイメージが美化されすぎてしまったのだろう。
日が沈んでも周りにはまだまだ観光客たちの姿がある。みんなコロッセオをバックに楽しそうに写真を撮っている。
コロッセオの周りでは1ユーロでガラスの置物を売るバングラディッシュ人たちがいた。「Where are you from?」と訊くと、みんな同じようにバングラデッシュと応えた。観光地で1ユーロの置物が買えるのはとても安い買い物だと思う。だけど、別にガラスの置物なんていらないし、どうしてみんなコロッセオの周りで同じ様なものしか売っていないんだろう?疑問だ…。
僕はバックパックを背負ったまま夜のローマを彷徨った。
ここはほんとうに観光地でカフェバーがそこらじゅうにある。
テベレ川沿いでバスキングを試みたのだが、2曲唄って閉め出された。
僕が川沿いから離れるまでガタイのいいイタリア人が怒った顔でずっとついて来た。くそ。
もう、寝床を探すのもめんどくさくなって人気の無い噴水の近くにあった石のベンチに横になった。
背中が冷たかったのでブルーシートをはさんでその上に寝袋を敷く。なんか疲れたな…。なんでだろ?
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