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「世界の路上で稼いで暮らす人たち in イタリア」
世界一周392日目(7/25)
昨日遅くまで起きていたせいもあって起きたのは12時をまわってからだった。
ここはイタリア、フィレンツェにあるとあるシェアルーム。転がり込んだのは世界一周ブロガー、ヤッケンさんが仲間と借りている部屋だ。
空きのベッドがないので、キャンプ用のマットを床に敷いて寝袋で寝た。それでも外で寝るよりは20倍くらいマシだ。温かいし、気を張りつめることもない。トイレもすぐそこだし言うことなし!
「コーヒーいる?」
ルームメイトのリカさんが僕に声をかけてくれる。突然転がり込んだ僕によくしてくれる優しさに心がじんわりと温まる。ミルクをたっぷり入れたコーヒーってこんなにおいしかったっけ?
ルームメイトのヒロくんは僕が原稿用紙に向かっている間、針治療を受けていた。脚を捻挫してしまったらしい。治療を施しているのは会話がところどころ広島弁(かな?)になまるカワイイ女のコだった。
ヤッケンさんのルームメイトは自転車でヨーロッパをのんびり旅しているリカさんと、アメリカの大学で国際経済を学んでおり、現在イタリア語の学校に通っている未来の商社マンのヒロくん。もう一人、Kさんという世界を旅するバスカーの方がいらっしゃるそうだが、今はクロアチアに行っているとのこと。
「ね?変な人たちがこの部屋に集まるんですよ」
針治療を受けながらヒロくんが僕とヤッケンさんのことを言った。いやいや、僕からしてもここの人たちはなかなか面白いと思うよ(笑)?一体なにがきっかけで同じ部屋に住むことになったのだろう?
旅のスタイルは人それぞれ。僕にもやることがある。今日の僕の予定は漫画を完成させること。それと、昨日描いたヤッケンさんの似顔絵がいい出来じなかったから、もう一回描いておきたい。よし。まずはそれからだな。
カフェで作業する予定ですとヤッケンさんたちに言うと、部屋を使ってもいいとのことだったので、テーブルを自然光が入る窓際に寄せて僕は製作に入った。ヤッケンさんは夜にバスキングをしているので、日中はパソコンでずっと作業している。なんだか仕事しているって感じだ。さすが元代表取締役。あれ?役員だっけ?ベッドの上に脚を伸ばしてパソコンを開いている感じだけどね。出来る男にスタイルは関係ないか。
右が寝不足、Gペンで描いたヤツ。
左が0.2ミリのペンで描いたヤツ。
そこから日が沈むまでずっと僕は絵を描いていた。
お昼ご飯はリカさんに頂いた。
ごちそうになってばかりいてすいませぬ…。やはり気を遣わせてしまっているんだろうな。ずっと家にいるわけだし、リカさんたちも自分だけご飯を食べるってわけにもいかないもんな。今日は野宿にしようかな?どういう言い出し方がいいのかな?丸ペンで背景を書き込みながらずっとそんなことを考えてた。
作業中は新しい話を考えるなんて器用な真似はできないけど、こういう余計なことや悩み事なんかはふつふつと頭の中に沸き起こる。
「Kさんがシミくんに会いたがってたわよ」
「え…じゃ、じゃあ今日も泊まってもいいですか?」
「あれ?そういうことになってなかったけ?」
なかなか泊まらせて欲しいとはいいづらい。
日本人によくある「言わずもがな」にはなりたくない。言わなきゃわからない。だけどー、ありがとうございます。宿無し漫画家、今日の寝床、ゲットです!
日が傾き、自然光が十分に入らなくなる頃、ようやく漫画が完成した。一ヶ月ぶりの新作。ちょっと鈍ってしまったところがある。表現したい世界観にもまだまだほど遠い。
それでも後退はしてない。長いスパンで考えろ。きっと漫画を描く力は上がっているはずだ。トルコを旅していた時はバスキングに時間を注いだ。お金を稼げるということもあったが、バスキングが人と人を結びつけるということを改めて感じた。その世界にもうちょっと入ってみようと思ったのだ。クルド人のサジュークと出会えたのも僕にとっては貴重な体験だった。だから漫画が一ヶ月描けなくてもそれはそれでいい。漫画を描くスタイルだったらきっと彼とは出会えなかったはずだから。
21時をまわり、ヤッケンさんと僕はようやく外に出た。昼夜逆転の生活だ。ここからヤッケンの本領発揮というわけだ。
僕より4ヶ月遅れて世界一周の旅を始めたヤッケン兄さん。10万円だけ持ってロシアのシベリア鉄道に乗り込み、そこからヨーロッパをバスキングとネットで稼いで8ヶ月旅をしてきた。一日に8時時間唄う日もあったのだとか。
ヤッケンさんは一つの行き方を提示している。まだまだ「実験」の域だと言う。ネットで稼ぐと言っても、ヨーロッパで旅をしていたら半月以内に使い切ってしまうような額らしい。
ヤッケンさんは「働く」ということに対して自分なりの哲学を持っているようだった。会社で働か"される"ことにノーサインを叩き付けて、自分の力でこの世界を生き抜いていく。文字通りの"サヴァイヴ"。自分の力で何ができるのか?仲間と立ち上げた会社も方向性の違いでヤッケンさんはそこを離れたらしい。惰性に埋もれない強い意志が必要だ。そして単なる日銭を稼ぐだけじゃない。ヤッケンさんの生き抜き方には次に自分が進む未来の方向性が見えているようだった。
だからヤッケンさんのブログからは何かオリジナリティを感じるんだろう。他の旅人とは違う。ヤッケンさんだけの行き方。だってふつうイタリアにトータル3ヶ月も滞在しないよね?
「イタリアが好きなんですか?」
「いやぁ~、どうだろ?別に好きではないなぁ」
「えっ!!??じゃあ嫌いなんですか???」
「嫌いってわけじゃないけど」
馴染みのタバコ屋さんで買い物をし、いつもバスキングをしているポイントへと向かう。
今日も警察の姿が多かった。警察の目をかいくぐってヤッケンさんはこの世界で生き抜くためのバスキングをする。僕は離れたところからヤッケンさんのカメラで写真を撮った。昨日と同じようにレスポンスが入る。顔見知りらしい日本人の方がヤッケンさんのライブをわざわざ見に来ていた。
そんな中でふっと現れたのがKさんだった。
マジックでバスキングをして自転車で世界を旅する風来坊。物腰柔らかな方で、初対面なのに安心させてくれる。そんな印象だ。
軽く挨拶を交わし、僕たちはそれぞれのバスキングへと向かった。そりゃ僕だって、ヤッケンさんを見ていたらバスキングがやりたくなるさ。
メインの通りから30mくらい離れた路地裏でうるさくないようにかなり声のボリュームをしぼって歌い上げた。
上がりは4.4ユーロ。
最後には上から水が降って来た(笑)。
うん。かかならなかったけど、下を通っていた他の人、めちゃくちゃビビってたよね!
もういやだぁ~~~っっっ!!!!心が折れちまうよぉ~~!
全く入らなかったレスポンスに肩を落としてメインの通りへと引き上げた。別れる前は全然コインが入っていなかったのに、ほんの一時間でギターケースの中のコインが僕の数倍に増えていた。
そして少し離れたところでKさんがマジックを披露している。口早にイタリア語で説明する。
「ここにテレホンカードがありますね。
ほら、種も仕掛けもありませんよね。
それがー、ほら」
うぉぉぉぉおおお!!!!
種も仕掛けもないテレホンカードが
プロペラみたいにグルグルまわっとる!
え?糸ついてんの?
何であんなにグルグル回るの!!!
それが体の周りをーーーーっっっ…
すげ~~~~っっっ!!!!
イタリア人のお姉さんとかマジで食い付いてる。
テレホンカードだけじゃなくて指輪も同じように空中に浮かせてみせた。回転した指輪がそのままお姉さんの人差し指にスポッとはまる。え?マジック?どーなってんの?
この短時間でKさんの帽子の中にもコインがたまっていた。
この数日で2人もバスカーに会うだなんて。それも僕たちがブログをやっていたからなんだと思う。Kさんはご自身が旅をしていることもあり、世界一周ブログをよくご覧になるそうだ。
シェアルームに帰った後、ビールをいただいて、ブログトークに花が咲いた。
ヒロくんは先輩に会いにミラノへ言ってしまったので、今日の寝床は久しぶりのベッドの上だった。
いい一日だ♪
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