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「雨は嫌い」
世界一周382日目(7/15)
深夜4時に降り出した雨に僕はキャンプ(野宿)していた場所から
撤退を余儀なくされた。
雨に塗られながら迎えにある
劇場の入り口前に避難して、
そこで仮眠をとるように睡眠をとった。
ギリシャ2日目。雨は降り続いたままだ。
7時半になると周りのホームレスたちが撤収を始めた。
たぶん彼らは何時にここの劇場がオープンするのか知ってるんだろうな。僕が今いる場所は劇場と言ってもそこまで大きくはない。市民ホールくらいの大きさだろう。
8時前になると係員のお姉さんたちがやって来て、形だけチケット売り場をオープンさせた。
雨はやむどころかますます勢いを増すばかりだ。この雨だと今日はお客さんが来ないだろう。水はけが悪いのだろう。劇場の前の道路はみるみるうちに水浸しになった。車がまるで遊園地のアトラクションみたいに雨水をはね上げて走っているのが見えた。
劇場の前に停車してあった車のタイヤの半分くらいが水に浸っている。係員のお姉さんはビニール袋で脚をカバーして、じゃぶじゃぶと雨水に入り、自分の車を移動させなければならなかった。
寝袋をたたみ、バックパックにギターをくくりつけ、レインカバーを装着する。
ベトナムで買ったサブバッグのレインカバーは長旅のせいで、てっぺんと底が、つまり一番肝心な部分が裂けて穴が空いてしまっている。サブバッグの中身を予備の圧縮袋に移し替えて、それをさらにサブバッグの中に入れた。バッグ・イン・バッグだ。
パタゴニアのアウターも羽織った。僕にとっての雨具はこれしかない。
このように一応の雨対策はしておいたが、僕はここを出ていく気にはなれなかった。劇場の係員も僕たちに対して何か言ってくるようなことはなかった。
さっきまで隣りで寝ていた中年の夫婦は荷物をまとめて雨の中、どこかに行ってしまった。
今ここにいるのは、ナイフ(だろうか?)を体のまわりで振り回すおっちゃん。
自転車に乗った路上の少年二人とその保護者的なホームレス。そしてアジア人の浮浪者の僕。
雨が小降りになったタイミングで僕は重い腰を上げた。
バックパックを背負ってテッサロニキの町をふらつく。
気づいたらジーンズのコインポケットに入れておいた髪留めの輪ゴムがなくなっていた。新しいのを買わなくちゃ。
髪を結ばない状況がいかにうざったいかを久しぶりに思い出した。ヘンプのニット帽を被るも、フードからはみ出た髪の毛が雨に濡れて束になった。
昨日目をつけておいたファストフード店に避難する。Wi-Fiが使えるのがありがたかった。
狭い店内で長居できるポジションは二階席しかない。朝から我慢していたトイレを済ませ二階に上がると、そこは薄暗く、先客が各々コンセントにプラグを差して、スマートフォンの充電をしている。その光景が日本の漫画喫茶的な場末感を僕に連想させた。
旅の中での雨は好きじゃない。ヒッチハイクもできない。(車に乗せてもらえる可能性がうんと下がるからだ)宿のない僕は雨をしのげる場所にずっといなければならない。どこにも行けない。
照明のつけてもらえない薄暗い二階席で僕はスマートフォンでずっと調べものをしていた。
『これからどうしよう?』
当初の予定ではギリシャの上(北の方)を3都市くらいまわって、マケドニアなどバルト諸国に入り、クロアチア以降、チェコとドイツを押さえスウェーデンまで最短距離で駆け抜けるつもりでいた。だが、今僕がいる場所はあのギリシャだぞ?!
調べれば調べるほど、この国の持つ見所が分かって来る。ここはお金と時間に余裕がないと楽しめない国だ。だからと言って世界遺産のひとつも見ないでここをスルーしていいのか?浪人時代に慣れ親しんだ、あのギリシャなんだぞ(僕は浪人して世界史を選択したのだ)
「よし。パルテノン神殿を見に行こう」
世界史の資料集で見たあの遺跡を観に行こう。一番有名なヤツ。
あれが観れればギリシャに来た意味がある。そう言える。それにアテネは首都だ。節約旅で変にケチる僕の旅においてもアテネには十分行く価値があるだろう。もしかしたら稼げるかもしれない。
「hitchwiki」のサイトでヒッチハイクポイントを旅ノートにメモをして作戦を練った。
今僕がいるギリシャの玄関口とも言えるテッサロニキから電車やバスでアテネに行くことはできる。だが、値段が考えものなのだ。50ドル以上はする。交通機関を利用して往復した場合、かかるコストは1万円以上。とてもじゃないが、交通費だけでそんなにぶっ飛んでいくのは僕には耐えられない。
僕にはヒッチハイクしかないのだ。
そうこうしているうちに雨がやんだ。
パソコンを触っているだけで一日を終えてしまいたくはない。外に出よう。僕はファストフード店を出てバスキングへと向かった。物価が上がったヨーロッパでせめて食費くらいは稼ぎたい。
よく「コーラの値段でその国の物価が分かる」と聞くけど、ギリシャでのコーラ(330ml)の値段はキオスクでだいたい1ユーロ(142yen)。スーパーだともうちょっと安い。日本と同じかそれより高い感じ。けっして安くはない。
なんであんなに節約していたのかってくらいあっという間に食費にお金が消えていく。たとえキャンプでお金を浮かせていたとしても。お金はあるにこしたことはないけど、それに縛られるのも違う。
だって僕は日本で1年4ヶ月フリーターやってお金を貯めたからね。"ない"わけじゃないのだ。また何か出会いもあるかもしれない。僕の旅をより味わい深いものにしてくれるのがバスキングなのだ。
目をつけたのは昨日もやった一番のメイン通り。
海から広場まで一直線に伸びる道で、車が入って来ない。
苦情が来ないように声のボリュームを抑えて唄う。もちろん笑顔は忘れない。
顔を上げて前を行く人の顔をできるだけ見るようにする。
「お金がないんです!稼がなきゃだめなんです!」
ってオーラは出したくない。
目が合えばこちらから笑いかけるくらいの余裕さをいつも心に持っておきたい。
昨日ここに来たときは金融危機の影響でみんな心が冷えきってしまってるんじゃないかと思ったが、そんなこともない。目が合うとニコっとしてくれる人もいる。パラパラと入るレスポンス。トルコほどじゃないけど、見向きもされないわけじゃない。
その後も何度か場所を代えて僕は唄った。日本語の話せる子が聴いてくれていたり、「ヘ~イ!メ~ン!ナ~イス!」と巻きたばこをもらたり(笑)ちょっとづつギリシャのレスポンスがどのようなものなのかが分かって来た。
休憩がてらに近くをぶらついた。
テッサロニキにある考古遺跡は街と同化しているような印象を受けた。
凱旋門の脇でパンクなヤツらがくっちゃべっているのなんかを見るとね(笑)。写真がなくてほんとうに残念だ。その理由はまたのちほど書くよ。
ヘトヘトになって本日二度目のファストフード店へ戻った。
一番安いネスカフェをオーダーして二階席で持っているパソコンや一眼レフのバッテリー、iPhoneのポータブルバッテリーなどを充電しておく。そしてその傍ら、ボロボロになって崩壊寸前のギターケースをトルコで買った糸で修理した。うむ。有意義な時間の使い方だ。日記を書く時間もないままあっという間に23時をまわった。
他のお客さんがいないかチェックする。
たぶんこの時間だったら締め(閉店の片付け)始めている頃だし、こういう時にずっと残っているお客さんってけっこう迷惑なんだよな。飲食店でバイトしてたからそういうところが気になる。バックパックかついで入店してコーヒーくらいしかオーダーせずに、我が物顔で長居する時点で迷惑だけどね。
閉店時間を確認しておこう。
「クロージングっていつですか?」
「now(今)!」
即答されてしまったので、僕は寝床を探してテッサロニキの街をふらついた。
明日は朝イチでバス停に向かう。そこからヒッチハイクのできるポイントまで向かうのだ。
今日の寝床は深夜まで営業しているキヨスクの前。
団地の中ほどにあるので、ここは安全だろう。また辺りに電灯が多いため夜でも明るかった。
いつもは人目を避けて隠れるようにキャンプしてたけど、気を隠すなら森の中。一般住宅に近いところなら大丈夫だろう。そう考えてのチョイスだったが、電灯が明く、まぶし過ぎて眠ることができなかった。
5時くらいまでずっと寝れずに、ただただ寝袋の中で寝返りを繰り返した。
結局は寝袋の収納カバーをアイマスク代わりにして僕は目を閉じた。視界を遮るのって怖いから嫌なんだよね。
でも寝ないとな。
明日はアテネに向かう。あの世界遺産を観に。
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