「マカオに暮らす人は何を考えるのだろう?」
世界一周46日目(8/13)
ちょっと落ち込んでいた。
僕は些細な事で
すぐに落ち込んでしまうのだ。
シングルに泊まってるアメリカ人のおばちゃんが言うには台風が近づいているらしい。
外から聞こえる車が雨で濡れた路面を走る音がより一層僕の気分を憂鬱にさせる。
今日はマカオに行こうと思っていた。
別の国に入る際の勝負服として買ったパタゴニアの白いシャツを着ていこうと思ったのだが、
圧縮袋の中身を全部出しても、バックパックの中身を全部出しても見つからないのだ。かなり薄い素材なのでそれほどかさばらないし、冷房の効き過ぎた列車用にすぐに羽織れるようにサブバッグに入れていた。
でー...どうしたんだっけな?
広州に着いた時、『もう硬座には乗らないから圧縮袋にしまっちゃうか!』って思って出してたんだけど、
そのことすっかり忘れてて『やべっ!圧縮袋に入れ忘れちゃったよ!めんどくせーからバックパックに突っ込んどくか』ってバックパックの中に丸めて放り込んでおいたのは覚えてる。
それでも見つからないのだ。
四次元ポケットかなんかに繋がってるのか?僕のバックパックは。
『もうマカオなんて行かないで今日は引きこもってようかな...』
そんな考えさえ浮かんだ。
お気に入りだったパタゴニアの白シャツ…
日本にいたころ、バイトで貯めたお金で毎月ひとつ旅の装備を増やすのが楽しみのひとつだった。「Patagonia」は僕が好きなアウトドアブランドのひとつ。少し高いけれど物持ちもいいし、スタッフさん、ユーザーさんがいい人たちばかりだ。
思い出の詰まった白いボタンシャツ。旅に出ていきなりなくなってしまったからことがショックだった…。
それでもマカオに行く機会は今日しか残されていなかった。
僕は明日の朝再び中国に入り、深圳(シンセン)を目指す。
そこで僕はどうしたかと言うと、高級ブランド店が立ち並ぶCantonロードのビルの一角にある無印良品で白いシャツを買うことだった。
散々、お金がない。貧乏旅だと言っておきながらこの散財だ。
「おい!てめえ、何が『お金ない』だよ?節約はどこ行ったんだよ?」という幻聴が聞こえてくるが、わかって欲しい!
テンションガタ落ちだったんだも〜ん!!!
なんてったってマカオですよ。マカオ!
「金太、マカオに着いた♪」のマカオ!!!
こういう時に白いシャツでバシッとキメて乗り込まなきゃ!ね?高城さん?
僕は日本価格3,990円のオーガニックコットンの白シャツを香港価格4,890円で手に入れた。
よしっ!これでマカオに行けるぞ!
159香港ドル(1992yen)でマカオ行きのチケットを手に入れ僕はフェリーに乗り込んだ。
小さなフードコーナーでは電子ポットがおいてあった。
それを見て僕は昨日スーパーで買っておいた2,5香港ドルの袋入りのヌードルを食べようと思い、Sea to Summitの折りたたみボウルに麺と粉末スープの元を入れフードコートのおばさんに訊いた。
「Can I use Hot water?」
おばさんは困った顔でこう言った
「NO.No water!」
いや!そこにあるでははございませんか!えっ?お前みたいな薄汚いヤツに使わせるお湯はないってこと?
おばちゃんに「そこにポットあんじゃん!使わせてようっ!」って言っても、全然交渉に応じてくれない。僕は仕方なく乾燥したままの状態の麺をポリポリとかじるしかなかった。
フードコートを見ているとカップヌードルをお湯を入れた状態で販売していた。
なんだそのサービス!!日本ならコンビニでタダでお湯が入れられんぞ!
香港のセブンイレブンでさえ入れられたのになんだ?この安っちい高級志向は?
日本との文化や風習の差に逐一憤慨していたら旅は続けられないが、ちょいちょいこういったことに腹を立ててしまうのが僕という人間なのだ。小さいなぁ。
約1時間でフェリーはマカオに到着した。
簡単に入国手続きを済ませると僕はフェリー乗り場の無料Wi-Fiでカジノの無料バスの概要を読んで適当に乗り込んだ。
僕は賭け事のセンスがない。楽してお金を稼ごうとすると大体は上手く行かない。(もうけてる人は頭を使ってるんだろうけど)そんなわけで僕はカジノをプラプラと見てまわるだけだった。
最低の掛け金が200ドルだったこともある。一体そんなお金どこから捻出すればいいのだ?何万円分ものお金を感情に任せて賭けられる人は何を考えているんだろう?
それにしても僕よりデカいおねえさんが多かった。フェリー乗り場での送迎もそうだったけど、綺麗で背もデカい女の人があっちこっちにいるのだ。日本でもあんなに大きな女性はみたことない。何か薬でも使ってるのか?
この国はカジノで収益を上げている。カジノには観光客が押し寄せ、その需要に合ったディーラーたちがいる。
この国に生まれ育った人はどんな人生を送るんだろう?
容姿に恵まれればフロアレディーに。頭が良ければホテルのマネージャーに。そうでない人はディーラー養成学校で勉強しカジノに就職するのだろうか?
そんなことを考えながら僕は別のバスに乗り、ポルトガルの統治時代の跡が見られる町へ向かった。
丘の上に教会があった。
カジノの喧噪とは反対にここには人が少なく、静かだった。僕は汗と雨に濡れたアウターを脱ぎ、曇った一眼のレンズを拭いた。
カジノで無料で配布している水を飲み干すと僕は町歩きを再開した。
狭いごちゃごちゃした路地を見るとワクワクするのは僕だけだろうか?
規模の差こそあれカジノはかたまっていたが、ここにもそれとは関係ない人の生活があると分かるとちょと安心した。
だけど、この小さな国で、カジノがメインのこの国で生まれた人は何を感じて暮らしているんだろう?
観光客からしてみたらカジノは確かに面白いだろう。
だけど、地元の人たちはどうだろう?
そんなんいっつも見てたら飽き飽きしちゃうんじゃないか?
「この国には僕は住めないな」そう思った。
町の端っこまで来ると、バス代を浮かすために僕は行きとは別のルートでフェリー乗り場を目指した。
静かな町の周りをつたって再び喧噪の中へ戻る。
日が沈むとビルのネオンが光りだした。
意外と遠いフェリー乗り場。足が痛い。お腹も減った。
雨も降ったり止んだり。物価が高いので食欲を押さえ込んだ。
それでもあまりに腹ペコだったので250円くらいのラーメンを食べた。
でも、日本でだったらもっといいものが食べられるんじゃないかと思った。
カジノの国、マカオ。
ここへ来て僕が考えたのは彼らの人生だった。
台湾人や香港人、中国人の旅人には出会ったけどマカオ出身の旅人には出会ってないな。
雨の振る中フェリーはゆっくりと香港へ引き返した。