楽しみがとまらない
イベントバイトの帰りに、イナさんが呟いた。
「夢の中みたいだった」
イナさんはそんなこと思わない人だと思っていたから、少し驚いた。
「本当に夢の中みたいだった」
私も呟いた。
「楽しかった」「楽しかった」
ふたりで声を揃えた。
ふわふわ、ぽわ〜ん 風船を大きな袋に詰める。
早く片付けたい人間の都合なんかおかまいなしに、気の抜けた動きをする風船、捕まえようとすればするほど、ふっと逃げていく。
集めた風船は黄色に紫、虹色の夢の中みたいだった。
電車の中でタナさんがバンド名を食べ物の名前とまちがえたのも、なんだかツボにハマって笑いがとまらなかった。
バイトの話が脱線したくだらない話から、将来の夢まで語り尽くす夜中の電車は幸せ色だった。
イナさんもタナさんも20代、なのに話に混ぜてくれた。
今日はただただ、このバイトを選んだ自分を褒めてあげたい。
好きなことをして生きると決めた自分を認めてあげたい。
Good job!!
これでお金をいただけるのだからどうかしてる。
神様もどうかしてる。
バイト先に迷惑がかかるので詳細は記せないけれど、お金をかけなくても楽しいことってあるんだな。
流れるプールのようにこんな幸せの波をぐるぐる周って加速度をつけよう。
楽しみがとまらない。
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