亜種の起源
亜種の起源 桜田一洋 2020.09
「今、人の心は荒れ、自然は再生できないほど破壊されている。こんな世界をつくるために、人類はこれまで血と汗と涙を流してきたのだろうか?」
という 「はじめに」 の文章から始まるこの本。
「進化論はダーウィン一人の研究によって発見されたのではなく、この時代が生み出したものだと言うべきかもしれない。」
「ウォレスは自然の本質は戦いではなく、相互扶助の舞台であると捉えた。」
「私たちは生存競争に勝って生き残ったのではなく、新人と旧人との共生によって生まれてきたのだ。」
「ダーウィンの進化論、メカニズムの生命科学が問題なのは、私たちが自然の中に入れた機械という枠組みだけから自然の姿を求めるからだ。」
「進化は自己組織化という自然を貫く普遍法則によって説明できるし、しなければならない。」
「思考は、論理的に「考えること」と、直観的に「感じること」から成り立っている。」
「特権的な位置から世界を説明するというやり方を離れ、当事者として脳とは何かを考えると、そこにあるのは発生と発達と同じ自発性である。目的もなく出かけるから知らない相手に巡り合い、心で心を想うから愛や信頼が生まれる。」
「「健康」とは、人と人、人と自然、心と身体、身体を構成するシステムが同期していることだ。」
「『協創』は、生命の誕生する前から自然を貫く共通の原理であった。まず、非平衡の動的な条件で有機分子が集まり制約され非線形の相互作用が生じ、自己触媒や自己複製などの自律性をもってタンパク質、RNA、DNAが生成した。さらにこのような分子群が集まり制約されたとき、同期と非同期の選択によって「タンパク質は触媒を担い、DNAは情報の複製を担う」という機能分担が形成された。」
「人生を健康に生き抜くということは、新たな自己の創出をとおして自律的に自然や社会と調和することだ。進化を生み出したのは『協創』によって成ることを実現できた生物である。」
「生涯をかけて学ぶべきなのは、心の底から生じる無償の力によって生きることである。」
「生命の本質は「見えないものを見る」直観である。自分を信頼し、相手を信頼し、未来を信頼すれば問題の奥に隠れた答えが見つかり、勇気をもって社会を変えていくことができる。それは至高の体験だ。」
「「終わりなき我欲に従って、他者との戦いを生きろ」と教える社会で、「生を愛する情熱に従って終わりなき自己創出と世界との『協創』を生きる」ことは容易ではない。」