冬季シーカヤック西日本縦断遠征記2021
2021年1月に旅ねしあとして初となる長距離遠征を行いました。
本記事から始まる冬季シーカヤック西日本縦断遠征記2021は「海を旅する本kayak 74&75号」に掲載された寄稿文を加筆してお届けいたします。
旅ねしあと共に、カヤックの旅の世界を、そして旅ねしあが自然から学び成長していく姿を読者の皆様にも楽しんで頂けたらと思います。
それでは以下、本編スタートです。
遠征概要
時は2020年12月
初めての長期遠征出発まで一ヶ月を切った。
「今年の冬は寒気が強く、例年より寒い冬になるでしょう。」
そんなニュースを聞きながら、仲間達とのオンラインミーティングで準備を進めていく。
夏場に続いたラニーニャ現象はこの冬にも大きく影響を与えそうだ。
パンデミック
遡ること1年。(2019年)
数年ぶりに旅ねしあとしての活動を再開させ、海外遠征へと意気込んだ。
狙いは以前から話にあがっていたフィリピンのパラワン諸島だ。
そこからフィリピン遠征の準備は着々と進んでいたが、パンデミックの影響は収まるどころか、世界を混乱へと落とし込んでいく。
秋になっても依然として、海外への渡航は難しい状況であり、準備してきた海外遠征は諦めるしかなかった。
再度計画を練り直し、話し合いを重ねた結果、海外遠征は先延ばしとなり、国内での冬の遠征へと切り替えることとなった。
そしてせっかく旅をするのであれば先の海外遠征を見据えて、あえてより厳しくより過酷な行程を選ぶことにした。
何よりこれほどの長距離と長期間の旅を旅ねしあチームで行うことは初めてであった。
海外へのトレーニングという意味合いでは素晴らしい経験になるはずだ。
冬の西日本縦断
計画は30日間で大阪の淀川河口から鹿児島県の志布志港までの約700キロを漕ぎ切る。
ゴール後は志布志港からサンフラワー号に乗り込み、大阪まで戻る。
準備や片付け、移動、すべてを自力で行い決められた期間でしっかり旅を完結させるという内容だ。
今後海外遠征を想定するなら帰りの飛行機までの決められた期間で旅をすることになる。
期間内に旅を終わらせることに慣れること。
そしてもし計画通りに旅が進まない場合は前進するのか撤退するかの判断をどうするのか。
この辺りを国内で練習しておきたいと考えている。
30日間のうち5日間を準備と片付けに使う計算だと、カヤックで旅に出られるのは25日間というとことになる。
冬場は寒気を伴う強風が頻繁に吹くことから決して海況はいいとは言えない。
荒天による停滞なども考慮すると、実質海に出られる日程は20日と予想。
1日あたり平均35km前進が旅の目標となった。
果たして西風が強いこの季節に瀬戸内の海を西進できるのか、九州へ渡る為に停滞が何日続くのか、事前に考えられる不安を洗い出し、徹底して準備を行った。
現在、宮崎県内では緊急事態宣言が発令されている。不要不急の外出は控えることと、宣言中は県外からも旅行を控えるようにアナウンスがされている。
もし宣言が解除されず、宮崎が通れない場合は、ゴールを高知へと切り替える。
念の為、高知へのルートもバックアップとして準備を行うことにした。
メンバー
今遠征のメンバーは運天遼(Sunwave Kayaks)、佐藤瑛彦(パタゴニア、Islandstream)、山本啓太(Kiaora Paddle)、南平純(OUTISE)の計4名。
佐藤(以下キビー)と運天と南平の3名は以前の職場の同僚であり、2014年から「旅ねしあ」の発足メンバーとして活動していた。
そして今回は南平と同郷の山本が特別ゲストとして旅ねしあ遠征に初参加してくれることになった。
昨年は4人で数日かけて伊豆一周を行い寝食を共にしているため、お互いのことはよく知っており1ヶ月の共同生活も問題はない。
遠征名である「旅ねしあ」は、島々を人力で旅し自然の素晴らしさやアウトドアの魅力を発信しようと2014年にスタートした活動である。
今回の遠征でも各自が遠征の状況をSNSで配信しフォロワーと旅を共有することも重要なミッションとなった。
南国好きの4名にとって冬の遠征はどこまでやれるのか。
そもそも計画段階で冬用テントもドライスーツもない。
ギアを全て揃えていたら嫁さん達に怒られるので、懐事情が寂しい僕達の味方ワークマンを活用しながら着々と準備を進めていった。