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【東京】(2/2)東京二泊三日はバーめぐり-西麻布「タフィア」、赤羽「まるます家」、南池袋「BAR Too」 2005年7月
注)こちら、2005年の記事になります。
⚪︎西麻布「タフィア」へ
「海森」は軽めに切り上げ、西麻布へ。前日「BAR Too」のHさんに教わった「タフィア」というバーを目指す。
歩いて頭上に通る首都高をくぐり抜けると、センスの良い外装のレストランやビストロが並ぶ。外気はじっとりと湿っており、汗が吹き出す蒸し暑さだ。
ラム専門のバーだという、「タフィア」へたどり着く。「タフィアでは絶対モヒートですよ」とHさんから教わっていたので、女性店主Tさんに「モヒートで」とカウンター席へ座るなり、少し前のめりになりながら注文する。
「承知しました」と柔らかく微笑みながらTさんは、丁寧にフレッシュミントを潰し、「モヒート」を作ってくれた。
そしてこれが本当にしみじみ美味しかった。ラムの柔らかな甘さの中にミントの爽快感がきらきら溢れる。
「椰子の若芽とザワークラウト」を注文する。椰子の若芽は椰子の木の新芽であるわけだが柔らかく癖がなくて美味しくて驚いた。
混んできたので、「ティ・ポンシュ」を一杯と「モヒート」のお代わりをして店を後にする。
「わかりづらい所にある店ですけど、またいらしてくださいね」と言いながら、Tさんは出口まで見送ってくれた。
⚪︎赤羽「まるます家」へ
東京三日目。この日も蒸し暑い。この日は人と会う約束があったので、それで日中は潰れた。
夕方、赤羽にある名酒場「まるます家」を目指した。赤羽に寄るのは初めてだったが、実に雰囲気のいい下町。時間をかけて街歩きしたくなる界隈だ。
「まるます家」は、まだ17時前だというのに人でごった返していた。サラリーマン風、競馬新聞片手にビールを煽る中年男性、そして賑やかな中年女性団体客…
カウンター席に一つだけ空いた席を見つけて座り、小ジョッキ350円を注文すると、中ジョッキサイズの生が出てきた。これは嬉しい。
壁にびっしり並ぶ短冊から、「枝豆400円」「浅利のヌタ350円」「さらし鯨600円」を、てきぱきカウンター内を動き回る中年女性店員に注文した。
なんであろう、入店から数分しか経っていないが心躍って仕方がない。そわそわする心を鎮め店内のざわめきに集中すると、徐々に落ち着いてきた。
右隣は大学の教授風とその教え子ゼミ生風の二人連れ。必要以上に肩寄せ合って肴を分け合っている様子は、なんとなく唯ならぬ関係のように見えなくもないのは気のせいか。
「それでねぼくが思うにはさ…コレコレこうなんだと思いますよ、…クン」「ええ、先生わかります。でも…ということも考えられませんか?」
「それもわかりますよ、もちろん。でもね、あ、いや、この鯉の洗いはとてもいいですね」
「本当に。とても美味しいです。鰻蒲焼きもいきませんか?
「ええ、もちろん、ぜひ」
左隣は病院を抜け出して酒を呑んでいるという老人。鯵たたきを肴に、いいピッチで生ビールをぐいぐい呑っている。
「…さん、まーた病院抜け出してきたんでしょー。先生に怒られるよー」「ははは、そりゃ怒られるだろうねぇ」
周りを見回すと、大量のゲソ天にだぼだぼソースをかけ、それをご飯に乗せて旨そうに食べながら焼酎のロックを呑む客がいたり、まだ明るいのにすっかり酩酊してる客がいたり、一人黙々とコップ酒を呷る若い女性客がいたりと、下町の大衆酒場は酔客を眺めているだけで楽しい。
「まるます家」は午前9時から午後9時半までの半日以上営業。コの字のカウンターは客がずっとびっしり張り付いている。
「さらし鯨」には新潟「金升」の一合瓶をもらう。「あっためよっか?」と聞かれたが常温のままもらう。大衆酒場の普通酒の冷や(常温)はしみじみ旨い。冷えた吟醸酒ではない身の丈にあった酒がとても良い。
「鰻兜焼き2本200円」を追加注文する。粉山椒をかけて食す。濃厚な旨味が押し寄せ、何串でも飽きずに食べられそうだ。
満足して店を出ると夕食のおかずに鰻蒲焼を買い求める主婦のみなさんの列。いいなあ、こういうの、と立ち止まって眺める。
⚪︎再び南池袋「BAR Too」へ
「『タフィア』はいかがでした?」
Hさんが、手の空いたタイミングでそう声をかけてくれた。わたしは、「タフィア」が想像以上に素晴らしかったことを伝えた。
「『銀座梅林』のカツサンドもすっごく美味しかったです。ありがとうございました」
にっこり微笑みながらHさんはそう言った。
この日は七夕の前ということで、Hさんに七夕をイメージしたというオリジナルカクテルを作っていただいていた。
「東京は…今日まででしたっけ?」
「そうです、今夜が東京最後の夜ですね。今から新幹線で盛岡へ帰ります」
「また、東京にいらしたら寄ってくださいね」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」
「お元気で」
「Hさんも」
カクテルを何杯か呑んで、そうやって「BAR Too」を後にした。
(おわり)