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【さかばなし15】妻のこと
「さかばなし」は、酒場(さかば)であった、ちょっとしたエピソード(はなし)について綴っています。「さかば」の「はなし」で、「さかばなし」です。
あれは去年の夏のこと。
梅雨明けした北国盛岡も、連日猛暑が続いていた。とある日、夕方になったので冷えたバイスのソーダ割りでスタートし、食中酒は「限定原酒 妻」をロックでぐいぐい呑ることにした。
酒肴に、ツルムラサキお浸し、ナスとトマトのスパイス煮込み、煮つぶ貝、原木椎茸のホイル焼き、きゅうり辛子漬け、鶏胸肉のソテーを揃えた。
ひどく暑いが、食欲はいつものとおりだった。ムスメと二人、夕食をとり始めた。
実はこの日、友人と酒場で待ち合わせをしていたのだが、キャンセルしていた。妻がコロナに感染して、自室に臥せっていたからだ。
喉がひどい痛みらしく、経口補水液ぐらいしか口にしていなかった。それでは体力が回復しないだろうと、梅粥やうどんを作ってあげていた。早く良くなればいいな、と願いながら。
焼酎の「妻」とわたしの「妻」のはなし。
後日談であるが、数日後、妻はコロナから回復し、代わりにムスメとわたしがコロナに感染して大変だった、という展開が待っていた。結果、一ヶ月ほど酒場から遠ざかってしまったのだけれど。
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