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【盛岡桜山呑み歩き】(3/3)盛岡の冬、旅の仲間uniさんと酒場めぐりと再会の記憶

「ハレトケ食堂 晴多」で旨い酒と肴、そして女将さんとの楽しい会話を満喫した旅の仲間・uniさんとわたしは、また次の酒場へ向かいます。酔いも心地よくまわり、楽しい夜はまだまだ続きます。


⚪︎三軒目も桜山「串焼きmaru」へ

「uniさん、次は魚介と肉を楽しめるお店をご紹介します」
「お、いいですね、いきましょういきましょう」
「そちらもすぐ近くですから」

降っていた霙はほぼ止んだようで、風もなく穏やかな夜となっていました。15秒ほど歩くと、次のお目当ての店「串焼きmaru」に到着です。

木のカウンターが入り口から左右に伸びる、小ぢんまりとした店内で、カウンター席は10席ほどです。先客はおらず、一番奥のカウンター席に座らせてもらい、生ビールを注文です。

なお、一番奥のカウンター席の目の前には焼き台があり、調理のライブ感を味わえる特等席です。

「ここもまた、いい店ですねぇ」と、uniさんが店内を眺めながらしみじみ語ります。時計の針は19時を回ったところで、合流して酒を呑み始めてから、3時間が経っていました。

赤い壁紙に、目に映えるように日替わりメニューが貼っているため、そちらに目をやり、「鱈菊天ぷらいきたいですねーー」「いいですねー、それと宮古産の水だこかな」と、uniさんと言葉を交わします。

⚪︎三陸の海の幸と串焼きと日本酒と

鱈菊天ぷらは紅葉おろしで、水だこはわさび醤油でいただきます。ほろっほろに口の中で崩れて溶ける鱈菊天ぷら、濃厚な旨みと歯を跳ね返すように筋肉質で噛み応えのある水だこと、どちらも北国・盛岡の酒場の酒肴としては、季節性も味わいも最高峰に入るでしょう。

「こりゃ、日本酒ですね」
「ですね、ですね」

ということになり、やはり壁に貼られた日本酒メニューから、uniさんは岩手の地酒「月の輪 純米」を、わたしは富山の「羽根屋 純吟」を注文します。

「うーん、やっぱり『月の輪』はうまいなぁ」と嬉しそうなuniさんを見ながら、ふっと、uniさんと初めてお会いしたときの記憶が蘇りました。

20年前、uniさんと「月の輪」の一緒に蔵見学をしました。そのときは、宮崎の友・けんじさんも一緒で、あのときから呑み仲間でいるのかと思うと、またこの日の夜というものが感慨深いものになります。

鶏もも肉、豚バラ、そして海老と女将さんに焼いてもらいます。肉がじゅうじゅうと音を縦、脂が焼き台の炎に弾ける様子が伺えます。香ばしい匂いが漂う中で、絶妙な加減で焼かれた肉に、フライング気味に手が伸びてしまいます。

最後に焼いてもらった海老は、殻がかりりと焼かれていて香ばしく、噛むたびに旨みが溢れてきます。殻ごとむしゃむしゃと頭から尻尾まで食べ尽くし、味わう尽くす喜びは、言葉ではとて追いつきません。

これぞ酒場の火と煙の魔力です。香りと熱が織りなす瞬間が、深い味わいと喜びを、思い出へと昇華してくれます。

そして、まだまだ夜は続くのです。もう一軒、uniさんと至高の酒場と酒を求めるため、女将さんに丁寧にお礼を述べ、夜風に身を委ねながら、桜山界隈の細い路地を進んだのでした。

⚪︎締めの一杯は「八まめ」のエルダーフラワー

さて、ついに最後の一軒となりました。

わたしはこの日、次の日に早い時間から仕事が控えていたので、「すみませんが、今夜は21時には帰ります」と、あらかじめuniさんには伝えていました。

20時半を過ぎ、最後の30分一本勝負。uniさんは時間を気にする必要はありませんでしたから、わたしが店を出た後も、ゆっくり一人で楽しんでもらえたらと思っていました。

そして、「串焼きmaru」からやはり15秒ほど移動し、同じく桜山にある「八まめ」へ。

スパイスカレーの店ではあるものの、日本文化を取り入れた趣深い空間が魅力です。着物姿の若い女将さんが迎えてくれ、店内にはお香が漂い、心を落ち着かせてくれます。

こちらにuniさんとお邪魔するのは二度目。以前ご案内したときも、「なんて素敵な店なんだ!」と喜んでいただいた記憶があります。

まずは、uniさんの定番となっている、エルダーフラワーを手摘みしたリキュールをソーダ割りで、二人ともいただきます。焼いた肉や海老を食べてきたわれわれには、この爽やかさが、このタイミングで求めていたものでした。

その味わいは、ほのかな甘味と花の香りが心地良く立ち、ソーダで割ることで、爽快感を一層引き立て、口当たりが軽やかになっています。

「やっぱりエルダーフラワーは旨い」と、uniさんとわたしの意見が一致したところでお通しのおでんが出されます。そのおでんは、出汁が染みた大根とさつま揚げが、品が伴った出汁が香り、箸置きの独楽とともに、和の風情を感じさせます。

木曜の夜は三味線のお稽古を2階でやられている方がいて、その音色が今まさに「ちんとんてんしゃん」と流れており、それがまた風情をまして心地良さが増していきます。

さて、いよいよ時計の針が21時をまわり、別れのときを迎えます。わたしは、uniさんからたくさんのお土産をもらってしまい、恐縮しながらお礼を述べ、ありがたい気持ちを抱きながら、店を後にします。

「また、呑みましょう」と、uniさんはいい、16時に再会したときと同様に、人懐っこい顔でにこにこ笑い、手を振ってくれたのでした。

その後のことはまだuniさんから聞いてはいませんが、また、次回、盛岡でお会いしたときに、後日談を伺えればと思います。

わたしにとってもいい思い出になる5時間四軒の酒場めぐりでした。そして、旅人・uniさんにとっての冬の盛岡の桜山呑み歩きはどうなったのでしょう。

uniさんにとっても、思い出深い旅の1ページになったのなら、案内したわたしとしても望外の喜びです。そのあとの話を聞ける日を、今から楽しみに待ちたい思います。

(おわり。)

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