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【函館】(3/5)最強深化、函館「大門」の酒場がすごすぎて感動して、ついつい呑み過ぎ一泊二日旅 2024年2月3日(土)-4日(日)
大門の夜、まずは大門のはしっこの方にある東雲町の「割烹 魚清」を訪れます。この地で半世紀近く商売をされてきたご夫婦が営む名店は、かの故九重親方や函館競馬場や札幌競馬場でレースがある際に競馬関係者(武豊さんとか、大魔神・佐々木さんとか)も訪れる、界隈では有名な店です。
⚪︎昭和52年創業「割烹 魚清」で大門の夜をスタート
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さて、夜になりました。というか、夕方17時になりました。ホテルを出て、冷え込む函館・大門を行きます。
訪れた店は松風町に隣り合う東雲町にあり、函館市役所が立地するあたりになります。「割烹 魚清(うおせい)」の暖簾をくぐると暖かい店内で、ご主人と女将さんが出迎えてくれます。
清潔で整頓された店内には、いい酒場には絶対にある、いい意味での緊張感が漂っています。先客はおらず、われわれが口開けのようでした。
予約していました、と伝えると小上がりへ通され、そちらに腰掛けまずはいつもの瓶ビールを注文します。
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ビールで喉を潤していると、女将さんが付き出しを御膳に並べてくれます。左下から時計回りに、岩海苔くらげ、油麩の煮物、くじらベーコンと白ネギの和え物となっています。
岩海苔くらげは、海苔の佃煮にくらげを混ぜ込んだもので、風味と食感が上々。くじらベーコンと白ネギの和えたものは、くじらの脂をネギがさっぱりさせてくれて、これは酒肴として上等。メニューにあったら絶対に注文したい一品。
そして驚いたのが煮物です。油麩なのかなと食べていたら、どうもどこか違います。出汁の旨みを吸って、ふわふわの食材はバターのような風味も感じ、ほんのりとした甘さ。
「なんだろう、油麩かと思ったら違う」「だね、厚揚げでもないしね」「てか、旨すぎ」などと感想を述べ合いながら食べていますと、女将さんがやってきて種明かしをしてくださいました。いや、驚きの食材、納得の美味しさでした。
⚪︎女将さんの助言に従い「海峡コース」を注文
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メニューをぱらぱらめくっていると、アレもコレも美味しそうで迷ってしまいます。すると女将さんが、「コース料理を一人前注文して、それを3人で分けて食べても大丈夫ですよ。キンキン(吉次)が入っている『海峡コース』がお手頃だしオススメです」と教えてくれました。
コース料理は、5,500円のコースに始まり、7,700円と10,000ぐらいのものがあったと思いますが、オススメの「海峡コース」は7,700円のものでしたので、それをお願いします。
まずはお造りです。ボタンエビ、マグロ、ウニ、ホッキ貝、ホタテと美しく盛り付けられています。そしてどの素材も一級品の旨さです。
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こりゃ日本酒いかぬわけにはいかんでしょう、と「北の誉 純米生酒」を注文します。しかし、全然知りませんでしたが、小樽市にあった北の誉酒造は2016年に合同酒精の完全子会社になっていたようです。合同酒精といえば、浅草の名酒場「神谷バー」の創業者である神谷傳兵衛が設立した会社です。
この一本は、すっきり爽やかな辛口で、新鮮な魚介とよく合いました。さー、酒が進みますよーー。
⚪︎お得意料理「米ナス蟹あんかけ」
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お次は「米ナス蟹あんかけ」は、揚げた米ナスにたっぷりの蟹の身が入ったアツアツの餡がかかっています。
こちら店のお得意料理のようですが、これはまさに絶品でした。とろとろの米ナスに濃厚だけど上品な餡が絡まり、食べ応えも十分です。箸が止まりません。これぞ割烹の味です。
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次は「サーモン柚香(ゆこう)焼き」です。柚香焼きだけあって、ほんのり爽やかに柚子がかおり、実に上品な味わいのサーモン焼きに仕上がっています。
ふっくら柔らか、塩加減も絶妙、ご主人の技量が高いのがよくわかります。
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さーて、女将さんがぜひにと勧めてくれた「キンキンの潮汁」が到着です。北海道の海の王者、高級魚キンキン(吉次)は真冬が旬、そう今まさにこの時期に脂が乗って旨くなります。
「よし、せっかくだから頭や目玉のまわりの、食べにくいけど一番美味しいところを食べてみたらいいよ」とムスメに上半分の身をやって、残りを妻と半分ずついただきます。
旨みが強く締まった身の質、優しい脂と素晴らしい味わいです。「北の誉」とよく合い、最高の心持ちになってきました。函館に来て、つくづく良かったと実感しました。
⚪︎絶品料理と絶品夫婦(めおと)漫才
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さあさあ、「海峡コース」も終盤です。白魚の玉子とじが供されます。3人でコース料理を分けていますが、ここまで実際大満足です。
実はこのあたりから、70代半ば過ぎのご主人と女将さんのかけあいが、漫才のようで面白すぎて笑いが止まらなくなっていました。
特にも女将さんのトークがキレキレで、ことあるごとに「・・・ですよね、xxさん?」と優しくご主人の名前を呼び、いろいろ話しかけるのですが、なかなかに女将さんの話題はスパイスが効いていて、最高に可笑しいのです。
大門がまだまだ函館イチ、いや北海道でも有数の歓楽街だったころの話になるのでしょうか、従業員が8人もいて、お店は大繁盛したそうです。休む間もなく連日働き詰めで、へとへとの中で店を終えるとご主人はお仲間と夜の街に呑みに出てしまい、たびたび女将さんに迷惑をかけたとかなんとか。
女将さんの口調はあくまで柔らかく、ユーモアの端々にご主人への愛情が溢れ、店内が温かい空気に包まれるのです。
絶品料理と絶品の夫婦漫才を楽しめる「割烹 魚清」の魅力に、すっかりはまっていました。
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〆のイクラ丼と香のもの、デザートを3人でわけてコース料理を終わりにします。「海峡コース」、たいへん贅沢なひと時でした。
食後は女将さんが熱いお茶を出してくださって、ご主人も客席の方に出てこられて、故九重親方(名横綱・千代の富士関)や競馬関係者の話などを聞かせていただきます。
本当に多くの方々に愛され、そして支援されてここまで歩んできた割烹なのだと、実感させられます。
このアットホームな大門の名店には、ぜひ多くの方に足を運んでいただき、絶品料理とご夫婦との会話を楽しんでいただきたいと心の底から思いました。
(4/5へつづきます。)