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▲2-9 天空の星空コンサート(済)
ストリートミュージャンという生き方
「音楽(演奏)を生業として生活する」ということは夢があり、素晴らしい生き方だと思う。その半面、それを仕事として生活してゆくことは、経済的、精神的、肉体的にはたいへんなことだと思う。40年以上、日本と海外のストリートで演奏を続けている三四朗さんは、サックスの響きと美しいメロディーだけでなく、その穏やかな人柄に魅せられる人は多い。彼はボストンのバークリー音楽大学を卒業してニューヨークでストリート演奏を始めた。帰国後、渋谷でのパフォーマンスが大変な人出と話題になり、日本に「ストリートミュージシャン」という言葉が生まれた。SONYと契約し、メナード化粧品や東京建物という企業のCMソングを手がけたり、当時かなりの視聴率を得ていた「トゥナイト」のオープニング曲も演奏していた。東京ドームでのショーン・レノン、オノ・ヨーコとの共演など大きなステージで活躍した後、自由に演奏活動をしたいという意向でSONYからはなれ、ストリートミュージシャンとなった。東京都が企画した「ヘブン・アーチスト」の第1期に認定されて、東京の町や駅などでの演奏を行い、東京の町に音楽を届けてくれている。
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星空コンサートの体験
千葉のゴルフ場のオーナーに夜のイベントに招待をしていただいた。小高い山の上のゴルフ場で、月見をしながら三四朗さんのサックスを聴く体験をした。数人でグリーンの上に寝転がり星空を見上げた。音のない世界で、皆が空を見上げて宇宙と向き合った。星を眺めながら美しいサックスの音色を間近で聴いた体験は忘れられない想い出となった。大自然の中で生の演奏を聴く感動はなかなか得られない機会だと思う。コロナ禍の期間、多くの人が部屋に篭る生活を強いられた。この体験を思い出し、夏の奥志賀高原に滞在するツアーを企画した。小澤征爾さんの肝入りでできた「森の音楽堂」(写真上)でコンサートを3晩行う旅である。多くの方にご参加いただいた快晴の日の夜、ホテルにお願いして大量のヨガマットを用意してもらい、芝生の上に敷いて皆で寝転がって星を眺めた。ホテルの外灯を消してもらうと真っ暗な高原に満点の星空が広がった。暗闇の中で三四朗さんの演奏を聞き昔のゴルフ場の体験を再現することができた。高原で行った星空のコンサートは大きな天の川の光景とともにいつまでも記憶に残ると思う。
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生活の中に音楽を
音楽は日常の生活で生演奏を聴く機会は少なく、コンサートホールなど特別な機会に限定される。一方、町の中で生の演奏を聴くと、少し足を止めて周囲の風景をあらためて眺めたり、音に聴き入ったりしてあらためて音楽に気づくことができる。三四朗さんはコンサートホールをでて町中や自然の中で演奏活動をしている。それはあたかもアトリエから外の世界にでて描きはじめた印象派のような存在に似ている。日々の生活の中に音楽があるという豊かさに気づかせてくれる。それがストリートミュージシャンである三四朗さんの活動だ。
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