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もう行けないかもしれない場所の記録

世界が驚くべきスピードで分断されていっている。

新型コロナウイルスのパンデミック以降、分断を特に顕著に感じるようになっているけれど、
これは急に始まったものではなく、今までじわじわと進んでいたものが、危機に瀕した中で一気に爆発しただけのように思う。

インターネットが発達し、廉価な航空券も増え、世界の距離が、情報をめぐるスピードが、かつてない勢いで縮まり続けていく中でそれでも世界が分かれていくのは悲しいものがある。

かつていった場所が、行きたい場所が、いつ行けなくなるかもわからない。
かつて旅した場所が精神的に遠くなる中で、せめて楽しかった旅の記録を残して思い出にしたい。


第一弾・イラン!駆け抜けるイラン黄金ルート

・地図
https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1LDmC8lcPwky6cDhUzaVFh2GsQ1QkcUHw&usp=sharing

2019年8月、11日間イランを旅行してきた。
・イスファハン
・サルアガセイエド
・マシュハド
・シーラーズ
・ヤズド
・カーシャーン
・アブヤーネ
をめぐる欲張り旅程だったけれど、どの地も全て行って良かったと心から思える旅だった。


【0日目、トランジット】〜あわや登場拒否?!パスポートには余裕を持って〜

イランの入国地、イスファハンまでは広州、ドバイを経由していくのだが、早速初っ端からトラブった。

●中国、広州

中国東方航空の便は定刻通り広州に到着し、私は広州空港を楽しみながら、余裕のトランジットへ向かっていた。まだ余裕のある頃の写真たち。

●便座の宣伝?

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日本だと、「ラグジュアリー」を演出するのに謎にヨーロピアンを起用しがちだけれど、アジアの国がアジア系の美を全面に押してるのって素敵だよね。

日本にいると、美の基準に置いて、西欧系白人への捻れたコンプレックスをメディアが演出していると感じるシーンが多いので、こう言うの見るとテンション上がってしまう。

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さらに良いのは、モデルの女性が腕毛をそのままにしているところ(画質が…見えるかな)
電車広告に、Web広告に、息が詰まるほど執拗に登場する脱毛サロンの広告。女は無駄毛を剃れと言う強制。腕毛を自由にしている人がモデルとしてのロールモデルになり得る社会、最高〜〜

●ベルセルクに登場するベヘリットみたいな腕輪

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「捧げる…」

って言いたくなる。
上海の万商花鳥市場にこれの廉価版が売っているという記事をどこかで読んだことがある気がする。機会があればこれを買って、「ベッチー」と名付けて可愛がりたい。


●猫屎珈琲店の定点観測

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ジャコウネコの糞から拾い集めたコーヒー豆で作る「コピ・コーヒー」と言うものがあるらしい。映画『最高の人生の見つけ方』でそれを知って以降、ずっと飲みたかった。
2019年の3月にも広州の空港を使用して、その時に、「猫屎珈琲」なる店が構内にあることに気づいた。
「コピ・コーヒー」、中国語ではそのまんま「猫の糞のコーヒー」って書くんだ!オブラートに包んでなくてウケる!と思ったけれど、その時は財布事情が厳しくて飲めなかった(何せコピ・コーヒーは高い)。

今回、満を時して飲んでみようと思ったのに、早くも店が潰れていた…。残念。

●恐怖のトランジット

余裕綽綽でトランジットカウンターに向かい、行先までの予約表を見せると、中国東方航空の職員が深刻な顔で私を止めた。

「あなたのパスポート日数は、有効期限が不足している。このままではイランに入国できないから、あなたを飛行機に乗せることはできない」

…待って?!?!

実際、その時私のパスポートは有効期限がギリギリで、入国日からカウントすると6ヶ月もしないうちに失効する予定だった。

ただ、この時私はすでにイランの入国ビザを取得していた。そして、イランの入国要件は、「ビザ取得時点で6ヶ月以上有効期限のあるパスポート」となっていた(2019年8月確認時点)。

ビザをとるに際しては、イラン大使館にパスポートの原本を送って発行してもらっている。

ビザ申請時のちょっと面白い話として、申請フォーマットに結婚状況を記入する欄があった。「独身、既婚、未亡人」のいずれかに丸をつけるようになっているのだが、「marital status(結婚状況)」であるべきところが「martial status(軍歴)」となっていた。

厳密にはmartial statusなんて単語はないし、文脈から見てただのスペルミスなのだけれども、物騒でちょっと笑ってしまった。

そんなこんなでちゃんとビザは取得できているし、流石に入国できない人間にビザは発給しないだろう。

「私はビザを持っているし、日本人のイランへの入国は、ビザ発給時点から6ヶ月パスポート有効期限があればできるはず」

「そんなことはない、このままだと、どの道イランで入国拒否される」

その後ひたすら押し問答が続いた。
「じゃあ日本大使館に連絡して確認する」
「イラン大使館じゃなくて?」
「そうかもしれない…」

等、大使館の番号も知らないのに取りあえず大きな機関の名前を出して食い下がってみた。

「入国できない乗客を乗せたとなっては、中国東方航空の責任問題になって、罰金を払う必要があるのでダメ」
「ドバイで別の航空会社に乗り換えるから迷惑はかけない」
「ここを通ってもどのみちドバイでイラン行きの飛行機には乗せてもらえないよ」

と脅されたけれど、私はビザを信じていたので諦めなかった

結果、「この乗客が入国拒否されても、中国当方航空は責任を持たない」と言う書類にサインして乗せてもらえることになった。

「入国拒否されたら罰金が発生するし、パスポートはブラックリストに乗るけどそれでも良いんだね?」と言うセリフに「大丈夫!」と強気で答え、搭乗ゲートまで走ったが、心臓はバクバクだった。

搭乗予定機がラストコールをかける中、広い空港内を走り、待機している職員に手を振ってアピールしてなんとか滑り込んだ。

荒い息も落ち着かないうちに、飛行機は広州を離陸する。もし本当にイランで入国拒否されたらどうしよう?その時はドバイに戻って大人しく観光しようかな…確かドバイ入国ならパスポートの残存期間が3ヶ月あれば大丈夫だったはず、と思いつつ眠れない夜を過ごした。

●UAE、ドバイ

西へ西へと飛んでいるのでやたらと夜が長い。
ドバイ乗り換えでは時間が一晩かかるので、エアポートホテルを取っていた。

入国も、イラン行きの便のチケット引き換えでも、中国での騒ぎが何だったんだと思うほどことがスムーズに進み、これはいけるのでは?と余裕を取り戻した。

・ドバイ空港トイレの風景

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注射器を捨てるコーナーが用意されている。
以前、大阪梅田でトイレにいった際、サニタリーボックスに「使用済み注射器を捨てないで」と書いているのを見たことがある。
その時は、「注射=薬物乱用」のイメージが強く、「駅のトイレで薬物乱用なんて治安が悪い…」と思ったけれど、むしろセルフ注射が必要なのは糖尿病等の病気がある人だよね、と改めて気づいた。
インスリンを自己注射する必要がある、とかの場合、注射器を捨てる場所がちゃんと確保されたトイレってかなり安心感があるんじゃないだろうか。


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