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出落ち!救急車で降りたつイスファハン【イラン・1日目】

救急車で降りたつイスファハン空港

イランから入国拒否される恐れのあるパスポートを持ったまま、ドバイからイランへと飛び立った。イランに降り立つ前からストレスフルな旅だった。

そのせいかはわからないが、イランへ向かう飛行機の中で、急に鼻血がドバドバ出て止まらなくなってしまった。30分くらいたち、手持ちのティッシュも尽きたのでCAさんを呼ぶと、結構な出血ぶりに驚いて、慌てて大量のティッシュを持ってきてくれた。

その後、イラン着陸直前まで、合計1時間ほど鼻血を出し続けてしまったので、スタッフに大変心配をかけてしまった。

「席で待ってて、医療班を呼ぶから」

飛行機がイスファハン空港に着陸した後、CAさんが有無を言わさぬ調子で言った。

「大丈夫だよ、もう止まったし。元々よく鼻血が出る体質だから心配しないで」

と断っても、「良いから、念のため、ね?」と押し切られてしまった。
他の乗客が前方の扉から外へ出ていく中、しばらくすると、後方のハッチが開き、医療班らしきスタッフが
「こっちから降りて」と声をかけてきた。
外を見ると、滑走路から空港へと乗客を運ぶバスの隣に救急車が止まっている。

大層な・・・!

あれよあれよと思う間に、救急車のストレッチャに乗せられて空港まで運ばれることとなった。


●「撮ってる場合か?」とは思うが、面白い経験すぎたので思わず自撮り

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イランは正式名称「イランイスラム共和国」、シーア派イスラムを国教とする国なので、入国後はスカーフが必須になる。

●イランで救急車を呼ぶときは「115」らしい

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ペルシャ文字ので書く数字の「5」はハートを上下逆さまにしたような形で可愛い。


空港に着くと、入国者が長蛇の列をなしてカウンターに並んでいた。
イスファハン空港は思っていたより小さな空港で、入国審査窓口が一つしか開いていなかった。

私は救急車で運ばれてきた身なので、医療班に連れられて列に割り込ませてもらうことになった。
ここにきて、パスポートの有効期限が足りないからダメだと言われたらどうしよう?と心配していたが、空港職員は、ビザを見るとすぐに入国許可のスタンプを押し、
「お大事に」
と言ってくれた。

ただの鼻血ですすみません…!

イランはアメリカやサウジアラビアといった諸外国と仲が悪く、イランの入国スタンプがパスポートにある旅行者はこれらの国から入国拒否される可能性があると言われている。そのため、2019年以降、イラン大統領ロウハニ氏は「外国人旅行者が安心してイランを訪れられるよう、パスポートにスタンプを押さず、他の記録も付けないように」と指示している。

私は日本出国前にイランの電子ビザを取得し、その証明として、ビザ取得画面をプリントアウトした用紙を持っていたのだけれど、職員が入国許可スタンプを押してくれたのもこの用紙の上だった。
入国許可スタンプを押してもらったビザのコピーは出国する際回収されてしまったので、イランの入国スタンプのデザインは手元に置いておけなかった…少し残念。

ちなみに、イランと仲の悪い国にはイスラエルも挙げられ、イスラエル入出国スタンプがパスポートにある者はイランに入国できないと言われている。イスラエル側もイランと同じく「外国人旅行者が安心してイスラエルを訪れられるよう、パスポートにスタンプを押さない」という方針をとっているので面白い。

私は2014年にイスラエルを旅行したことがあるが、その際には、出入国記録としてQRコードが印刷された小さな証明用紙をもらった。イランに入国するにあたり、イスラエルに入国歴があることは、黙っていれば特に問題はなかった(だからと言って真似して何かあった時に責任は取れないからおすすめはしないけれど…!)

入国後、空港の椅子に座って待っていると、白衣の医師がやってきて、いくつか問診を行った。
病歴等、問題もなかったので、
「暑かったせいじゃないかな?とりあえず水をいっぱい飲んで体を冷やすように」
ということになり、水飲み場へと案内してもらった。

水を飲んだ後は、「大丈夫そうだね。良い旅を!」
と軽い感じで別れることとなった。

これがアメリカとかだったら、救急車を呼んだ代金が、とか保険は効くのか?とかでトラブルの幕開けだったのかもしれない。
入国早々イランの優しさを感じた。


便利で優しい!イランの水飲み場

イランには、無料で水を飲める公共の水飲み場が至るところにある。後で調べたところによると、「サッガーハーネ」と言うらしい( https://parstoday.com/ja/radio/programs-i50834 )


「砂漠の中で誰も渇かないよう施しをしよう」という良きイスラム精神の発揮、なのかな?

リンクの記事で紹介されているのは昔ながらの水道式水飲み場なのだが、それ以外にも、タンクの中のキンキンに冷えた水をストローで飲む現代的な水飲み場もある。

空港に設置されていた水飲み場もこのストロータイプで、私はその便利さにイラン到着最初の感動を味わった(いきなり海外で生水飲む、っていうのはあまりよろしくないが…)

残念なことに、探しても水飲み場の写真が出てこない…絶対写真に撮ったはずなのに。検索してもめぼしい画像が出てこないので、略図で仕組みを説明してみる(説明が難しい)

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水を貯めて冷却しているアルミ製のタンクに、ストロー入れの箱がついている。
水タンクから伸びたホースに、スイッチのついた筒状の飲み口がつながっている。

箱からストローをとり、筒状の飲み口の穴に挿し、筒についているボタンを押すとストローから水が出てきて飲める、と言うもの。

ストローを使って飲んでいるので、不特定多数の人が使っても飲み口を清潔に保てるし、飲みきれなかった水が溢れて無駄になることも少ない。
スイッチを押すことで水が供給されるので、それまでは水を箱の中で冷却できる、と言う優れもの。これは日本でも輸入して欲しいなー!


入国後早々ぼったくりタクシーに遭遇

イランはアメリカから経済制裁を受けている国なので、イランリヤルをイラン以外で入手することは極めて難しい。
イランの旅行記を見ていると、入国後空港で両替がスムーズにできそうだったので、ドルだけを持って入国した。

イランで両替できる通貨はドルかユーロの2択なのだけれど、私が入国した時点では、ドルの方が両替レートが良かった。アメリカとは敵対しているけれど、アメリカ為替の信頼度は高い、不思議な国だ。

当然の如くイスファハン空港で両替できるだろうと踏んでいたのに、イスファハン空港は小さすぎて両替所がなかった。超有名観光地の国際空港なのに…。空港で両替したければ首都のテヘラン空港から入らなければいけなかったらしい。

仕方がないので、空港で客を探しているタクシーに市内へ宿まで行ってもらうついでに両替所に行くことにした。

空港の外には、タクシーが数台しか止まっていない。超有名観光地の国際空港なのに…。

旅行者の記録を見る限り、イランは中東一と行ってもいいほど旅行がしやすく、人が優しい国、と言われている。実際、私が救急車で入国した時も、空港スタッフや医療スタッフには大変親切にしてもらった。ただし全員が全員良い人というわけではない…まあこれは日本を含め世界のどこでもそうだけど。

タクシーに連れられ、ヤミの両替屋でリヤルを両替したところまでは良かった。
イランリヤルは公定レートと実情レートが大きく乖離して、実際のレートがどれくらいなのか、現地に行くまで知る術がないドキドキシステムだったため、初の両替はだいぶギャンブルだったのだけれど、後で確認したら正当な範囲内に収まる額だった。

問題はタクシーから宿についた時で、運賃として請求された額が相場の3倍だった。
後で知ることだが、ホテルからイスファハン空港への送迎タクシーは500リヤルで手配できる。
それを、タクシーの運転手は1,500リヤルを請求してきた。

到着したてで相場なんて当然知らなかったのだけど、ニヤニヤ笑ってだまそうとしている雰囲気や、途中でタクシーに乗り込んできた、運転手の知り合いだという2人連れが、ニヤつきながら急かしてくる雰囲気が不穏で、疑ってみたり、値切ろうとしたりして騒いでいるうちにホテルのスタッフが様子を見に来てくれた。

ペルシャ語で何事か交渉してくれた後、結局1,000リヤル払って降りることとなった。

ニンジンは果物!丸かじり

予約していたイスファハンのホテルは、Amir Kabir Hotelというところだった。
イランはアメリカから目の仇にされているので、イランのホテルはBooking.comに掲載されないし、イランの国内線はskyscannerで探しても出てこない。国際クレジットカード決済も弾かれる。

どうやって事前予約すればいいんだろう?と思っていたが、大抵のホテルはホームページを持っているので、事前にめぼしいホテルを見つけて連絡すれば宿の予約には苦労しなかった。

Amir Kabir Hotelはこのサイトから予約した。
http://amirkabirhostel.com/

市内の観光地からアクセスが良く、リーズナブルな宿。2日目に行きたいと考えていた村、サルアガセイエッド(Sar Agha Seyyed)へのツアーを主催しているところが予約の決め手だった。

ぼったくりタクシーの魔の手から救われ、ホテルのカウンターへ向かうと、受付の男性がニンジンを丸かじりしながら
「ようこそ my friend!」と手をあげた。彼がホテルのオーナーも兼ねているような様子だった。

「ありがとう、ここまで来れて嬉しいよ」
と返事をしつつも、ニンジンが気になってしょうがなかった。

バリムシャ!と良い音を立てて、ニンジンを食べている。

後で聞くと、イランではニンジンは野菜ではなく果物として扱われているそうだ。
だから、街のジューススタンドにはフルーツジュースとしてニンジンジュース生搾りがある。
ホテルの朝食で出てくる小分けのジャムには、マーマレードのような顔をしてニンジンジャムがしれっと混じっている。

なんだかカルチャーショックだった。

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チェックインの手続きを済ませた後で、国内線の飛行機の手配について聞くと、
「オーナーの娘さんが航空会社に勤めているから、どこへ行く便でもお任せ」
と頼りになることを言ってくれた。

イランの国内線はどうしても国外から予約できなかったので助かった。
このホテルで、「イスファハンーマシュハド」「マシュハドーシーラーズ」の飛行機を予約し、
翌日はサルアガセイエッド村への貸し切りワンデイツアーとしてタクシーを手配してもらうようお願いした。

ホテルは、イランによくある建築様式をしていて、小さな中庭をぐるっと囲むように棟が建っている。
棟の屋上からは、中庭を覆う屋根のように布が張られていて、庭に直射日光が入らないようになっている。
中庭には小さな池があって、その中で金魚が泳いでいた。
小さいながらもペルシャ風情のある、良い宿だった。

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