
バリ島リピーターのバイブル本 《Balisick_超私的バリ島ガイドBOOK #9》
バリ島内の主要観光エリアを少しずつご紹介しているさなかですが、ここで閑話休題。今日はバリ島のバイブル本をご紹介します!

海外旅行をし始めた20代の頃から、購入するガイドブックはいつも、『地球の歩き方』だった。加えて、その土地を旅した人のエッセイ本や行こうとしている旅先を特集した雑誌のムック本などで旅の前情報を仕入れるのが、私のルーチン。
沢木耕太郎さんの『深夜特急』やロバート・ハリス氏の『イグザイルス』にハマり、大沢たかおさん主演のドラマも観て、バックパッカー的な旅に憧れていたのが影響しているのだと思う。加えてあまのじゃくな性格なので、多くの人が買い求めている、頭文字『る』や『ま』のガイドブックシリーズには見向きもしてこなかった。
『地球の歩き方』もエッセイ本も文字だらけ。長い文章を「読む」ことに耐えられなくなっている現代日本人には、私がおすすめする本は、ちょっとしんどいのかもしれない。たけど写真やイラストも満載で、文章も読みやすいし、バリ島の奥深い魅力を知ることができる本なので、ぜひ手に取ってみていただきたいと思う。
まずは一番のおすすめ本から。
写真左上、『バリ島 楽園紀行』(新潮社 とんぼの本シリーズ)。バリ島リピーターがけっこうな割合(私調べ)で持っている、正真正銘のバリ島バイブル本のナンバーワン! この本を読んでバリ島へ向かった人の数は、おそらく相当な数にのぼっていると思われる。
バリの宗教、文化、生活、歴史から旅の仕方まで深く知ることができる貴重な一冊。著者陣はバリ島移住者なので、暮らしているからこそわかる、リアルでディープな内容となっている。
しかし残念なことに、この本、いまは発行されていない。紹介しておきながら、いきなり入手困難で申し訳ないのだが、古本なら手に入るかも。
ほんとうに素晴らしい一冊なので、新潮社さんには切に復刊していただきたいところ。
真ん中は『バリ島 ウブド 楽園の散歩道』。上の『バリ島楽園紀行』とともに、どちらも日本人バリ島移住者のレジェンド、伊藤博史さんたちが執筆した本。バリ島に来たら、必ず数泊滞在してほしい内陸の村、ウブド。美しいライステラス(棚田)やのどかな田園を眺めることのできる「散歩道」をベースに、ウブドの魅力をあますところなく紹介している一冊。
海岸沿いのエリアからは少し離れているのと、バリは他の観光エリアも魅力的なので、どうしてもウブド滞在は短くなりがち。旅系YouTuberのかたたちも、日帰りしかしてない人たちがけっこういて、ほんとうにもったいないなと思いながら観ている。
ウブドが一番、バリ島らしさが濃密だし、田んぼが広がる風景は日本人にも懐かしく感じられ、ぜったいに気にいるはず。世界中からヨギやヨギーニが集まり、ヨガやリトリートの施設も豊富なオーガニックタウンでもあるので、身も心も癒されること必至。長めに滞在することを全力でおすすめしたい。
※改訂版もあるよう。
ちなみに私は、ウブドに行くためにバリに行っていると言ってもいいくらい、ウブドにばかり滞在してきたし、ウブドが大好き。
3冊目、一番右は『旅のゆびさし会話帳 インドネシア語』。この本だけで簡単なインドネシア語がしっかり覚えられる。
かわいいイラスト入りで、シーンごとにうまくまとめられており、とてもわかりやすい。お互い伝えたいことを、ページを指差しながら対話する。そんなコミュニケーションも、ほのぼのしていて楽しかった。
いまはスマホの翻訳アプリで意思疎通ができてしまうから、ほかの国の言葉を覚えようともしなくなり、なにか大事なものが抜け落ちてる気がするのは私だけだろうか。

最後に、この連載の④でご紹介した『TRANSIT no.63』も、あらためておすすめしておきたい。
わたしの旅考①
めんどくさいほうの旅
旅のガイドブックって、どうしてどれもこれも同じような体裁、同じような内容で、通りいっぺんのことしか書かれていないのかなと、昔から不思議に思っている。
頭文字が「る」や「ま」の2冊は、表紙はもちろんページデザインもド派手で、文字の大きさや色づかいもガチャガチャ。見ていて目が疲れてしまうのは、私だけではないと思う。
だけど、ほとんどの人がガイドブック界のこの2つの巨頭のどちらかを買っているのではなかろうか。
肝心の内容も「観る」「遊ぶ」「食べる」「買う」「泊まる」のスポット情報ばかり。その国やその土地の人々の生活や文化、歴史、言語など、異国を旅するのに一番知っておきたい内容は、ほとんど書かれていないし、書かれていたとしても後ろのほうにほんの少しだったり、読む側も華麗にスルーしている気がする。
人気のお店に行って、人気のメニューを食べて、人気の観光スポットに行って、人気のホテルに泊まって、人気のお土産品を買って、映える写真がたくさん撮れること=旅、になっているようで、なんだか残念。みんながすることを同じようになぞるだけの旅で満足してしまうって、なんだか味気なくない?
さらに最近は旅系YouTuberのかたがたが、世界中あちこちの国に行っては、私たちの旅の予行演習をしてくれている。なんでもかんでも、こと細かく映像で教えてくれるから、誰でも安心して初めての土地へ旅立てて、助かるといえば助かる。
だけど、その一方で、心震わすような何かに、偶然出合うことのよろこび(セレンディピティ)とか感動はなく、自分で考えて対処する力とか直感まで削がれてしまうのは、ものすごくもったいないなと思う。
余談だけど、旅系YouTuberの方たちは、みなさん同じお店にばかり行っていて、情報が使いまわされてるのにも少しげんなりしている。ウブドで言えば、ワヤンとかビアビアとかサンサンとかトゥーキーズとか、またか!と思いながら観ている。そして、その国の言葉で挨拶をしている人も少なくて、そのことにもけっこう驚いている。お邪魔してるんだから、現地の言葉で、朝、スラマ パギッって、言ってみようよって思っちゃう。
コスパやタイパという言葉が生まれ、無駄なことはすべて省かれる傾向は、旅においても同じなのかも。なんだかなあな、ご時世だ。
そういう意味では、私が紹介した本も、私が書いているこの連載も、“めんどくさくない旅”がしたい人には向かないのかも。
バリ島に限らず、他の国にお邪魔するときは、現地の歴史や文化をなるべく深く知りたいと思っていて(戦争のこととかも調べちゃう。特にアジア諸国へ行く場合、太平洋戦争時に日本が侵略、加害をしているから、ちゃんと勉強しておかないと失礼だよなという気持ちがある)、そして自分の国との違いについて考えたり、その土地の人々がしていることを同じように体験してみたり、現地の人ともできるだけコミュニケーションをとって、仲良くなれるような旅が私の理想。
だから、コスパ&タイパとは無縁。大きなプラン以外は、だいたい行き当たりばったり。だから失敗も多い。いわゆる “めんどくさいほうの旅” ばかりしている。
だけどそんな"めんどくさい"旅の中にこそ、一生忘れられない宝物のような思い出が転がっていると信じているし、これからも私はそういう旅をしていきたい。
(この連載も、同じような気持ちで旅をしている人&したい人に、読んでもらえたら、とてもうれしい。)
次回は、主要観光エリア紹介の続きへ。
インドネシア語のコーナーは、あいさつの言葉をご紹介します!
お楽しみに。