博物館都市ヒヴァ-ウズベキスタン記4-
5月28日
ふと目が覚めると、ちょうど日の出前だった。昨日はあの後11時ぐらいに布団に入り、2〜3言友人と言葉を交わしたら寝てしまっていた。それでも日の出が見たかったので目覚ましだけはセットしたが、必要なかったようだ。
友人も起きていたので、持ってきたショールを羽織り外に出る。5時すぎ、外は肌寒くまだ薄暗い。トイレの辺りまで歩いたが、寒くなってきたのでテントで上着を羽織って戻ってきた。その数分で空はかなり明るくなり、地平線がオレンジに染まり始めている。私達は駐車場の横から、どちらからともなく砂漠に向かって歩き始めていた。何も言わず思い思いの方向に歩いて行く。時々立ち止まっては、風紋や日の出、外から見たキャンプの写真を撮っていく。切り取っておきたい景色を次々と。こんなふうに自分のためだけに写真を撮るのはいつぶりだろう。私の携帯は、家族のイベントやお出かけの写真で埋め尽くされている。旅行に行ってすら、最近は家族の思い出を残すために写真を撮っていた。自分のための写真は、撮っている間も私を元気にしてくれる。
あまり遠くに行っては危ないと、日の出の撮影がひと段落したところでキャンプに戻り始めた。後数十メートルというところで友人と合流する。「ええの撮れた?」私が聞くと、「こんなん」と言って写真を見せてくれた。
テントに帰って身支度を終えた頃、ラニアさんが朝食に呼びにきてくれた。大きなテントに移動すると、しばらくしてカップ2杯のミルクを持ってきてくれた。予約の時オプションでお願いしたラクダのミルクだ。搾りたてらしく、ほんのり温かい。ちょっと躊躇ったが、思い切って一口飲んでみる。ラクダのミルクは匂いが少なくあっさりしていてかなり飲みやすかった。サラッとしていてほんのり甘い。これでチーズも作るのか聞いてみたら、脂肪分が少なくて作れないと言われた。なるほど!
食事も終わり、チェックアウトでお金の精算。料金は合計で107$。内訳は宿泊1泊3食付きが60$,ラクダのミルクが2$,寝台列車の料金が予約料込みで15$,ヒヴァ駅からの送迎が30$だ。
ウズベキスタンではアメリカドルも流通していて、場所によってはドルで金額を言われることも。ウズベキスタン・スムで払いたければ、スムでいくらかを聞けば金額を教えてくれる。けれど1スムの価値が低いので、大きな金額はお札がたくさん必要でややこしいので、ドルのほうがラクかもしれない。
チェックアウト後、オイベックがヒヴァ駅まで送ってくれた。行きとは違い駅まで直行したので2時間くらいで到着。
-ヒヴァ- ウズベキスタンで初の世界遺産登録された町で、中心部の城壁の中に昔の町が丸々残っている。どうやら私達は西門の前で降ろしてもらったようだ。門の前は広場になっていて、お土産物屋さんの横をタクシーやバスが行き交っている。思ったよりかなり賑やかで、The観光地だった。砂漠の静かな一夜からえらいギャップだ。
気を取り直して門から中へ。門には回転バーのゲートがあって、簡単な荷物検査をしている。門を抜けるともうそこは中世の遺跡の世界。石畳の通路に石造りの建物。タイルの門や塔があちらこちらから顔を出し、いきなり異世界に迷い込んだみたい。通りに所狭しと並んだお土産物屋さんと観光客が、ここは21世紀だと思い出させてくれる。この後2都市周ったが、城壁内が昔からそのまま残されたヒヴァは、一番異世界感が強かった。
とりあえず荷物を置くためにホテル探し。門の横にあった地図でインフォメーションを見つけたので、そこで場所を聞く。途中1度は迷ったが、お土産物屋さんのコワモテお兄さんが意外と親切に教えてくれて、無事到着。今日のホテルは遺跡の中。古い遺跡をそのまま使っているので玄関が小さく、気を付けてみないとうっかり見落とすレベル。ちゃんと場所を聞いてよかったー!
ホテルには中庭があり、それを囲むように客室が並んでいた。部屋は小さいながらも必要なものはそろっており、エアコンもあって快適。2日間シャワーを浴びてなかったので、まずはシャワーを浴びて遅めのランチへ。
ランチはホテルからメイン通りに出た角にあるレストランへ。ガイドブックで気になっていたマンティ(ジャンボ茹で餃子 肉の味付けはクミン ヨーグルトソースで食べる)、サラダにシャシリク(ケバブ)。どれもおいしくて食べる手が止まらない。マンティはボリューム満点でそれだけでもお腹が膨れたが、おいしかったので完食。
食後、やっと観光に繰り出す。レストランを出てちょっと歩いて目についた、ジュマモスクに入ろうとしたが、チケットを門まで行って買うように言われる。門で150000スムで共通券を買い、出直し。このモスクはイスラムのモスクのイメージと違い、細かい彫刻が入った美しい柱が何本も整然と並んだ木造のモスク。石とはまた違った独特の静謐さに感動。
通りに戻りお土産物を覗きながら歩く。通りには小さな出店が所狭しと並び、それぞれに特徴のある物を売っている。ヒヴァ名産のラクダの毛で編んだソックス、スザニという刺繡の小物や布、ウズベキスタンナンの焼くときにつける模様のスタンプ、陶器の笛、アラベスク模様のマグネット‥‥そしてどれも手作りのようで、全く同じ物があまりないのだ。正直ウズベキスタンにはあまり買い物に期待してなかったのだけど、お宝探しのようで見るのが楽しい‼結局マグネット2つ(6ドル)、ソックス2足(50000スム)、鳥の笛(10000スム)を買った。それから立ち寄った昔の宮殿に見張り台を見つけ、遺跡を見渡す。辺り一帯石造りの遺跡の景色は、21世紀とは思えない。まだ夢を見ているようだ。
それから一度ホテルに戻り、今後の予定を立てる。その時の気分で自由に予定を決めたいので、私たちはあまり先の予定は決めない。訪ねた町が気に入ったら長居できるし、次に行きたければ直ぐ移動できるから。
ヒヴァの観光エリアはこじんまりしていて、明日の午前中で十分周れそうだったので、お昼に次の町ブハラに移動することに。あらかじめインフォメーションで聞いておいた話では、列車だと夜しかないので日中の移動ならタクシーになるらしい。値段は1台で750000スム。6時間くらい乗ることを考えると、破格の値段だ!早速フロントでタクシーの手配をお願いする。ウズベク人のお兄ちゃん、英語は片言なので翻訳アプリでやりとり。ああ、文明ってスバラシイ。wifiを使ってホテルも予約。
のんびり休憩をしたら、小腹がすいてきた。時計を見るともう8時。そろそろ行くかと外に出たら、まだ太陽が明るい。夕陽に照らされた遺跡の間を縫うように歩き、夜景の見えるレストランを探す。2件断られ3件目でやっとテラス席に着いた時には、もう日は沈んでいた。
テラスからはライトアップされた遺跡が見下ろせる。なんて贅沢!レストランはほぼ満席で、まだまだ賑わっている。だんだん気分が高揚してきた私たちは、ビールとカクテルを注文。
「乾杯」
いつもはビーチで注文するピニャコラーダに、遺跡のど真ん中で口をつける。変な気分。
「どう?おいしい?」友人が聞いてくる。
「うん。普通においしい。そっちのビールはどう?」
「美味しい。さっぱりしてて飲みやすいよ」
イスラム圏でも観光地ではお酒が飲める。ただ後で気が付いたが、どのお店でも飲めるわけではないし、酒屋さんはほとんどない。うーん、やっぱりイスラム教。
ウズベキスタンのスープ、マスタヴァとナンで小腹を満たしレストランを出ると、すぐ前の広場ではまだ小さな子供たちが歓声を上げながら走り回っていた。時間はすでに10時半。それでも大人たちは特に気に留めることもなく見守っている。「うるさい」と威嚇する人も、「なんでこんな遅くに子供がいるんだ、早く寝ろ」とムダに正義を振りかざす人もここにはいない。子供の歓声は幸せの音だと思う。邪魔されることなく響き渡る歓声に、幸せな気分になって帰路に着いた。
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