静かなる強さ 　　ツワブキ

ツワブキは、秋の深まりを告げる花。鮮やかな黄色の花を、まるで凛とした姿で立ち上がらせるその佇まいは、静けさの中に確かな強さを秘めています。その花言葉は「困難に傷つけられない」。確かに、冬の訪れを前に、寒風にもめげずに咲く姿からは、どんな試練にも耐え抜く強靭さを感じます。

私は幼い頃、庭先に咲いていたツワブキの花を見て、何となくその「強さ」に惹かれた覚えがあります。風に吹かれても、冷たい雨に打たれても、ツワブキは倒れることなく、しっかりと地に根を張り続けていました。花が枯れてしまっても、その大きな葉は、冬の間じっと息を潜め、また次の春を待つ。そんな姿に、植物が持つ「耐える力」と「静かな粘り強さ」を感じずにはいられませんでした。

生きていれば、誰しもが困難にぶつかることがあります。それは時に、心を大きく揺さぶり、くじけそうになるようなものかもしれません。私自身も人生の中で、どうしようもない孤独や悲しみを感じた瞬間がありました。でも、その度に思い出すのは、あのツワブキの姿でした。見た目には華やかさはないけれど、季節が変わる度に変わらずそこにある安心感。そして、どんな逆境にもじっと耐えるその姿勢。私たちも、ツワブキのように、静かに根を張り、季節が巡るのを待てばいい。そんなふうに思えるようになりました。

「困難に傷つけられない」という花言葉が語るのは、外見の強さだけではないでしょう。それは、心の中で何度も折れそうになりながらも、また立ち上がる力。折れるたびに少しずつ強くなり、再び光に向かって歩む力です。ツワブキが毎年変わらず咲き続けるように、私たちもまた、心の奥底に眠る静かな力を信じて、少しずつ前へ進んでいくことができるのだと思います。

秋の終わりに咲くツワブキは、そんな私たちに寄り添い、そっと励ましてくれる花なのかもしれません。