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桜草に寄せて 〜消えぬ想いのかたち〜
桜草の花言葉は「若い恋」「純潔」「初恋」などがある。その姿は、儚げでありながらもどこか力強く、まるで青春の一瞬を切り取ったようだ。桜草を見るたびに、かつての淡い想いが胸に蘇ることがある。
私は十代の頃、誰かを心の底から好きになったことがあった。その気持ちは、まさに桜草のように可憐で、純粋で、しかし、ひとたび季節が過ぎればそのまま散ってしまうものだった。彼女に言葉を伝えたいと何度も思ったが、結局その時は言い出せずに終わってしまった。伝えられなかった想いは、そのまま心の奥底にしまい込まれ、時折こうしてふいに浮かび上がる。
思い返せば、あの時の自分は桜草のように自分の心を真っすぐに見つめる勇気がなかったのかもしれない。しかし、その一瞬のためらいもまた、青春の美しさの一部だったのだろう。花が咲くのと同じように、私たちの心も一瞬の輝きを放ち、そして過ぎ去る。けれど、その儚さがあるからこそ、その記憶は鮮やかに心に刻まれるのだ。
桜草は静かに咲き、その美しさを主張しない。それでも、そこにある存在感は決して消えることがない。あの日の気持ちも、今ではもう風化したように見えるが、確かに心の奥に息づいているのだ。