記憶を、ぬくもりを、未来へつなぐ。 - War Childhood Museum in Sarajevo -
"戦争はある日突然やってきて、
気づいたときには、
ぼくたちは戦場にいた"
2016年、この本の著者と出会って
いまサラエボに立ち寄ったのは、
彼がつくった博物館に行きたくって。
▼WAR CHILDHOOD MUSEUM
平和学をやっていた身としては
知覧、広島、長崎、沖縄、
アウシュヴィッツ、アンネの家、
負の歴史をつたえる博物館を
いままでたくさん見てきたけど
こんなに小さくてシンプルで
こんなに人の体温が感じられて
こんなに胸にぐっとくる博物館は
ぜったいにはじめてだった。
▼設立者のヤスミンコ
わたしは史学や博物館学の専門家じゃないから
なにかもっともらしいことは言えないけど
展示に紛争の背景や
歴史的事実の説明は一切なくって、
あるのは、
いくつもの遺品と、
それについての文章(寄贈した人が書いたもの)と、
その文章が収録されたオーディオガイド。
一つ一つの文章は1分くらいで
全部まわって1時間ちょっとだったから、
展示物はきっと50個くらいかなあ。
50個の記憶が、
とても丁寧にそこに並べられていて、
まるでその本人がそこにいて、
そっと、自分の記憶が読まれるのを待っている。
そんな感じがした。
スノーマンのキャンドルの話が私は好きだった。
記憶を継承することは、
映像にせよ、文章にせよ、
演劇にせよ、音楽にせよ
ずっと色々な方法が試されていて。
主観的過ぎてしまうと、
観る人にとって自分ごとにはならなくって、
彼・彼女の悲しい記憶で終わってしまう。
それじゃ意味がなくって。
でもこの博物館は、その距離感というか
空白の使い方、行間の取り方が、とても上手。
博物館というよりどっちかというと
美術館的な展示で、
鑑賞する人の想像力を、
とてもうまくひきだしていて。
シンプルなのに、
記憶と、ぬくもりが、伝わって
つい共感して、ぐっときてしまう、そんな感じ。
これからの平和博物館に
たぶんものすごい影響を
あたえるんじゃないかなあ。きっと。
帰りがけに、
オリンピックスタジアムの横にある、墓地へ。
亡くなった方の墓地をつくる土地がたりなくて
スタジアムの土地をつかったんだって。
一面の墓石、1992 - 1995に亡くなった方が本当に多い。
まだ20年ちょっと前の話。
昔ツアーを取材してくれた大川史織さんが、
マーシャル諸島の、ある日本兵の記憶を映画に。
彼女も、本当にすごいなあ。
「まだ、つながれると思う。あの時代の戦争の記憶に。」
記憶を、ぬくもりを、
私たちが未来へつないでいく。
だって世界は、平和であってほしい。
それだけ。
わたしも、自分の立場から。
がんばろ。