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6.三重県・日帰り旅(2024年9月)【後編】めぐり合わせの美味たち


地元民おすすめの甘味処でかき氷

六華苑を出てスマホの画面に目をやると、時刻は12時少し前。朝からお茶とお茶菓子しか食べていないことに気づく。小さくたたんでバッグにしまったイラストマップ「見どころくわな」をカサカサと開いてみると、はまぐり料理の店が多い「花街」という通りがあるようだ。

はまぐり料理が有名なのか。せっかくだから食べてみようかな? そう思い、花街へと向かう。きょろきょろしながらしばらく歩いていると、はまぐりの描かれたのれんがかかる建物が目に留まった。
いわゆる料亭という感じではなく、入りやすそうだ。「宿場の茶店 一」か。へー、マンホールカードも置いてあるんだ…と自動ドアに貼られたチラシをチラッと見つつ、ボタンを押して中へと入る。

狭い店内に店員さんが2人。食べ物屋さん…じゃなさそうだぞ? 戸惑う私。微妙な間に不思議そうな顔の店員さん。

「マンホールカードください」

思わず、そう言っていた。ああ、マンホールカードですね、と、カウンターの店員さんはスルッとカードを差し出す。これが目的だったのよね、という顔で受け取り、並んだお土産を軽くひやかしてから店を出る。
外に出て直ぐに調べると、飲食の提供は2024年5月に終了したらしい。ひょんなことから、人生初のマンホールカードをもらってしまった。

何となくご飯の気分じゃなくなり、第2の目的地アイス饅頭のお店「マルマン」へ向かう。
マルマンを知ったのは、テレビがきっかけだ。ある日の休日、溜まった洗濯物をせっせと(洗濯機が)洗い、私はせっせと干していた。洗濯物を全て干し終え、テレビをつけて一息つく。大柄のテレビタレントが、あずきたっぷりのアイス饅頭を食べている。

…食べたいな。

そんな軽い気持ちで決まった三重旅。せっかく三重へゆくのにアイス饅頭だけじゃもったいないよね、と思い六華苑にも寄ったのだ。
一番の目的と言っても良い、マルマンのアイス饅頭。が、たどり着いたときにはマルマンは閉まっていた。降ろされたシャッターには、「本日売り切れました。」と手書きの紙が貼られている。

ああ…残念。まぁ、テレビでやってたし、売り切れてても仕方ないよね。あきらめて、スマホの地図を開く。確か、六華苑で教えてもらったお店「花乃舎」が近くにあるはず。
地図を見ながら進むと5分ほどで花乃舎にたどり着いた。

六華苑のスタッフさんおすすめの花乃舎

中へと入る。正面にドンっと構えるケースには和菓子が陳列されている。右奥には喫茶スペース。時刻は12:30を過ぎたところで、5つあるテーブル席の内2つは埋まっていた。案内された席へ座ると、隣の席のカップルはかき氷を食べている。観光案内所で見つけ、なんか可愛いからと貰っておいた「かき氷や!! クワ名!! 桑名かき氷街道」と書かれたスタンプカードを思い出す。
出された冷たい麦茶をごくごくと飲みつつ、メニューとしばしにらめっこ。うーん…抹茶味と黒蜜きなこ味があるのか…アイスのトッピングもできる、と。
しばし悩み、黒蜜きなこのかき氷を注文した。

花乃舎の喫茶スペース

背もたれにもたれかかり、先程パシャパシャと撮った六華苑の写真をチェックしている間に、1組が席を立つ。と思ったら直ぐに次々とお客さんが入ってきて、全ての席があっという間に埋まってしまった。やはり、ここは地元の人気店なんだ!
わくわくしながら待っていると、黒蜜きな粉かき氷が運ばれてきた。

で…でかい…!

小山のようなかき氷

私は、好んでかき氷を食べるタイプではない。かき氷といえば、子どもの頃に夏祭りの屋台で食べたことがあるよねレベルの人間だ。食べきれるだろうか…と心配しつつ、匙を氷の山にサクッと刺し、一口分をすくって口に入れる。途端に、舌触りの良い氷が滑らかに溶けてゆく。
え? かき氷ってこんなにサラッとしているの? 夏祭りの縁日のザクザクとした氷の記憶しかない私にとって、これは衝撃の食感だ。

きな粉が氷にくっつき、微妙に固まったところがサリッとした歯触りで良いアクセントになっている。サクッサラッサリッ、サクッサラッサリッ。氷で冷えすぎた舌を一緒に出された温かいお茶でたまに温めつつ、あっという間に完食していた。

かき氷ってこんなに美味しかったのか…

お会計を済ませ、観光案内所で手に入れたスタンプカードをそっと差し出す。25店舗のスタンプが押せる、まっさらな台紙。下の方に「スタンプを3つ押すごとにデカ缶バッチやステッカーをゲット!」と書いてある。
まっさらな台紙を見て心配になったのだろう、スタンプを押しながら「9月末までなんですよ」と教えてくれた。
記念にスタンプが欲しかっただけなので、大丈夫です!
(もちろん、心の中で思っただけです!!)

天むすと、はとみつあんのおまんじゅう

花乃舎を出て駅へゆき、切符を買って改札を通る。名古屋方面とは反対の電車に揺られて30ほどで、津駅に到着した。

津。「日本で1番短い名前の市」と社会の授業で教えられた時から、何となく気になっていた。かき氷が出てくるのを待ちつつ調べてみたら、どうも桑名から電車一本で行けるらしい。

この機会を逃したら絶対行かなそう。そう思ったら、足が自然と向いていた。改札を出て駅前のバスロータリーへ向かうと、桑名とは比べものにならないほど人がいた。さすが、県庁所在地!

スマホが教える2番のバス停に行くも、標識に降りたいバス停の名は見当たらない。どうしよう…誰かに聞こうかとキョロキョロしていたら、直ぐそばのビルの1階に観光案内所があるのが見えた。

観光案内所に駆け込み、案内所の女性に、スマホの地図を見せながら行きたいお店の場所を指し示す。お店の名前を伝えても、女性は「?」という顔をしていたが、急に分かったという顔になる。中心市街地マップと書かれた1枚の地図を取り出し「三重会館というバス停で降りたらすぐよ。1番と2番、どちらから乗っても行けるから」と、教えてくれた。

お礼を言い観光案内所を出ようとしたとき、「近くに蜂蜜まん本舗の本店もあるから良かったら行ってみて」と素敵な笑顔。

程なくバスがやってきて、無事に乗ることができた。バスの中で、受けとったばかりのA4サイズの地図を見る。蜂蜜まん本舗は載っているが、目的のお店「めいふつ天むすの千寿」は載っていない。スマホの地図と照らし合わせてみると、どうも蜂蜜まん本舗のすぐ近くにあるようだ。

三重会館で降り、まずは天むすのお店へ。ここが天むす発祥のお店かぁ…

天むす発祥のお店「めいふつ天むすの千寿」

前回の愛知旅で食べられなかった天むすを、まさか三重で食べられるとは。わくわくしながら引き戸を開けると、入り口直ぐ横に置かれた椅子に年配の女性がちょこんと腰掛け「いらっしゃい」と出迎えてくれた。

カウンター8、9席の小さなお店で、内側では女性が3人、忙しそうにしている。カウンターに座っているのは男性客1人。他にも何人か人は居るが、皆んな入り口近くに立ったり周りの椅子に座ったりしている。

何だろう? 独特の風味の香りが店内を満たしている。

少し待つように言われ、空いてる椅子に腰をかける。カウンターの中の女性たちは忙しく手を動かし、出来上がった天むすたちを包んでは待っている人々に渡していく。
どうやら、お持ち帰りもやっているようだ。というか、お持ち帰りがメインなのかも? カラカラと引き戸を開けて入ってくるのは、お持ち帰りのお客ばかり。

しばらくして、カウンターに座るよう案内される。天むすが出てくるのを待つ間も、持ち帰りのお客が入ってきたり、持ち帰り予約の電話が入ったりと忙しい。

こりゃあ、かなりの人気店だ。

話しかけては悪いので、注文とか取られてないけど良いのかな…と不安になりつつ、店内のテレビを見たりしながら大人しく待つ。店に入ってから20分ほど待ったろうか。「お待たせしました」の声とともに、小さな天むす5個がお行儀よく並んでやってきた。

わきにきゃらぶきを携えた、小さな天むす5人衆

念願の天むすである。私が知っている天むすはおにぎりの頭からエビの尻尾がピョコンと生えているタイプなのだが、ここの天むすは尻尾どころか衣も見えない。

期待いっぱいに一口ぱくり。輝くお米の程よい食感の後、中に入った海老天の衣がサクッと弾ける音と共に、独特の香りがふわっと広がる。

お…美味しい…!

今まで食べたことがある天むすとは、違う。何が違うのかうまく言えないけれど…一口目の、食感と香りとが混ざり合って醸し出される忘れがたい感じ。

一口目のあの感じを求め、2個目をまた一口。サクッとあたる衣。広がる独特の香り。私は人と比べると食べるのが遅いのだが、5個目を口に入れた時にも衣はまだサクッとした食感を残していた。

帰り際、椅子にちょこんと腰掛ける女性に「すっごく美味しかったです」と伝えると、にっこりと笑顔になって「また来てください」と送り出してくれた。

さて、次は蜂蜜まん本舗だ。めいふつ天むすの千寿へ向かう途中で見つけていたので、迷わず直ぐに着いた。

津観光案内所おすすめの蜂蜜まん本舗

中に入ると、10人ほどの列ができている。商品は「はちみつまんじゅう」一択らしい。
奥にはテーブルといす、小さなお座敷が見えるが、皆んなお持ち帰りするらしく、お金を払って商品を受け取ると直ぐにお店を出てしまう。

コロナもあったし、中では食べられないのかな? そう思いながら自分の順番を待つ。ふと貼り紙に目が留まる。プラス5円で店内で食べられると書いてある。

「中で食べられますか?」と一応確認してから、1つ注文する。

「お席でお待ちください」とのことなので、好きな席に腰掛ける。こぢんまりとした店内を改めて見回す。あ、お茶はセルフなんだな。立ち上がり、お茶を自分で取って来てまた座る。

店内には、とんとんかん! とんかん!! と子気味良い音が響いている。
その間にも、次々とお客さんが入って来てはちみつまんじゅうをたくさん買って帰ってゆく。どの人のイントネーションも柔らかい。地元の人たちっぽいな。

しばらくして、「お待たせしました」と焼き立てを運んでくれた。

蜂蜜まん本舗のはちみつまんじゅう

うむ、小さくて可愛らしい。はちみつっていうくらいだから甘いんだろうなぁ…と予想しつつパクリ。予想通りの甘いあんこだ。はちみつあん特有のほんの少しだけざらっとした舌触り。小さいので甘さがしつこすぎず、喉に少し残る甘さをお茶でゴクリと流し込むところまでが一連の動作になる。

うむ、これはパクリゴクリ、パクリゴクリと繰り返したい感じ。先ほどの列に並びなおし、後で楽しもうとお持ち帰りに3個購入した。

今回の旅で出会った三重の人たちは、感じの良い人が多かったな。さりげなくおすすめしてくれたお店はどちらも、とっても良かったし。
あいすまんじゅうを食べたいと、出かけてきた三重の旅。あいすまんじゅうは食べられなかったけれど、たくさんの『あ、わたしこれ好きだな』に出会うことができました。

今回の旅で使ったお金

  • 交通費:約20000円

  • 現地交通費:1450円

  • 六華苑:460円

食費

  • ペットボトルのお茶(2本):320円

  • お抹茶セット:600円

  • 黒蜜きな粉かき氷:1000円

  • 天むす:800円

  • はちみつまんじゅう:75円

自分土産

  • はちみつまんじゅう(3個):210円

  • 赤福餅(8個入):900円

  • なごや天麩羅(2枚入):220円

  • ゆかり(8枚入):691円

合計:26726

【前編】日本の夏を感じに
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