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フリーダ・カーロについて

フリーダ・カーロは、20世紀のメキシコを代表する女性画家で、メキシコシティに旅行に行った時に伝記を読んで初めて知った。病気と事故、その後遺症、そして何よりディエゴ・リベラとの関係によって苦しんだ一生は、私の心を強く揺さぶり、惹きつけた。そこで、それまでは全く関心のなかったコヨアカンにあるフリーダ・カーロ美術館「青の家」に、急遽行くことにした。

私は芸術については、よく分からない。フリーダの絵は緻密でとても上手だけれど、大体において不気味さをはらんでいる。痛みや苦しみを表現しているらしい。眉毛のつながった自画像も有名だけれど、彼女はいつもどこか悲しそう、または辛そうに見える。それは、フリーダの苦悩の人生を知っているから、そう思うだけかもしれない。

フリーダの生家でもある青の家は、時間ごとに区切られた入場券を前もって買い、行列に並んで入場するほどの大盛況だった。閑静な住宅街のコヨアカンの一角に突如現れる長い行列は少し異様なほどで、フリーダの人気ぶりを物語っていた。誰もが彼女の人生に魅了されずにはいられないのだと思う。

青の家では、展示された絵画や写真より、家の飾りに一番強く惹かれた。特にキッチン。壁に書かれたディエゴの名前で、ディエゴがどれだけフリーダにとって大きな存在なのかを感じた。そして、至るところに飾ってあった不思議な民芸品の人形。中庭を見渡せる二階のアトリエとそこから続く小部屋が一番素敵で気に入ったけれど、そこにある小さなベッドの上で、フリーダはどれだけ苦しんだのだろう、と考えずにはいられなかった。肉体的にも、精神的にも。

ソチミルコ運河に行くツアーに参加した時(と言っても夫と二人だけだったけど)、頼んでもいないのに、ガイドさんがフリーダとディエゴが暮らした別の家(兼アトリエ)にもちょっと寄ってくれた。その家は超高級住宅地のサンアンヘルにあって、ここに家を買うのが夢なんだ、とガイドさんは言っていた。石畳の細い道が印象的な町だったけれど、何となく暗い感じがして、私はヨーロッパ風のコヨアカンの方が好きだった。フリーダの人生も、サンアンヘルよりコヨアカンにいた時の方が平穏だったように思う。

フリーダの激動と苦悩の人生に魅了されるのは、苦しいのは私だけではない、と思えるからなんだろう。私以上に苦しみ、それでもその痛みや苦しみを表現しながら生き抜いた人がいる。彼女の絵画やその才能よりも、私はどうしてもそこに惹きつけられる。

キッチン
不思議な民芸品の人形
中庭を見渡せる
小部屋に置いてあったベッド

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