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旅先で怒られたことある? 2

「あるに決まってる」
 
これが私の答えである。
 
一人旅は、ある意味、それが楽しいのだ。

その時は少しびくついたりするが、後で考えると人よりも特殊な体験が私の旅を豊かにしてくれるのかもしれない。
 
LAのUnion Station(ユニオン駅)に行った時のことだ。

Union Stationと言う名の駅はワシントンDCにもあって、利用したことが何度かある。同名の駅はNew Yorkにもある。

私のNew Yorkへの一人旅では、この駅にまず行って、東西の路線の地下鉄を利用するのだ。
帰りもできればこの駅で降りる。
地上にある公園では毎回楽しめる。

それよりも、すぐそばに、オーガニックの食料がメインのスーパーマーケットがある。Whole Foods Market(ホールフーズマーケット)という名前だ。他の地域でも見かけたのでこれはチェーン店なのだと思う。そこの食材を手に入れて、ホテルのキッチンで料理をして夜景を見ながらゆっくりと食べるのはなかなかの経験になる。

(New YorkのUnion Squareに隣接する Whole Foods Market)

と言うわけで、LAで

Union Stationと言う名前に引かれて行ってみた。
地下鉄のハブ駅だけあって、大きい。人の出入りが忙しい。

ラウンジにはピアノが置いてある。通行人が1曲弾いてまた歩き出したりするのを見るだけで楽しい。

私は暇だったのだろう。
この駅周辺を、この駅構内をとにかく歩き回った。
 
何となく気が付いてみると、いつの間にか駅の外に出ていた。
見るとたくさんのバスが止まっていて、たくさんの人たちがそれに乗り込んでいた。(この記事の表紙画像参照)

バスの横を見ると「Dodgers」とブルーの色で書いてある。

私はアメリカのMLBに詳しくない。
この時には勿論大谷翔平選手のことは知らない。
私が来たこの年は2016年の夏だ。
彼は(多分)まだ日本の日ハム球団で野球をしていたのだと思う。
 
今年(2024年)彼がドジャースに移籍してあの活躍をするなど知るわけがない。もし知っていたなら、このUnion Station初のバスに乗ってスタジアムに行ったかもしれない。
 
実は2016年の時ですら行きたい気持ちがしていたのだ。
ただ、野球が終わって帰るときは夜になる。
私の一人旅の基本は、夜は歩き回らないことに決めている。危険から身を避けるためだ。
 
それを考えて、行くのをやめることにしたのである。大谷翔平がその時に今の活躍をしていれば、その旅の基本を破ってもバスに乗り込んだに違いない。もっともチケットが手に入るとも思えない。
 
今更ながら、球場を見るだけでもしておけばよかったのに、と反省しきりだ。
 
そんなことを考えながら、地下鉄のホームで電車を待っていた時、思いのほかホームが何番もあることに気が付いた。やはり「ハブ駅」だったのだ。
 
地下鉄だけではなく、2つ向うのホームにはアムトラックが停車していた。
 
それを見ると、いろいろと思い出していた。
 
私はNew YorkからワシントンDCに行くときに、妻と乗ったのがアムトラックだった。友人と一緒に行った時もこの電車で移動した。

初めての時はグレイハウンドバスだったが、アムトラックはゆったりできて気分最高だ。
 
荷物は日本式に言えば「赤帽」(今はいないのかも)に預けていたので、座席では気楽なものだ。2人で向かい合わせに乗って、食事は食堂車まで移動してテイクアウトだ。
 
自分たちの座席でゆったりと窓外の景色を眺めながら、テイクアウトしたハンバーガーを食べる。バーガーキングのものだ。
外の景色は、ISUのあるテレホートからの景色と比べると、起伏があって楽しめた。
ISUの寮近くから乗り込んだテレホートからNew Yorkまでバスで移動した19時間の旅では、ほぼ平野が続いて景色は同一みたいなものだった。たまにトイレ休憩のために立ち寄るバス停が平野の中から突然異質な姿を見せてくれた。
 
テキサス州での友人の車でヒューストンまでの移動では、牧場つづきの赤茶色の土の色が新鮮だった。
 
LAで発見したホームに停車していたアムトラックの姿を収めるべく、カメラを向けて動画で撮っていた。
 
すると、大きな声がしてきた。
女性の声だ。
ビデオカメラの画面に気を取られていたので、その声が最初は気が付かなかった。そのうち近づいてきたのだろう。すぐ近くで何か叫んでいた。
画面から目を移すと、自転車に乗った女性が叫んでいたのだ。
 
「写すんじゃないわよ」
 
多分そう言っていたのだと思う。
 
《いや、写してなんかないのに・・・。画面に勝手に入ってきたのはあなたじゃないですか》
 
勿論そんなことは言わない。心の中で思っただけだ。
ホテルに戻って確認してみると、確かにその女性が映りこんでいた。

画面には、ずっと叫んで文句を言っている女性が自転車を押しながら近づいてくるのが写り込んでいた。
 
ホテルでその場面を確認して、その気がなかったとは言え、「ごめんなさい」とつぶやいてみた。




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