【商業BL感想】そしてすべてが動き出す 内田カヲル
【旧ブログより】
2017年7月 2日 (日)
とうとう胸筋が額縁に!?
【あらすじ】
高校の先輩と後輩が再会し、編集者と漫画家から恋人同士になった坂口と藤代。仕事場を引っ越すことになり、不動産会社に勤める坂口の高校時代の友人・三崎と会うことになったが、藤代は高校時代から三崎のことを苦手に思っていた。その三崎から坂口が昔、漫画家を目指していたが、藤代の存在によってその夢をあきらめたことを知らされる。ショックを受けた藤代は―――?
【感想】
あー、ずっと見ていたかったのに終わってしまいました。
胸筋胸筋と大騒ぎしたこのシリーズもひとまず完結。
毎回取り上げてきたので、今回も胸筋の話題から。
これは表紙の画像。
とうとう額入りしました!
そして、坂口が胸筋を露出する理由が発覚。
「なんかキュウクツなんだよ」
…わかっていましたよ。
そりゃそうでしょうよ。
そんな胸筋していたら窮屈でしょうよ。
ていうか、やっぱり身近にいたら、理由を聞いてみたくなるよね。
読者の疑問を代弁してくれてありがとう!
それと同時に、
“その辺にある服をを適当に着ている”
という事実も判明。
結局、“いつから”という疑問は解消されないままでした。
しつこいようですが、いつか単発でこの件についてのエピソードが読んでみたいものです。
そして、完結編となる今回の物語の中心となるのが、引っ越しと、なぜ坂口は藤代と一緒にいるのか?という話。
お得意の曲解と思い込みにより、描かなくなってしまう藤代。
珍しく坂口が暴力と身体ではなく、きちんと言葉で気持ちを伝えるシーンがいくつかあり、とても感動的だった。
「そして続き~」で、坂口が藤代に対して、
“ほっとけないと思う気持ちが、好きということなのだろう”
と、自分の気持ちを自覚するところがあって、今回はその“ほっとけない”と思うようになったそもそもの理由について触れられている。
素直になった坂口のセリフひとつひとつに、好きだとか愛しているという言葉を使わなくても、より深くて強い気持ちは伝えられるというあたりまえのことをしみじみ。
他に印象に残ったところは、坂口の同級生・三崎がなぜか坂口に
「男がいいならオレでもいいだろう」
と告白をブッこんで、結果“素っ頓狂”とあしらわれて終わってしまったところ。
かわいそうなくらい雑な当て馬にもならない扱いに心が痛んだが、よく考えると、ある意味離婚問題を抱える男性の不安定さがリアルに現れているのかもと思ったり。
そして前巻で、二人を脅迫していた元アシスタントの大高がナイスアシスト!キミもいい編集者と出会えるといいよねとエールを送りたい。
最終巻だからかなのかエ口もたっぷりで、
「もっと景気よく腰振れこのヤロウ!!」(坂口)
「腹上死したらゴメンなさい」(藤代)
「出そう…(略)ネームが」
には笑った。あと、
「オレ…先輩にッ…責められたいよぅ」
という藤代のセリフに一瞬、
え、ここにきてリバか!?と浮足立ったが勘違いだった。
今回特に、エ口でもそれ以外のシーンでも男前な坂口の名言がたくさんあって、藤代は本当に愛されているなぁと嬉しくなった。
あと重要なところは、先輩に読んでもらいたくてただただ描き続けてきた藤代の資産が都内に土地付きで家を買えるほどになっていたというところ。
漫画家という職業に夢を感じさせてくれてよかった。
雰囲気から察するに、おそらく都内の一戸建てをキャッシュで買えるのだろうから、少なく見積もっても6~7千万はあるよなと。
とにかく藤代には、老後の心配しなくていいくらい今のうちにたくさん書いて金貯めとけよと言いたい。
「あきらめなければ夢はかなう」
という言葉があるけれど、
「あきらめなければかなわなかった大切な事」
「捨てなければ得られないもの」
の方が実は多い。
夢は人生のすべてではないし、一つしかないわけではない。
一つの夢に固執すると他の可能性を自ら捨ててしまうことになるからもったいない。
結果論だけれど、藤代も坂口も、自分の夢に固執しなかったから夢が叶った。
そして二人とも一度自分の夢を捨てている。
坂口の夢をあきらめさせたのは藤代で、藤代の捨てた夢を拾ったのが坂口で。とても素敵なハッピーエンドだと思う。
人生そんなもんかもね、とおもった作品。すごく好き。
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