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【りんごのひみつ】第2回 美味しいりんごはあなた次第

地域おこし協力隊の活動として、新規就農した永井温子(ながい・あつこ)さん。前編でお聞きしたのは、自身がりんご農家となり見えてきた「りんご農家のあり方に多様性がない」という課題。永井さんはその課題を解決するため、「旅するりんご農家」として新しいりんご農家の形を模索し続けています。

そして、多様性があるのはりんごも同じ。赤くて大きいりんごが美味しいのか?そもそも、どんなりんごが美味しいりんごなのか……?りんごの多様なあり方を知れば、あなただけのお気に入りのりんごをきっと見つけたくなるはず。

永井 温子(ながい・あつこ)さん
弘前大学卒業後、数年間関東の広告代理店などで勤務。退職後、2019年に青森県弘前市で地域おこし協力隊となり、りんご産業の持続的な仕組みづくりをする「りんごプロジェクト」に参加し2020年には自ら就農。前職の経験を活かし、弘前市のりんご産業の課題解決に挑戦している。

文:岩田なつこ

りんごが白い?食べて感じるそれぞれの良さ

「りんご」と聞くと、赤くて丸い姿を想像する人が多いかもしれない。けれど、実はりんごには多様な種類があり、必ずしも赤いりんごがだけが美味しいとは限らないのです。例えば弘前市には、なんと真っ白の見た目で、しっかりした甘さと酸味が美味しい、「ホワイトむつ」というりんごがあるそう。

-りんごの多様さや、それぞれの美味しさを知らない消費者のために、りんご農家である永井さんはどんなアプローチをしているのでしょうか。

「どういうりんごが『良い』のか、という発信の機会を作っていくことは大事だと思います。直接販売しに行っても、お尻まで赤いのがいいんでしょという言い方をする消費者の方は、いっぱいいるんです。

確かに、糖度が上がってくことで赤くなるのは事実なんですけど、糖度が上がっていなくても、赤くできる技術もあるんです。例えば、がっつり陽の光を当てるとか。やり方によっては、甘くなってないのに、赤いものもある。だから、みなさんにいろいろなりんごを食べてもらう機会を作れたらいいなと思います。

ただ、りんごって年中売られているという認識だと思うんですけど、おいしい時期ってやっぱりあるんです。その旬の時期が、あまり長くない品種もたくさんあって。そういう品種は既存の流通だとお届けするのがむずかしいんです。食べるためには直接買ってもらうか、来てもらうか。だから、ぜひ食べに来て欲しいですね」

それぞれのりんごの良さを、活かしてあげたい

-りんごに並々ならぬ愛情を持つ永井さん。彼女がりんごを育てる上で、大事にしていることとは。

「その品種の特性に合わせた作り方をできればいいなと思っています。例えば、ふじという品種は、綺麗な色を付けるために葉取りっていう作業があるんです。実の周りにある葉っぱをぶちぶち取って、満遍なく光が当たるようにする作業なんですけど。

綺麗な色にするための、過剰な葉取りをおこなってしまうこともあるのですが、取りすぎると葉っぱからの養分が実に入っていかなくなって、返って味が落ちてしまうというデメリットがあるんです。

見た目を良くするために、味を無視する作業をしたくありません。私の育てる千雪(*)の場合は、見た目より味や機能の方が魅力だと思っているので、取らなかったです」

ちなみに、葉取らずりんごとは、その名の通り葉を摘み取らない自然なりんごのこと。色ムラは出るけれど、格別な味と、永井さんは言います。

「使い方次第で、そのりんごの良さって全然変わってくる。今、弘前でシードル(りんごを発酵させて作るアルコール飲料)が作られているんですけど、生で食べて美味しいふじ、津軽、ジョナゴールドの規格外のものをシードルにしている場合が多いんです。

それよりも、もっとシードルにした時こそ美味しい品種を作って、それをシードルにしていく動きもあっていいかなと思ってます」


りんごには、お尻まで赤いものも、真っ白なものも、酸っぱいものもある。

他にはどんなりんごがあるんだろう?
酸っぱいりんごは、どう使えばもっと美味しくなるんだろう?

たくさんある種類の中から、それぞれの良さを活かすことが重要だと、永井さんは教えてくれます。その良さを活かす使い方に挑戦することで、りんごの可能性がもっともっと広がっていくことでしょう。

最初は苦手だと思ったりんごも、使い方を変えればお気に入りのりんごに変わっていくかもしれない。りんごの個性に合わせた使い方を考えるのは、きっと楽しい。

(*)永井さんが育てるりんご「千雪」の詳しい解説は、自分のペースで畑と向き合う「私のりんご農家像」をご覧ください。

手間暇かけて育てられたりんごたちは、お客さんのもとへ運ばれていきます。

お気に入りのりんごを見つけてみよう

スーパーでりんごを買う時、品種をどれほど気にするでしょうか?
どの品種がどんな味かわからないまま、とりあえずそこにあるりんごを買う方も多いかもしれない……。

りんごの見た目では違いがすぐにわからなくても、味にはそれぞれの特徴が溢れていると永井さんは言います。

「私もりんご畑を始める前はふじ、王林、トキくらいしか知らなかったんですけど、日本だけでも2000品種くらいはあるんですよね。
 
やっぱり、それぞれ魅力がいろいろ異なってくるので、それをちゃんと伝えて、買ってくれた方が自分のお気に入りのりんごを見つけられる。そのお手伝いができるりんご農家になれればいいのかなと思ってますね。育て方でも、味わいって結構変わってくるので、私自身もりんごについてもっと知りたいなと思います」

ちなみに永井さんのお気に入りのりんごは、恋空。小さめで、ちょっと酸っぱい。8月下旬に取れるかわいい品種だそう。

世界を含めると、15,000種類があるというりんご。探しがいのある中から、あなたのお気に入りのりんごを見つけてみてはいかがでしょうか?

永井さんは日々、様々な種類のりんごを試し、発信しています。隠れた人気を誇る「ぐんま名月」や、真っ白なりんご「ホワイトむつ」、フランス生まれの「カルヴィル・ブラン」……

永井さんが今回の取材で紹介してくれたりんごは、世界に15,000種あるりんごたちのほんの一部。

りんごのひみつを、あなたものぞいてみてはいかがでしょう?

Atsuko Nagai/りんごをもっとたのしもう|note

永井さんのりんごの購入はこちら


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