埼玉県主催「防災×アウトドア×大学」イベントREPORT:立教大学学生による政策提言をきっかけに開催が実現!
埼玉県新座市にある立教大学新座キャンパスで、地域住民や学生を対象とした防災イベントが開催されました。たべぷろは主催する埼玉県庁や大学側と連携して、災害時の食をテーマにした講話を担当しました。35度近い猛暑になった当日。夏休み中の子ども達を連れたファミリー層を中心に、約40名が参加したイベントの様子をレポートします。
本イベントは2023年11月、同大学コミュニティ福祉学部 原田峻准教授のゼミ生たちが、埼玉県知事との意見交換会で提言した内容を具現化したもの。
学生たちは、若い世代の防災・減災意識の喚起を目的に、リサーチとディスカッションを重ねながら、アイデアを膨らませました。アウトドアキャンプと防災の親和性に着想を得て、地域の避難拠点でもあるキャンパスを舞台にした企画に昇華。主催する埼玉県は学生達の考えや思いを大切にして、協力団体との調整や集客などを伴走しました。
食べ慣れた”おいしい”が支えること
参加者の体感理解を大切にしたプログラム進行では、昼食に非常食(防災食)を採用。アルファ化米と長期常温保存可能なレトルトパウチ食品をハンバーグや焼き鳥、カレーから選んで実食するスタイルです。参加者は、昼食時間に食べごろになっているよう、アルファ化米に常温の水を入れてスタンバイ。中には、はじめて”アルファ化米”を食べる人の姿も。
実食の感想をきいてみると、家族で参加していた小学4年生の男児から「スープが飲みたくなった」「おうちに帰ってお味噌汁が飲みたい」、大学生から「常温だと食べ続けるのはつらくなりそう…」などの声があがりました。
「非常時用」として開発された食品は、いざというときに私たちを支えてくれる大切なエネルギー源となります。しかしながら、こうした食品を備蓄するだけで「災害に備える」になるのでしょうか? そんな投げかけを織り交ぜて、災害時の食と栄養の問題と新しい防災のアプローチ「フェーズフリー」についてお話しました。
いざという時にだけ活躍する馴染みのない味ではなく、ふだんから食べ慣れている好きな味が、もしものときの自分を助けてくれるのではないか?
自分にとって、大切な人達にとって”おいしい””ホっとする”と感じられる食事や食材ってなんだろう?そんなことを皆で考える時間となりました。
「備える」から、普段の生活で気付いたら「備わっていた」に
防災の当たり前を捉え直したフェーズフリーのアプローチは「備えましょう」から「災害時だけでなく、日常から役立つものやサービスを身の回りにおきましょう」という提案。”備えない防災”とも呼ばれています。
「災害が起きたときのことを想像して、備えようね!」と言われても、当事者意識をもって備えることはなかなか難しい。ふだんから心地よく使っているモノ、サービス、コト、仕組み等が実は災害にも強く、これらが増えることで自然に備わっている状態、災害に強い社会を作るという考え方は、私たちが取り組む防災のハードルを下げてくれるのではないでしょうか?
アウトドアやキャンプを楽しむ習慣も、フェーズフリーな価値を生むと言えます。「いつも」からテントを張り寝袋を使って眠ることや、制約環境下で工夫しながらおいしいごはんをつくることに慣れていると、「もしも」のときの対応力も自然と備わっていく、ひいては災害に強い自分づくりにつながる期待があります。
平時に軸足をおいた”備えない防災”の話が、参加者のみなさんが自分や家族に合ったフェーズフリーな食を考え、少しずつ実践するきっかけになっていたらと願います。
今回のイベントでは、昼食や講話の会場となった食堂以外にも屋外や体育館を有効利用。スタンプラリー形式を取り入れた起震車体験、煙体験、消化体験、学生達による防災クイズなどを通じて、楽しみながら学べる充実の1日でした。
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