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第3回「編集会議は危険がいっぱい!?」
「来年以降の特集で決まっていないのは…」
月刊誌というのは、毎月〆切がやってくる。
だから、いつも少し先の号まで取材や制作が同時進行している。
そうでなければ〆切に間に合わないからだ。
しかも、我が編集部の場合、少数精鋭がすぎる。
ゆえに、かなり先の企画まで決まっていて、10月の段階で、来年の特集企画は夏まではほぼ決まっている。
それ以降もアイデアというカタチではあるが、ほとんど道筋はついているのが通常だ。
ファッション誌ほど流行を追いかける必要はないし、しっかりと取材に時間をかけて正確で有益な情報をお届けする。
それが我が「食べもの通信」のモットーだからだ。
…と、いうのはすべて編集長まりりんの受け売りだったりする。
あの人、こういう話を案外熱く語ったりするものだから、ただでさえオジサマ受けがいいのに、さらにオジサマたちを大量に釣り上げてゆく。
年齢不詳のモテ女、恐るべしだ。
「できれば、夏前にカロリーゼロの話はやっておきたいんですよね」
ライターのたくやくんの発言が、かなり逸れた話をぐいっと元に戻してくれた。感謝。
「あぁ、夏前になるとダイエットする人が増えるからねぇ」
「え、しもむーさんもそういうこと気にするんですか? 意外~」
「あいちゃん? それは私にはダイエットは必要ないって褒め言葉だと思っていい?」
「はい。それに、お子さんもいるし、ことさらスタイルとかに気をつけなくてもいいかな~って」
「あー、えっと…あいちゃん、ちょっと黙ろうか?」
「美味しいものはカロリー多いし、カロリーゼロはいろいろと問題あるし、悩ましいわよねぇ♡」
悪気は一切ない。一切ないが、若干、空気を読めないあいちゃんの発言に、しもむーの雰囲気がピリッとし始めたと見るや、すかさず、たくやくんが割って入る。
うん、見事な間合い。
そして、空気を変えつつ、さり気なく話を先に進めるまりりん編集長。
さすがである。
「でも、カロリーゼロってインパクトあるし、女子にとっては見逃せないっていうか、飛びついちゃいますよ、やっぱり」
あいちゃんもようやく空気を読んでくれたようだ。
よかった。助かった。
しもむーが鬼変する前で、本当に良かった…。
ちなみに、しもむーの鬼変については、まあ、追々その現場が登場することがあると思うので、詳細はその時に。
いや、別に触れるのが怖いとか、そういうことじゃないから。
絶対にそうじゃないからっ!!
その後も、たくやくんからの問題提起を喧々諤々と語り合う編集部の面々。
ようやく本格モードに突入した編集会議は、まだ、続くらしい。
※何度も言うようですが、このお話はフィクションです。