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第8回「続 あいちゃんとたくやくん」
「そもそも、何でたくやさんはうちを熱烈志望したんですか?」
と、まだ少しケンカ腰であいちゃんが問いかける。
あ、前回の話、まだ続いてたんだ。
ってことで、第2ラウンドをどうぞ。
「あれ? あいちゃんは知らなかったっけ? たくやくんの志望動機」
としもむーが口を挟めば、間髪入れずにあいちゃんが答える。
「はい。だって不思議じゃないですか。うちって別に大手でもないし、
作ってる月刊誌も地味だし。普通はもっとメジャー狙いにいくのにって」
おーい、あいちゃーん。
さり気なくも盛大にディスりやがりましたね、我が編集部を。
事実だけど、そうなんだけど!!
「食の安全ってヤツに目覚めちゃったからなぁ」
そうそう。そうなんだよ、たくやくん!
我が編集部の根幹っていうか、使命っていうか、
いちばん大事な部分ね、それ。
「男の人って、とりあえず量が多けりゃOKって感じでしょ?
食の安全とか気にします? 男のくせに」
「男のくせにって発言、令和のコンプライアンス的にはアウトな」
「うわっ、細か…男のくせに」
ボソリとアウトな発言を繰り返すあいちゃん。
気持ちはわかるんだけどねぇ。
「そういう新しい価値観っていうの? 面倒よね。
コリジョンルールかっての」
「ミドル・ボス? 一応聞きますけど、それって野球の話ですか?」
「そうよ。怪我を防ぐためだか何だか知らないけど、
本塁突入の迫力が半減しちゃったのよねぇ」
「つまり、令和のコンプライアンスで
いろいろ窮屈になったことと似ている…と」
えーと…ミドル・ボスが口を挟むと、余計に話がややこしくなるので、
とりあえず、スルーしませんか? しもむーさんよ。
「たしか、都市伝説がきっかけだったのよね? 食の安全に興味を持ったの」
って、軌道修正、早っ!
「そうですね」
「ふぅ~ん、どんな伝説?」
興味津々なあいちゃんに、たくやくんはその都市伝説を話して聞かせた。
「大学生が急病で亡くなってしまった後、しばらく誰も気づかなくて。
数週間後に自宅で発見されたけど、遺体がまったく腐っていなかったとか。それは、防腐剤が入っているコンビニ弁当ばかり食べていたからだって
都市伝説」
「うーん、いろいろツッコミどころ満載なんだけど?」
あいちゃん、都市伝説とはそういうものです。
「で、まあ、防腐剤のことを調べ始めたら、それ以外にも食品にはいろいろヤバそうな物が入ってるって知って…」
そう言うと、たくやくんはチラリとあいちゃんを見て言う。
「だからさ、ジャンクフードばっかり食べてると、
身体によくないと思うよ」
たくやくんの気遣いある言葉に、周囲がほっこりしていると…
「大きなお世話ですぅ~。子どもの頃からずーっとジャンクフード食べてるけど、まったくの健康体なので、ご心配なく~」
あいちゃん…空気、空気読んで!
「別に心配はしてない。ただ、食べもの通信の編集者としての自覚が
足りなすぎるって話だ」
「仕事とプラベートは分けるタイプなので、私」
「ったく、可愛くないな!」
「たくやさんに可愛いとか思われなくても構いませーん」
あぁ、また始まった。
よく飽きないよね、あのふたり…な空気が編集部に流れる。
もしかして、これを読んでいるあなたも、頷いていたり…するね。
創設直後のイーグルスと激弱時代のバファローズの争い(by ミドル・ボス)は手を変えネタを変え、今後も続いていくだろう。
ま、仕方ないね。編集部名物だから。
※改めてお断りしておきますが、これはあくまでもフィクションです。
実在の人物に似ていても、フィクションなのであしからず。