第0回 「面倒くさがり」さんの料理本?:編集者の心が動いた企画書
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こんにちは。
食べもの通信社で単行本の編集&Xの中の人をしている者です。
前回の第2回で「後日に第0回として『企画~原稿作成』についても書く予定です」とお知らせしました(言ってしまった…!)。ということで、当時を思い出しながら書いてみたいと思います。
運命の企画書との出会い
それは今から約1年前、2023年11月のことです。いつものようにワクワクしながら届いた企画書を開くと、著者紹介の欄でこんな一文が目に飛び込んできました。
――面倒くさがり? 手間暇かけたい方は見ないで??
一瞬「えっ?」と思いながらも、その言葉にふっと気持ちが軽くなりました。「そんな方が提唱する料理ってどんなものだろう」と逆に興味津々になったのです。
読み進めると、「面倒くさがり」という言葉の裏には、料理に対する信念とこだわりがしっかりと感じられました。手間をかけるべきところはきちんとこだわり、力を抜けるところはゆるっとする。そのメリハリに「これはいいな」と、心をつかまれました。
著者との出会いと嬉しい再会
社内で検討した結果、直接お会いすることになったのですが、驚いたことがありました。同席されていた方が、なんと10年ほど前に一緒にお仕事をした方だったのです。「あの本でご一緒した…!」と、思わず声が出るほどの嬉しい再会(私だけかもしれませんが…笑)。
その後も終始和やかに進み、著者さんの魅力にますます引き込まれました。気さくで優しい。人の話にしっかり耳を傾ける姿勢。努力家。そして、わからないことは「わからない」と率直に伝えられる――そんな素直さも持ち合わせた方で、思わず身が引き締まる思いでした。
編集者と著者――お互いの視点
編集者として大切にしているのは、「この方の本を作りたいと思えるか」というシンプルな気持ちですが、これは一方通行ではありません。著者の側にもきっと「この人(私)に編集を任せていいのか」という視点があるはず。
…とここまで文字に起こしてみて、改めて気づきました。「先方も私の人間性を見ているんだ(どうしよう)」と。気づいた瞬間、ドキッとしましたが、これも真剣な本作りの一環なのでしょう。
後日、ありがたいことに著者さんの側からもよいお返事をいただき、弊社(食べもの通信社)で出版することが決まりました。
原稿執筆と打ち合わせの繰り返し
そこからは「構成案→テスト原稿→全原稿執筆」という流れで作業が進んでいきました。時間を重ねるごとに、初対面のときに感じた印象――「素直で、粘り強く、勉強熱心」という姿がますます確信に変わっていきました。
初めての執筆ということもあり、著者さん自身、相当悩みながら進めていたと思います。でも、こちらが何度ダメ出ししても、ただの一度も言い訳せず、弱音を吐かなかった。そのひたむきな姿勢に、私も「ご本人の良さを最大限に引き出す本にするんだ」と、自然と気持ちが奮い立ちました。
原稿を何度も何度も読み返しながら、「どうすれば著者さんの個性が一番輝くか」をひたすら考える日々。何か月もそのことばかり考えていましたが、不思議と苦しさはなく、心から楽しんでいました。
打ち合わせと幸せなテレワーク
著者さんのご自宅は、偶然にも私が会社へ向かう途中にある駅の近く。テレワークの日には直接ご自宅へ伺い、何回も打ち合わせをしました。
そのたびに手作りのケーキやお昼ごはんをごちそうになり、「なんて幸せなんだろう…!」と心の中で感激していました。もちろん、これは仕事です。念のため。笑
今は12月半ば。著者さんはレシピ原稿の仕上げに取り組んでいる最中です。先日、初校ゲラをお送りしましたが、ひと言だけ「ゲラよりも、レシピ原稿を先に仕上げてくださいねー!」と添えました。私もゲラの確認と相談事項の整理を進めているところです。頑張ります!
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