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#34 腎臓病の食事が難しい理由2(たんぱく質)

CKD(慢性腎臓病)のステージ3以降ではたんぱく質が多いと腎臓に負担がかかって病状が進行するので、たんぱく質の量をコントロールないし制限をしたほうがいいという指針があります。

難しい理由 1ーたんぱく質を少なくという意味ではない

たんぱく質をただ少なくすればいいというわけではありません。
少なすぎるとたんぱく質不足を起こしてしまうので、そのちょうど良い量が決められていて、標準体重(身長m×身長m×22)に1kgあたりのたんぱく質量を掛けて計算します。

難しい理由2ーたんぱく質は肉・魚・卵・牛乳のみではない

皆さん、たんぱく質というと何を思い浮かべますか?

肉・魚・卵・牛乳でしょうか?

昔から小中学校で、たんぱく質は肉・魚・卵・牛乳、炭水化物は米・小麦、ビタミンは野菜、カルシウムは小魚・牛乳、ミネラルは海藻と習いましたものね。詳しく知るまでずっとそうだと思っていました。

実は精白米も小麦もたんぱく質がかなり含まれています。食べ物には各種の栄養素が混在しているのが普通です。

小中学校で習ったものは、その栄養素を多く含む食べ物という意味だったのです。あまりにも小中学校で習った印象が強く、その後栄養について詳しく学ぶ機会がないと、そう思ったままになってしまうこともありませんか?
実は、そう思っていたのは私だけではなかったということが判明し、やはり他の人もそう思っているよね、と明らかになったことがありました。

難しい理由3ーそもそも、たんぱく質の量って?

たんぱく質の量が例えば20gといったら、肉が20g、魚が20g、牛乳が20gというわけではありません。

既にたんぱく質とは何ぞやということをわかっていらっしゃる方には当然に感じることでしょう。

理解してからしばらくたんぱく質の計算ばかりしていたら、管理栄養士さんが思われているように当然のことと思ってしまい、以前は全く分かっていなかったのをすっかり忘れていました。先日、認知度のあるホテルのシェフの方とお話したら、以前の私のように、「たんぱく質20gというと肉、魚、卵、牛乳でそれが20gということですか?」と聞かれました。

そうそう、やっぱりそう思いますか? でも、食に携わっていてもう経験もかなりありそうな方でもご存知ないのだな、と思いました。

食材によって、部位によって異なりますが、100gあたりたんぱく質はどれくらいの量という目安の量があります。
ですので、例えば、たんぱく質20gというのは、豚肉と魚で実際の量は異なります。

しかも、脂身が多いとたんぱく質の量が減るので、部位によっても異なります。
さらに、実際には厳密に言うと、地域差や個体差などもあります。
そこまで言うと、毎回分析しなければならず、どうすればいいかもわかりませんが、ブレがあるにせよある程度目安があるので、その目安でえいやっと計算するとします。

そうしても、一番厄介なのは、たんぱく質20gが、食材の20gでないところですね。成分表と計算が必要になり、これは毎日忙しい家庭では無理だ!と思いました。

難しい理由4ーアミノ酸スコア

たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されていますが、そのうちの9種類は体内で合成できないので、そのたんぱく質を含む食べ物を摂らなければなりません。

よく、桶でアミノ酸スコアについて説明されています。
9種類のアミノ酸スコアのうち一つでも欠けていると、桶の一部の木の上部が壊れているのと同じで、水を入れてもそこから水が流れ出してしまい、いっぱいにならない。つまり、100%のたんぱく質を取ろうとしても、80%のたんぱく質量(桶でいうと高さ)が一つでもあると、他のアミノ酸が100%であってもトータルで見ると80%しかないことになるということです。

そして、それぞれのアミノ酸スコアについて記載があります。(数字は%)
肉は大抵100、魚は種類にもよりますが100、その他牛乳大豆は100。お米は61、パン44、トウモロコシ31。

例えばお米の低いアミノ酸スコア、リジンを補うために大豆がいいというように書かれています。

なるほど~、と最初は思いました。
しかし、なぜかもやもやとしてきました。

どのくらいの量の大豆で補えばいいの?? と思ったのが最初だったと思います。(あまりに多い量だと大豆はカリウムが多いのでNGですし)
それから、徐々に、この100%って何を基準に100%??、たとえば肉が少なくてお米が多い時と、肉が多くてお米が少ない時はどうするの?? と思うようになりました。

ある方の助言により、調べてみるとありました、ありました。
各アミノ酸の量を、体重1kgあたり1日何ミリグラム取るのがいいという推奨量がありました。

食物によって各アミノ酸が高いもの、低いものがあるので、この各アミノ酸の量を満たすために組み合わせると効率よくたんぱく質を食べられるということなのですね。

例えば、アミノ酸スコアが低くて漏れ出てしまったたんぱく質は、たんぱく質にならずに燃焼しなければならず腎臓に負担がかかるそうです。

健康な人であれば、たんぱく質をある程度たくさん摂っても問題ないので各アミノ酸スコアが推奨値を超えるようにすればいいと思います。しかし、腎臓病の方の食事は、アミノ酸スコアが低いとたんぱく質がしっかりとれていないことになりますし、全て推奨値を超えるようにすることだけを考えると、たんぱく質の量が多くなってしまう懸念もあります。

とっても難しい問題で、これは「難しい理由3」のたんぱく質の量を計算する以上に手間がかかります。


では家庭ではどうすればいい?

日常ではお米>パン>じゃがいも>トウモロコシでアミノ酸スコアが低いから、そればかり食べているとたんぱく質がきちんととれていないと頭に入れておくといいです。
とはいえ、腎臓病の方は、そもそも食べる量が限られているので、それだけだと心配です。しっかり適切な量のお米を食べつつ、アミノ酸スコアの高いお惣菜もバランスよく食べる必要があります。



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