IBSお仕事インタビュー③看護師のえりちゃん

【IBS(過敏性腸症候群)】
炎症などの病気がないにも関わらず、お腹の痛み、下痢・便秘などの症状が数ヶ月以上続く消化器官の疾患。ストレスが原因と考えられていて、治療法は主に「食事療法」「運動」など生活習慣。

→→そんな「健康なのに困る!」「根本的に治らない!」というやっかいな病気は、日常生活に支障をきたすことも多々あるとされています。当事者は、どんなふうに自分の身体と折り合いをつけて、どんな仕事でどう働いているのでしょうか。

IBSが理由で仕事を辞めたことのある私:たべあずがIBS当事者インタビュー!

第三回目となる今回は、看護師でライターのきむらえりさん。医療知識を活かした記事を数多く発信されています。
しかし働く中でうつ病を発症、その後睡眠障害のナルコレプシーが発覚、2年半前に転職したときにIBSを自覚したとのこと。

体調と折り合いをつけながら働くのはさぞ大変だろうと思いますが、そのあたりのお話を聞かせてもらうことができました。

〜学生時代からライターとして活躍していたきむらさん。Twitter上でそっとフォローしていたのですが、ふとしたきっかけからやり取りが始まり、ゴールデン街で会うに至りました〜

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ーー発症したのはいつ?

発症、というか自覚したのが、今の職場に入ってちょっとしたくらい。新しい職場に移ってストレスが強かった時期なんだけど、ちょっと下痢の回数が多すぎる、変だな、と思って病院に行って診断されたのが最初。

今思えば、学生のときもそうだったかもとは思うけど、自分の体調って人と比べない。会話にのぼるにしても「お腹痛いー」「わかるー」くらい。だから、自分の当たり前がみんなの当たり前だと思ってた。でも下痢とか便秘とかは客観的な判断ができるから、その頻度が明らかに増えて、なんかおかしいな、って気付けて病院に行った。そこでIBSの治療薬、ポリフルを処方してもらって、それで良くなった。症状が出ても、それを飲めば割と穏やかに過ごせる。

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ーー看護師さんの仕事ってトイレに自由に行けない、薬が飲めない、っていうシーンが多そう。

ある!ただ幸いなことに、集中力が必要なシーン、急に患者さんの状態が悪くなっちゃったとか、そういうときにはアドレナリンが出るのか、あんまりお腹痛い、って感じにはならなかった。
とはいえうっかりがこわくて、生理用ナプキンつけて仕事したり。

あと予期不安のストレスでお腹痛くなるから、職場に行くときの電車の中がひどかった。一駅ごとに降りながら、今日は無理!今日は無理!とか思ってた。あれは地獄。大した距離じゃないのにすごい時間かかるし、その時間を考えて家を出なきゃいけない。駅のトイレですごいみじめな気持ちになった。なんか変な不調に振り回されてる、たぶんストレスが原因、でもそのとき診断はついてなくてどうにもできなかった。

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ーー自分の症状が人と比べてどうとかわからないし、併発してるとなおさらどの症状が何なのかとか難しいよね。ナルコレプシー(*)に気付いたのは何がきっかけだった?

1年前くらいに、入眠時の幻覚がすごく多くなった。目をつぶってるはずなのに窓の外から誰かが自分のことを見てるのが見えるとか、幻覚なのにものすごく生々しいのが毎日、2〜3週間続いて。それで眠れないのに仕事も眠いなんて言っていられないから、ノイローゼみたいになっちゃった。精神科で話して、そこから検査を受けて診断が出た。

それまでも入眠時の幻覚はあったけどストレスのせいだと思ってたし、みんな眠くなったら身体がしびれるものだと思ってた。昼間に眠くなるのだって、学生のときなんか授業中ずっと寝てたけど、夜職やってたせいだと思ってた。今思えば、会議中にストンと落ちるように寝ちゃうのは変だと思うけど、眠くなる、の程度が強いか弱いかなんて自分ではわからない。

(*)ナルコレプシー:日中の過度の眠気や、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起こることを特徴とする睡眠障害で、突然の筋力低下(情動脱力発作)を伴う。睡眠麻痺、鮮明な夢、幻覚が、入眠時または覚醒時に起こることもある。
(出典:MSDマニュアル https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/09-脳、脊髄、末梢神経の病気/睡眠障害/ナルコレプシー)

ーー診断を受けてから、生活は変わった?

生活がすごく健康的になった。根治療法がないから、朝は起きてる為の薬を飲んで、夜には睡眠薬を飲んで、生活リズムを整えるっていう治療。それを始めたら過覚醒みたいになって、今までなら眠くなって読めなかった本も読めるし、仕事でも状況から考えられることがすんごい増えた。でも本当はそれが普通で、今まで頭の半分くらい寝てる状態で生きてたんだなって思うと、嬉しいは嬉しいんだけど、気持ちがついてこない。

ーー気づくのが早ければ早いほどいいけど、難しいよね。若い子へのメッセージとしては。

とりあえずちゃんと病院に行こう。なんとなくの不調をそのままにして、人に相談もせずずっと抱えてきて、大人になってから、それが病気でした!って後々わかると、結構きつい。これまでの人生なんだったんだろう、みたいになっちゃう。ストレスのせいだからどうにもならないと思い込んでて、ストレスがなくなったらどうにかなると思っていたのが意外とそうでもなかったりする。

ーー病院に行くのが大事。自己診断はNG。

お腹の不調が全部IBSではないし、そこに全然違う病気が隠れてるかもしれない。今ってネットで調べられちゃうから、なんとなく自己流で治療ができるような気がしちゃうけど、ネットを見て「自分はIBSなんだろうな、ストレスもあるし」って放置しちゃうのは危ない。診断自体が、他の疾患の可能性を除外して初めてIBSですよって出るもので、それはもう専門医の領域。自分でIBSだと思ってても、もしかしたら、潰瘍性大腸炎とかクローン病とか、専門治療が必要な病気かもしれない。

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ーーえりちゃんのIBSもナルコレプシーも、病院に行ったことで処方を受けて、お仕事できてるもんね。

不調があるとき、病院に行くこともなく「こういう体質だからこの仕事はできない」とか諦めそうになるかもしれないけど、身体のことに関してはひとまず病院に行ってから考えようねって思う。意外となんとかなるかもしれない。
お腹の不調を抱えてる、多分IBSなんだろうなって思ったら、病院に行けば何かしら診断が出る。それはドクターに任せればいい。その上で、食事制限とか生活の送り方とか、この程度までだったらやってもいいよ、みたいな相談もできるのが病院。自分が病院の関係者だからかもしれないけど、自分の患者としての経験からもそれは思うな。
かと言って、ドクターが生活や人生の全てをどうにかしてくれるわけじゃないから、診断がついた上での折り合いとか、よくないと思いつつもお酒はやめられないとか、そういうところは患者さん同士で共感し合いながらやっていければいいかな、と個人的には思う。

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ーーえりちゃん、ありがとうございました!
「しっかり診断を受けた上で折り合いをつけよう」。医療仕事とメディア発信、どちらもやっているからこそ、安易な判断は促さない、適切な対処が大事と呼びかける姿勢。しかと心に留めます、ありがとう!


・きむらえりさん
記事はこちら→note
Twitterはこちら→@eri010k

ーーあとがき。
お話ししたのは5月の末で、コロナ真っ最中。コロナが明けた暁にはゴールデン街と歌舞伎町、二丁目でシャンパンを開けまくり、ボトルを花園神社に並べて写真を撮ろうと約束をしました。楽しみすぎる!

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最後までお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!

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