屋根のある路上、みたいな/南 阿沙美(仕事文脈vol.24)
「まさか自分がホームレスになるなんて想像もしてなかった」
衣類などを時々渡しているうちに親しくなった女性がそう言った。路上に出て2年ほどだろうか、朗らかな笑顔で言ったその言葉は、まさか今日雨が降るなんて、とか、まさか今日あなたに偶然会うなんて、とかそのくらい自然な出来事に聞こえた。私はその言葉を流さずに、見えない何かからこぼれないようにとっておかなければいけない、と思った。
私はクリスチャンではないのだけれど、縁があって代々木公園で長年食べ物や衣類などの支援をしているキリスト教の団体のお手伝いをするようになって、人から譲ってもらった衣類や日用品を集めて配っていて、そこで会う路上生活をしている人たちと親しくなった。ただ知りたくて声をかける。なんか気になるおもしろい人も多いし、「これあったかいですよ」「これ男物? 女物?」「わかんないけど似合ってればどっちでも大丈夫ですよ」「俺こいういうの好きなんだよ」なんでもない会話だが、相手のことが知りたい、というのと、自分に何かできることがあるのかを、知りたいからだ。
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