【連載】ニイマリコ/男には簡単な仕事#7「もう平和なんじゃけえ、マリちゃんは好きなことをやりんさいね」(仕事文脈vol.24)
私は広島県広島市内の出身だ。父方、母方どちらの祖父母も被爆しているので、被爆三世に当たる。ほんの小さな頃、その呼び名を聞いたとき「ルパン三世みたいでかっこいい!」と思ったのを覚えている。「原爆」「被曝」が恐ろしいものだという認識はあったのだが、ダークヒーローへの憧れを持っていた私は「恐ろしさ」こそが魅力だったし、その原爆によって闇のパワーを授けられし者って感じがする! このパワーは、普通の人間が忌避するものを透視する能力を目覚めさせるのだ……みたいなことを考え、ウットリしていた。「被害」という発想は、まるでなかった。
「男には簡単な仕事」という連載ではあるが、今回の特集「反戦」に沿って、戦争が人の心にどう複雑に入り込んでいくかについて考えるきっかけとなった祖母の話がしたい。
彼女は豪快な笑い声と笑顔がトレードマーク、とにかく明るい人だった。私がどんな無茶をやっても怒らず、お洒落でお料理上手、きっぷの良いおばあちゃん。13歳で被爆した後遺症で(最終的には全摘出することになるのだが)若い頃から乳房が片方なく、他にも手術痕や爆風で飛んだガラス片が身体中に刺さって出来たという、大小の傷があった。他の祖父母は皆50、60歳前後という若さで亡くなっている中、彼女はダントツに長生きだった。
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