【新連載】文脈レビュー vol.01(仕事文脈 vol.25)後編
*本記事は【新連載】文脈レビュー vol.01(仕事文脈 vol.25)前編の続きです*
編集スタッフによるレビュー企画をスタートします!今号の企画をスタートし、編集してきた間に、何を読み、見てきたか、それは誌面に反映しているだろうか。この半年間を思い出しながら、ぜひごらんください。
〈読者レビュー募集!〉
次号vol.26のこの欄に掲載するレビューを募集します。半年間に見聞きした本、映画、イベントなどについて書いてみませんか?お待ちしています!
Review4《小説》語り手の黄金言葉の解釈が、かれらの人生を物語る
『月ぬ走いや、馬ぬ走い』(豊永浩平、講談社)
本書を読んだのはちょうど今年度上半期の芥川賞・直木賞の受賞作が発表になった頃で、読んだ直後になんでこれがとらなかったの?え、候補にもなってなかったのかとびっくりしてしまい、候補作の条件を調べてみると「前年12月から5月までに発表されたもの」とあって初出が『群像』6月号なので対象になっているはずなのに選ばれなかったのかとまずそこが残念、ということはこの作品ではとれないということで、重ね重ね残念。この先も書き続けてくれるだろうか、など余計な心配をしつつ、とにかく心をわしづかみにされた作品だ。
沖縄のお盆を過ごす小学生の語りは、突然沖縄戦の日本兵に変わる。次は生理や恋愛や男にムカつく女子高校生。そうして太平洋戦争から現代までの沖縄を、時空を超えながら14人の語り手がそれぞれのことばで語る。特攻、残留兵、性産業、ベトナム戦争、基地、強姦事件、貧困。全く違う語り口で綴られる話を読み進むと沖縄のおかれた状況が伝わってくる。著者は沖縄出身在住、21歳の大学生。若い作家が若者の現状をかれらのことばで書く、あるいは歴史を深く読み解き物語を紡ぐ、そういった作品はあっても、それを同時に行いしかも問題をより鮮明に突きつける、こんな作品はあっただろうか。
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