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【アキレス腱炎に対する治療戦略】第2部

こんにちは、だいじろう(@idoco_daijiro)です!


前回はアキレス腱炎に対する治療戦略の第1部として、「アキレス腱炎の基本的な病態」と「足部・足関節の機能評価」について解説していきました。


今回は「下腿三頭筋の過剰収縮を引き起こすメカニズム」と「呼吸機能に対する評価・アプローチ」について解説していきたいと思います。


下腿三頭筋の過剰収縮を引き起こすメカニズムを理解するためには呼吸機能が下肢の運動機能に及ぼす影響について理解する必要があります。



▶ 呼吸機能の運動器としての捉え方

呼吸機能について語る上で重要となるのは「横隔膜」です。


まずは横隔膜の解剖を確認していきます。

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一般的に筋は骨と骨を結ぶものですが、横隔膜は停止部が腱成分となっているところが特徴ですね。


とくに腰椎部の付着は右脚と左脚に分かれており、右脚は「第3腰椎椎体前面右側」に、左脚は「第2腰椎椎体前面左側(書籍によってはL2/3間の椎間板の前面左側)」に付着しています。


右脚付着部が下方まで中心腱が右側の方が分厚いこと、横隔膜下部の右側に肝臓が位置することなどから、右脚からの張力の方が大きいとされています。


この横隔膜の解剖を踏まえて、正常な呼吸時の運動学について復習していきます。

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筋の機能は起始に対して停止が近づいていく動きで表されるのが通例ですが、横隔膜ではこの筋の起始・停止の逆転が起こるのが特徴です。


そして、横隔膜は吸気時には「求心性収縮」を呈し、呼気時には「遠心性収縮」を呈します。


つまり常に収縮しているということ。


ですので、筋の機能不全には機能低下(弛緩)か機能亢進(過剰収縮)が含まれますが、横隔膜の場合の機能不全は機能亢進(過剰収縮)であることが考えられます。


では、横隔膜が過剰収縮すると身体にどういった影響があるのかを考えていきましょう。

※今回は矢状面上への影響に着目して解説していきます。

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前述したように右脚はL3椎体前面右側まで付着し、左脚はL2椎体前面左側まで付着します。


右脚・左脚ともに椎体前面に付着することから、L3までの椎体は前上方に引かれやすい環境にあります。


つまり、横隔膜の張力によって腰椎は前弯が増強しやすいということ。


また、横隔膜の機能不全によって胸郭の拡張・縮小の可動性も乏しくなります。


その環境下でも私たちの身体は呼吸機能を補償しようとするため、脊柱起立筋や広背筋の過剰収縮に伴う胸郭後傾によって代用するようになります。


この脊柱起立筋や広背筋の過剰収縮によってさらに「腰椎前弯の増強」が助長され、四肢にさまざまな悪影響を及ぼします。



▶ 呼吸機能が下肢に及ぼす影響

前述した通り、呼吸機能が低下することで「腰椎前弯の増強」が生じます。


それが四肢の運動機能に影響を及ぼすのですが、ここではとくに下肢への影響について解説していきます。


「腰椎前弯の増強」に伴って骨盤が前傾するため、大殿筋やハムストリングスが伸張位になります。


伸張位になることで筋の張力は保たれますが出力は低下します。


その結果、蹴り出し時に股関節伸展動作が出づらい環境となり、それを下腿三頭筋の過剰収縮によって代用しようとしてしまいます。


高齢者の方が下腿部の筋痙攣を起こしやすいのはこのメカニズムの一因だと考えます。


腰背部やハムストリングス、下腿三頭筋の過剰収縮により、脊柱や下肢の総合的な屈曲運動(脊柱屈曲、股関節屈曲、膝関節屈曲、足関節背屈)である「システムフレクション」が制限されてしまいます。


この下腿三頭筋の過剰収縮はアキレス腱に過度な伸張ストレスを繰り返すこととなり、アキレス腱炎を引き起こすきっかけとなります。


このメカニズムが中心の場合は「中央型」の、前回の記事で解説した後足部の丸アライメントもしくは動的不安定性も加えて起こっている場合は「内側型」や「外側型」の要因となります。


アキレス腱炎の場合、どうしても足部・足関節機能に着目しがちだと思います。


もちろん患部の問題に対して適切に対処することはとても大切なことですが、それだけでスムーズに症状が軽快しない場合はこの「呼吸機能」への対応を導入してみてください。


具体的な評価方法について解説していきます。



▶ 呼吸機能に対する評価

呼吸機能に対する評価の流れは以下の通りです。

・呼吸の確認(胸腔/腹腔、胸郭/骨盤)
・胸郭可動性テスト:肋骨弓
・胸郭可動性テスト:下部胸郭
・胸郭可動性テスト:肩甲骨


では、それぞれについて解説していきます。



ー呼吸の確認(胸腔/腹腔)

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膝を立てた状態で背臥位となり、大きく呼吸をしてもらいます。


ここではざっくりと胸腔と腹腔の動きだけをみていきます。


正常では、胸腔と腹腔は吸気時に膨らみ、呼気時に凹みます。


そのタイミングがズレている場合に以上と判断していきます。



ー呼吸の確認(胸郭/骨盤)

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膝を立てた背臥位となり、大きく呼吸をしてもらいます。


呼吸時の胸郭と骨盤の動きを評価していきます。


横隔膜が正常に機能している状態では胸郭の360°拡張が生じます。


逆に横隔膜が正常に機能していない場合は、胸郭の動きが正常に生じません。


それを代償するために胸郭後傾、もしくは骨盤前傾が生じます。


ここでは、胸郭・骨盤の代償運動について評価していきましょう。


ここまでが無料で読める内容となります。
以下では「【アキレス腱炎に対する治療戦略】第2部」について詳しく解説していきます。
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