#004アセスメント
みなさんは、アセスメントという言葉をご存知ですか?
相談支援業務の中でアセスメントは基本であり、しかもかなり重要です。
今回は、そんなアセスメントについて解説したいと思います。
アセスメントについて
アセスメントとは
アセスメントとは、「評価・査定」という意味で、物事や人を客観的に評価する手法やプロセスをさします。
土地開発などが環境に及ぼす影響を分析する「環境アセスメント」や、
医療や看護の分野で、看護師が患者さんの問題について把握・判断する「看護アセスメント」など、
幅広い分野でアセスメントが行われています。
福祉の分野でのアセスメントとは、
利用者の生活環境や困りごとについて情報収集して分析することだと言えます。
相談支援でのアセスメント
相談支援では、初めて関わる方にアセスメントを行います。
具体的には、面談などでの聞き取りによって情報を得て、総合的な支援の計画を立てていきます。
障がいの程度が重く、ご本人と言葉でのやりとりができない場合には、
保護者の方など関係者からの聞き取りや、ご本人と直接お会いした時に得られた情報(印象や行動の様子)をまとめていきます。
この時、事前に他機関からの情報がある場合には、聞き取りによって得られた情報と組み合わせていきます。
そうして、複合的な視点で情報をまとめて、その人の全体像を把握していきます。
ただし、一度お会いしただけではわからないことがたくさんあります。
その方と長く関わっていく中で見えてくるもの、話しを重ねる中で出てくる思いがあり、
さらには時間が経過することで情報が変化することもあります。
大切なのは、一度得た情報ですべてを判断するのではなく、
アセスメントを繰り返す中で、常に情報をアップデートしていくことです。
その人の強みに目を向ける
また、その方の持つ強みに目を向けることも大切です。
一般に、障がいのある方に対しては出来ない部分に注目することが多くなりがちです。
なぜなら、そうした弱みに対してどう支援していくかという目標が立てやすいからです。
もちろん、支援の目標を立てるためには、その方の苦手なこと、できないことを把握することが必要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
本人の得意なことや強みを見つけていくことがアセスメントの重要な役割です。
そうすることで、不必要なサービスを導入して本人の自助力(自分自身で解決する能力)を低下させてしまうことを防ぎ、
本人の持つ能力がうまく発揮できる環境を整えることで、本人が望む生活に近づくことが可能になります。
例えば、右半身にまひがある方でも、
「ボタンがない服なら着られる」
「おふろに入って背中以外の部分は自分で洗える」といった強みがわかると、
一部介助のサービスだけで事足りることがわかります。
そのほかにも、
「外出時には付き添ってくれる家族がいる」
「何かあった時に近所のおばちゃんに連絡すれば来てくれる」といった環境要因の強みもあります。
そういった場合には、介護ヘルパーさんがつきっきりで介護や介助をする必要はありません。
足りない部分だけを補えば、あとはその人らしい生活を行うことが出来ます。
こういったように、あらゆることを福祉サービスでまかなうのではなく、
その人自身が持つ能力や環境の強みをいかして、福祉サービスの利用を考えていくことが大切であり、そこが相談支援業務の醍醐味の一つでもあります。
何を聞くのか、聞かないのか
ここで、私の失敗談を1つ。
身体障害があり、車椅子に乗っている方とお会いしてアセスメントを行っていたときのこと。
私は、「お部屋の中では、1人で移動することは可能ですか?」と質問しました。
その方は、それを聞いてキョトンとした表情をされた後、
「いえ、私が乗っているのは介助用の車椅子で、自分1人で移動することはできません」とおっしゃいました。
よく見ると、その方が乗っている車椅子は、
私が知っているものよりタイヤが小さくて、
自身で車椅子を動かすためのリムがついていません。
よく観察して状況を把握していれば、ご自身で移動できないことは明らかでした。
しかし、知識がなくて形式的な質問をしていた私は全く気がつかず、わざわざ不躾なことを聞いてしまっていたのです。
すぐに謝りましたが、なんとなく気まずい雰囲気になりました。
このエピソードから分かるように、
アセスメントを行うときにどのような質問をするかということは非常に大切です。
私たちはアセスメントシートと呼ばれる、質問事項が書かれたチェック表を使用することが多いです。
そうすることで情報を聞き漏らしたり、重複して聞いてしまったりすることを防ぐことができます。
しかし、アセスメントシートの内容にとらわれると、
その場の様子や会話の流れで判断できることを見落としてしまいます。
不要な質問で時間を費やすことは相手の負担になりますし、
「〜できますか?」という質問を何度も繰り返して確認することは、
その方のプライドを傷つける恐れがあります。
情報を得ることも大切ですが、
相手への配慮を忘れずに、答えやすい雰囲気作りをしていくことも大切です。
アセスメントで信頼関係を築いていく
このように、アセスメントでの質問の仕方や関わり方で、
相手に信頼してもらえるかどうかが決まります。
お会いした時の情報から評価をしているのは、私たちだけではありません。
障がいのある方やそのご家族も私たちのことを
「この人を信頼していいのか」
「頼りになる存在なのか」
と評価しているのです。
ただ形式的に質問をして、
ただ相手の言うままに計画を立てて、
ただ福祉サービスをあてがうような相談支援専門員は、
ただの便利屋のようになってしまいます。
そこに信頼関係は生まれません。
アセスメントにおいもても、相手の立場に立ってものを考え、
本当に必要なことは何かを常に考え続ける姿勢が大切だと感じています。
そうすることでお互いに尊重し、信頼し合える関係が生まれ、
より良い支援につながっていきます。
アセスメントの奥深さ
いかがだったでしょうか。
今回はアセスメントについてまとめてみました。
その他にも、
その人を取り巻く環境や社会資源についてのアセスメントや、
支援を継続する上でのアセスメントなど、
ここには書ききれない内容がたくさんあります。
私自身まだまだ勉強不足、経験不足を痛感する日々です。
初心者の私はまだ、既存のアセスメントシートを使って質問しています。
しかし、工夫を重ねることによって、いつかは自分なりのアセスメント方法を確立していきたいと思っています。
アセスメントは奥が深く、追求し続けるべきものだと感じています。
これからも、時間をかけて試行錯誤しながらアセスメントを学んでいきたいと思います。