病弱だった私を唯一心配してくれた〇〇に恋しました
私はいま救急車のなかだ。
この車にお世話になったのもこれで3度目かな。
また牢獄のように静かな病床に戻るのかと溜め息まじりの嘆きを胸の中に閉じ込めて病院へ向かう
「あなたは何でこうも体が弱いのかしらね」
「もう少し体が強くならないとこれから大変だぞ」
「何とか言いなさいよ!」
そんなことを優しい父親でさえも言い始めた。
私の体だけど私にはどうしようもないことを言われてもストレスがかかるだけだ。
『私にどうしろっていうのっ!』
と言い返す気力さえでない自分に嫌気がさしながらなんとかその場を耐える
しかしそんな中でも1人だけ、私のことをいつも心配してくれる変わり者はいるのだ
私の体をいつも気遣ってくれるし、入院となれば毎回病床まで来てくれる。
そんな彼が来ることだけが私の唯一の楽しみである。
“ ガラガラガラ “
ドアを開ける音を聞く度に彼が来たんじゃないかと期待するが、大抵は血圧等を確認する看護師さんである
そしてついにっっ!!
ガラガラッ
?:ごめん。遅れた
さくら:〇〇遅いよっ
〇:ごめんって! 部屋で寝てたら連絡が入ってさ
さくら:でも....ありがと
〇:おう。当たり前だ
その軽そうに聞こえる〇〇のセリフがいまはとてつもなく重く感じる
〇:あれ?思ってたより元気なさそうだな
さくら:入院してるんだし当たり前でしょ
〇:だっていつもさくらは慣れてるじゃん?
さくら:そうだけどさ...親からも「体が弱い〜」とか言われちゃって滅入っちゃうんだよね
〇:そうか....別に体が弱いってのはどうしようもないしな。鍛えたら治るわけでもないし
さくら:(やっぱり〇〇は私の理解者だなぁ)
〇:なに?なんか泣きそうになってない?笑
さくら:べ、べつに泣きそうじゃないし
〇:へ〜さくらってツンデレなんだねぇ笑
さくら:そんなことないしっ
〇:ツンツンなさくらは面白いよ笑
さくら:むぅ....そんなにいじってぇ
〇:こんな面白い人をいじらないわけないでしょ
さくら:もうっ!
〇:とりあえずさくが元気になったらイベントとか行こうよ
さくら:いいの?!
〇:もちろん!だってこんな健康な人が来ても気分悪くなりそうなとこにずっといるんだもん
〇:気晴らしいくらいしないとね
さくら:へへ。頑張って治すねっ
〇:頑張れよ〜
この日も〇〇と話していじられたけどずーっと口角が上がったままだった
さくら:やっぱさく......〇〇がいないとダメかも
改めて〇〇の存在の大きさに気付かされるさくらであった
ー次の日ー
〇:さくら〜
さくら:やっときた!
〇:やっとって....学校終わって急いで家に戻ってすぐ来たんだけど
さくら:さくはずっと待ってたのっ!
〇:寂しかった?笑
さくら:い、いわないしっ
〇:かわいげがないなぁ
さくら:ふんっ...
.〇:せっかくさくらが喜ぶかな〜と思ってアレ持ってきたのにな〜
さくら:あれ....?
〇:さくらが入院したときは毎回食べたがる物だよ
さくら:イカの塩辛!
〇:お〜せいかい!
さくら:やった!
〇:肝が入ってないやつ見つけるの結構大変なんだぞ?
さくら:だってこっちの方が美味しいんだも〜ん
さくら:〇〇ありがとっ
〇:ついさっきまでムスッてしてた人とは思えんくらいな笑顔だな..笑
さくら:さくムスッとしてないよ?
〇:もので釣られるタイプだもんな
さくら:そんなことないしっ
〇:へ〜
さくら:なっ....信じてない
〇:さくらの言うことなんて信じるわけないでしょ
さくら:私オオカミ少女じゃないんだけど?
〇:嘘くささなら負けててないから大丈夫!
さくら:何が大丈夫なのよ!
こうして本来なら良くはないのだが声を出しすぎてしまうほどに心も体も元気になった
そしてまたある日は
〇:さくら生きてるか〜
さくら:なにさ死んでほしいわけ?
〇:そんなわけないじゃん!さくらには生きてもらわんと俺の生きがいがなくなるわ!
さくら:そうなの?(さくと一緒だ)
〇:当たり前だろ?さくらがいなかったらいじる人がいなくなるからね笑
さくら:なっ....く、くそぉ..!
〇:なんだよそんな怒って
さくら:女心をもてあそぶ〇〇が悪いの!
〇:勝手に遊ばれてただけだろ〜
さくら:ち、ちがうもんっ
〇:ほんとこういう系はなーんにも認めないよね
さくら:だってさく悪くないもん
〇:はいはい
〇:ところで数値はどうなの?
さくら:正常だって。明日には帰れるんだって!
〇:そっか。よかったな
さくら:あれ?反応薄くない?
〇:だって今回退院するのだいぶ早かったじゃん
さくら:それはだって......
〇:だって?
さくら:〇〇と遊びに行くの楽しみだったんだもん ボソッ
〇:なんかいった?
さくら:フルフル
さくら:いってないよ~
〇:あっそ
〇:明日退院なら遊びに行くのは明後日だな
さくら:っ!! 聞こえてたんじゃん!
〇:なんの話?
さくら:さっきの話!
〇:なんのことか分からないな〜
そういう〇〇の口角は少しあがっているように感じた
それから無事退院し
「今度はこんなことにならないようにしなさいよっ!」
「色んな人に迷惑かけるんだからね」
「〇〇君にも感謝しなさい」
親からは何ひとつ私をいたわってくれる言葉はなかった。
私よりも他人の目を重視されることに慣れたとはいえ、やはり傷つくものがある。
「〇〇君にも感謝しなさい」それは当たり前だよ。
でも、〇〇以外は誰も私のことなんて気にしてない。
他人の目を気にしてるみたいだけど、私のことをみてる人なんていない
そういう暗い思いがさくらに一気に責めてきていた
そして〇〇との約束の通り遊びに行く日になり
さくら:お待たせ
〇:おう。だいぶ待った
さくら:そこは「待ってないよ」でしょ!
〇:だって30分も遅刻したのは誰ですか?
さくら:す、すいません....
〇:全然いいよ..笑
〇:てかさ、顔色悪くない?
さくら:そう?
〇:なんかすげー暗いよ
さくら:うん.....そうかも
思い詰めているがゆえ、顔色も悪くなってるのかと思い頑張って口角を上げる
〇:お〜無理して笑ってんな
さくら:な、なんでわかるの....
〇:そんなことくらい分かるわ!
〇:さくらのことは何でも知ってるんだから
さくら:そ、そっか...
“さくらのことは何でも知ってる”
久しぶりに他人ではなく私をみてくれてるという言葉に嬉しくて勝手に口角が上がっていく
〇:あれ?なんか不自然じゃなくなったな
さくら:そう?
〇:もしかしてみられてることに興奮してんの?笑
さくら:そんなわけないでしょ!もう嫌いっ
〇:俺がいなかったら独りなクセに..笑
さくら:あ〜痛いとこつくなぁ!
〇:さくだからいいでしょ
さくら:ほんと私のこと人間だって知ってる?
〇:知ってるよ。ギリギリ人間だろ?笑
さくら:こらーーー!!!
それからアパレルショップやモールのなかのフードコートで食事を楽しみ、
あっという間に夕暮れがやってきた
さくら:はぁぁ.....
〇:なんだよさっきまであんなに楽しそうだったのに
さくら:だってお家に帰ったらまたお母さんから色々いわれるんだもん
〇:さくらの親は厳しいからな
さくら:ちがう!他人のことばっかりみて私のことをみてないだけだよ
〇:そうか
(こんな感情的なさくら初めてみたな)
今までの溜まりきった不満が乗った言葉は確実に〇〇に届いていた
〇:じゃあさくらのことをみてるのは俺だけか
さくら:え?
〇:だから、さくらのことちゃんとみてるのは俺だけだねって
さくら:〇〇は私のことみてくれるの?
〇:当たり前だろ。そうじゃなきゃ毎日さくらのために病院なんて行かんわ
さくら:そっか....
〇:だからさ、俺....さくらに言いたいことがある
さくら: ….なに?
〇:俺は.....さくらのことが好き
〇:だから....付き合ってください!
さくら: …..
さくら: …いいの?私なんかで
〇:さくらがいいの!
さくら:でも私....体弱いし、いつ倒れるか分からないし....
〇:そんなこと今言われても知ってるっつ〜の
さくら:そ、そうだけどさ
〇:今までのさくらをぜーんぶみて決めたことなの
〇:だから付き合ってほしい
さくら:うぅ..💦
さくら:こっちこそお願いします
〇:よかったぁ。てか泣いてんじゃん..笑
さくら:だって告白される時が来るなんて思ってなかったんだもん
〇:はぁ? 俺はいつ誰かから取られるかわかんなくてビクビクしてたんだけど
さくら:なにいってんの!私がそんな告白なんてされるわけないじゃん
〇:セリフと顔が合ってねぇんだよ!
こうして2人は付き合い、いつの間にか「彼氏」から『旦那』へと呼び方が変わっていた
そして、今まで “ 独り “ であったさくらは〇〇の友達と話していくうちに自然と友好関係も広がっていた
それに何より、〇〇と付き合い始めた以降1度も倒れることはなかった
〇:最近のさくらほんと元気だよな
さくら:だって〇〇と一緒にいれるんだもん!
〇:めっちゃ嬉しいこといってくれるじゃん
さくら:ほんとに楽しいもん!
〇:あんな病弱なやつが1年間熱すら出さないとは思わなかったわ
さくら:やっぱり病って気からなのかな?
〇:そうかもな笑
それからさくらは特に思い詰めることも無く
多幸感溢れる暮らしを送った
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