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崖っぷちのふたりを拾ったらいつの間にかサクセスストーリーをみせてくれました

10月31日



定時は17時なのに会社を出るころには20時...。





今日だけは早く家に帰りたかったのに……




なぜ『今日だけは』なのか。
そんなのもちろんハロウィンだからである。


ただでさえ、人でぼったがえしているのに、イベントがある日はとりわけ人が集まる。


話しかけられないように常に俯いた状態で最寄り駅を目指す






案の定人は多かった。



それだけの感想を残しICカードを取り出そうとすると、周りの若い人とは違った雰囲気の2人の女の子が〇〇の目にとまった


バイトのユニフォームであろう服を着ている子と、薄汚れた制服を着ている子が1人。




あれは明らかに仮装……ではなく、何か事情がある人なのであろうと思った。








〇:君たち家は?こんなとこにいたら悪い大人にイタズラされちゃうよ?


?:家なんてない…けど大丈夫。こんな汚い茉央たちを襲う人なんておらん


?2:そうだよ……私たちなんて誰も求めてない…


茉央:桜姉ちゃん……


〇:そうか……でも、家がない子を見捨てるわけにはいかないなぁ


桜:え?


〇:君たちが何があってここにいるのか知らないけど、これでも僕、大人だし見て見ぬふりはできないんだ



〇:もし良かったら僕の家にこない?


桜:いいんですか…


茉央:でもまお達のこと襲うんじゃ……


〇:歳下を性的な目ではみれないから大丈夫だよ笑


茉央:でも……


桜:茉央、、、こんな機会ないと思うの。不安かもしれないけどこれ以上2人でやっていくには無理があると思うの


桜:だから……行こ?何かあったらお姉ちゃんが守ってあげるから


茉央:お姉ちゃんがいうなら…


桜:お願いします。お家に……行かせてください


〇:わかった。じゃあ行こうか






それから30分電車に揺られながら自己紹介をし、何となく現状がわかってきた





桜ちゃんは高校3年生で飲食店でバイトをし、わずからながらの給与で茉央ちゃんと生活をしている。

一方、茉央ちゃんは中学3年生で桜ちゃんのことをすごく慕っている










〇:ただのアパートでごめんね


桜:なにをいってるんですか!すっごく嬉しいです


茉央:風が当たらないの何日ぶりやろ....



〇:とりあえず2人ともお風呂入ってないんでしょ?


〇:今から入る?


桜:入りたいですけど服が....


〇:あ、そういえばそうか笑


〇:じゃあ今から買いに行くかぁ


茉央:いいの?


〇:だってこのまま同じ服だと嫌でしょ?


茉央:うん


〇:じゃあ買いに行こっ






こうして着替えを何セットか買い、また家へ戻る





〇:よし、じゃあお風呂入ってきな〜


茉央:桜姉ちゃん!一緒に入ろ!


桜:ええ....ひとりで入りなよぉ


茉央:いいじゃん いいじゃん!









こうして半強制的に2人で入っていた







そういえばあの子たち.....どこから来たんだろ?





幸いなことに〇〇はこれまでホームレスといった状態になったことがなかったため、彼女たちがどういう経緯でここに至るのか全然想像がつかなかった








それから2人は風呂を終え、リビングへやってきた




桜:〇〇さんお風呂ありがとうございました


〇:いいよ〜そんなことより2人とも苦手な食べ物とかある?


茉央:まおはないです!


桜:私も特にないです


〇:よし、それなら作りやすいや笑


桜:ご飯作ってくれるんですか?


〇:そのつもりだけど....いらない?


桜:いりますっ!





すごく輝いた笑顔をこちらに浴びさせてくる桜ちゃん




茉央:2日ぶりのご飯やぁ!


〇:え、2日ぶり!?


桜:私の賄いが夜ご飯なんでバイトがない日はご飯無しなんです


〇:えっ...賄いってことはそもそも1日1食しか食ってなかったってこと?


桜:そういうことになりますね


〇:ひぇぇ....そりゃあこんなに細くなるわけだ





そう。桜ちゃんも茉央ちゃんも心配になるくらいに体が細いのだ






そうしてほどなくして料理ができ、2人に振る舞う





茉央:ん〜!最高やぁ


桜:うん うん!こんなに美味しいご飯はじめてっ




傍から見たら今の発言、相当ぼくが美味しいものを作ったと思うだろう。

ただ、彼女らが喜んで食べてるのは白米だ





〇:そんな米だけ食べてないでおかずも食べなよ笑


茉央:だってお米美味しすぎるんやもん


桜:賄いで出てくるご飯より美味しい


〇:な、なんていうか....とりあえずよかったよ
(炊くだけの物を褒められても何とも言えん







こうして長く味わいながら2人は食事を終えた







茉央:美味しかったぁ


桜:久しぶりにお腹いっぱいご飯食べれたね


茉央:うん。〇〇さんに感謝や


桜:そうだね。でも、いつ出ていけっていわれるか....


茉央:それはたしかに不安やけど...





洗い物をしながらその会話を聞いた〇〇は



〇:誰が出ていけって言うって?


桜:〇〇さん聞いてたんですか...


〇:うん。なんか聞こえちゃった笑


〇:てかさ、出会ってまだ何時間かくらいしか経ってなくて信憑性は皆無だろうけど、、、



『2人が出ていきたいって言わない限りはいつまでもここにいていいよ』



茉央:〇〇さんどれだけ良い人なん...


桜:ありがとうございます。


〇:たださ、一緒にいる上で2人に聞きたいことがあるんだけどいいかな?もちろん喋りたくないことは黙秘でいいんだけど


桜:なんですか?


〇:2人ってどこから来たの?


茉央:あぁ....




すごく悲しそうな表情を浮かべながらこっちをみる2人




茉央:まおたちは....養護施設におった


〇:え、養護施設にいたのになんで出てきちゃったの?
(養護施設ならここまで大変な思いはしなくて済むはずなのに


桜:半年前から茉央に対するいじめが起きるようになったんです


桜:そして、私は守らないといけないと思って庇ってたら私までいじめの対象になっちゃって....どうしようもなくて逃げてきたんです


〇:そんなことが.....




宛もなく飛び出すくらいだ、そうとうな覚悟があったのだろうと感じたと同時に、この2人はかなり心が強いのだろうとも思った





〇:でも、失礼だけど2人って姉妹にしては顔似てないよね


桜:それは....


茉央:まおたちは本当の姉妹やないからや


〇:やっぱりそうか


茉央:まおが施設に来たころ、ひとりぼっちで過ごしてたの


茉央:そのときにお姉ちゃんが茉央に寄り添ってくれて『お姉ちゃんって呼んでいいよ』って言われてからはずーっとお姉ちゃんって呼んでる


〇:桜ちゃんはすごく頼れる人なんだね


茉央:うん。でも....茉央のせいでお姉ちゃんの人生までハチャメチャにしちゃってて....


桜:そんなことない!私がやりたくてやってるんだから


茉央:うん....


〇:2人はすごいね。こんだけ大変なときでもお互いのこと思ってるんだ


桜:だって茉央は私の妹だから



茉央:桜姉ちゃんだもん。気にするよ



〇:いい関係性だね。ふたりは


桜茉:へへへ.....





顔はたしかに似てない。
ただ、心の中は本当の姉妹よりも似ているのだろう





〇:わかった。じゃあ過去のことはもう聞かないから


茉央:うん


桜:〇〇さん....私からもひとつ聞きたいんですけど...


〇:ん?


桜:居候代っていくらですか?


〇:はい?


桜:だから居候代....


〇:そんなのいらないよ。高校生からお金もらうほど困ってないしね笑


桜:でも....


〇:今までは自分のために使えるお金は少なかっただろうけど、これからは自分で稼いだお金は自分の好きなように使いな?


桜:いいんですか?


〇:もちろんだよ。だってバイト頑張って貰えたお金でしょ?好きなように使わなきゃ


桜:ありがとうございます!







それからスイーツを出せば……



茉央:あまぁ〜い


〇:アイスじゃなくて茉央ちゃんが溶けそうなんだけど笑







ベットに寝かせると……



桜:柔らかいとこで寝るのってこんなに気持ち良いんだぁ


茉央:ほんとそうだね!


〇:そ、そんなに高いベットじゃないから褒めないで...笑






僕にとっての当たり前であったり、普通な暮らしは2人にとっては贅沢な生活だった







ー次の日ー


桜:ふぁぁ.....おはようございます


〇:おはよう桜ちゃん


桜:〇〇さん何してるんですか?


〇:ん〜?朝ごはんだけど?食べるでしょ?


桜:えぇぇ!!いいんですか!?


〇:当たり前じゃん。何に驚いてんの...笑


桜:いや、朝ごはんなんて贅沢だから....


〇:これからも贅沢って思うのも大切かもしれないけど、ウチでは当たり前に出てくるものって感覚を目指そうかな笑


桜:〇〇さん……


〇:なに?


桜:なんでそんなに優しいんですか?


〇:え?俺が優しい?


桜:だって、住まわせても何の得もないような人を住まわせて、夜は襲われるんだろうなって思ってたけど普通に寝かせてくれたし....優しいですよ


〇:え〜だって困ってる人がいたら助けるってのは義務教育で習ったでしょ?それを今も忘れてないだけだよ


〇:それに昨日会った時も言ったけど、歳下を襲おうなんて最初から考えてないしね


桜:すごいです....私が逆の立場だったらたぶんこんなこと出来ない…


〇:まぁメリット・デメリットで考えると僕はかなりのアホなんだろうけどね笑


桜:〇〇さん……絶対この恩は将来返させてもらいます!


〇:おう。ランチにでも連れてってくれ〜


桜:え、それでいいんですか?


〇:うん。別に高いものを渡すことが恩を返すことじゃないと思うしね


桜:(この人のことを聖人っていうんだろうなぁ





桜には逆に怖さを感じるほどに優しい〇〇に段々と心がほぐされていた





それから茉央ちゃんが起きてきて……



茉央:朝ごはんや!夜ご飯も食べて朝ごはんも食べたら悪いことしてるみたい


桜:だよね!〇〇さんに感謝しないとっ


茉央:当たり前や!こんなの普通じゃありえんもん


〇:ふふふ。2人とも驚きたくなるくらい良い子だねほんとに


茉央:それ〇〇さんがいいます?笑


〇:いうよ?だって茉央ちゃんたち良い子じゃん


茉央:へへ....〇〇さんみたいな大人になりたいです


〇:やめときな。苦労するよ…笑


茉央:そうなの?


〇:趣味が貯金なのとかだいぶヤバいでしょ?笑


桜:それはヤバいんじゃなくて堅実っていうんじゃ…


〇:ポジティブにとらえるとそうなるね笑


〇:てか、もうすぐ8時じゃん。仕事行かなきゃ


桜:あ、桜も行かないと....まお準備終わってる?


茉央:おわってる!


〇:よし、じゃあ2人とも出ようか


桜茉:はい!






〇:あ、そういえば桜ちゃんの方が先に帰ってくるだろうから鍵渡しとくね


桜:はい!


〇:失くさないでね?笑


桜:もちろんです!


〇:じゃあまた夕方ね


桜茉:はい!







こうして1日が始まった。






そんな日々を1年続けていると桜ちゃんは社会人になり、茉央ちゃんは高校生になった




桜:も〜!あそこの取引先の人ムッかつくっ!


〇:ははは。あるあるだね


桜:会社にも〇〇さんみたいに優しくしてくれる人いないしっ


〇:え〜女の子だから愛嬌ふりまけば勝手に男はついてくると思うよ?笑


桜:でも愛嬌って....


〇:普段俺にみせる『ニコっ』って笑顔を会社でしとけば絶対周りに人集まるよ


桜:じゃあ明日からやってみます!


〇:がんばれ〜社会人!






茉央:高校の数学ってなんでこんなに難しいの!?


〇:ありゃ、こっちも壁にぶつかってんのね笑


茉央:中学校の数学と違いすぎるんやもん


〇:大丈夫 大丈夫!算数から数学に変わるよりかは違いすぎないから


茉央:そこと比べたらそうやけど……







こうして2人が悩んでいる時は話して困っていることに耳を傾け、絶対に見捨てないようにしていた








それから9年後



桜:〇〇っ!


茉央:こっちきて!


〇:お、どうした桜と茉央





最近は忙しく3人で一緒にいることも少なくなっていた




茉央:今日何の日か覚えてる?



〇:今日?あ〜ハロウィンね


桜:も〜そっちじゃない!


〇:わかってるよ。2人と初めて会った日でしょ?


茉央:そう!


桜:あれからもう10年が経ったの!


〇:もうそんなに経つっけ?笑




茉央を大学に行かせるためにこれまで以上に働いていたからか時の流れが恐ろしくはやい






桜:それでね、私と茉央であることを決めたの!


〇:ほうほう。あることって?


茉央:それはね....


桜:私たち!


桜茉: “ 起業します! “


〇:ほ、ほぉ....どんな会社にするの?


桜:私たちが〇〇に会う前みたいに困ってる子供っていっぱいいると思うの


〇:うん


桜:それで、その子たちを助けるためにカウンセリングとかをして助ける会社にするっ


〇:めっちゃいいじゃん。そういうのって実体験が大事になる仕事でもあるし、よく思いついたな


茉央:へへ。〇〇にいっぱい恩返ししても〇〇嫌がるから他の人に恩を送ることにしたの!


〇:すごいな。俺がリストラされたら就職させてくれ〜


桜:いいよ〜!





それから2人は会社を立ち上げ、実体験をもとにした本なども出版し、見事に会社経営に成功していた





崖っぷちの女の子を2人拾って、まさかサクセスストーリーを間近でみれるとは思いもしなかった





あの日、定時の17時で帰っていたら…

あのとき2人に話しかけずに帰っていたら....



考えれば考えるほど、奇跡だと気付かされる。






こんな人生………





                            “ 最高だ “



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