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忘年会に行こうとしたら推しメンがそれを阻止しようとしてるんですが


定時の17時手前のころ……



部長:〇〇、お前今日の忘年会はもちろん参加するんだよな?

〇:はい。行かせていただきますよ

部長:そうか そうか。君が来てくれるのなら3次会までは楽しめそうだよ

〇:はは。また部長そんなに長く呑むつもりなんですか?

部長:当たり前だろぉ?普段は23時が門限だが忘年会だというと門限が無くなるからな

〇:結局またそれで酔い潰れて門限が早くなりますよ

部長:そ、そういえばそういうこともあったな…




そう。去年の忘年会で部長は酔い潰れ〇〇たちが部長の家まで送ることとなりそれに怒った部長の奥さんが門限を早くしたのだ




部長:とりあえず今回は記憶が残るうちに飲むのを止めるよ

〇:それはシラフだから言えるんですよ笑

部長:くっ…お前は良いとこつくなぁ

〇:部長はビジネス以外は中身が簡単すぎるんですよ

部長:まぁビジネスではちゃんと上手くできてるならそれでいいか

〇:社会人としては1番羨ましいですよ

部長:うむうむ。苦しゅうない

〇: ……。

部長:お、おい!ノリにはのってくれ!

〇:定時になったので帰ります

部長:扱いが雑だなぁ






そうして忘年会までは時間があるので一旦帰路にたった




〇:忘年会なんて2次会以降は帰るタイミングがなくなるから嫌なんだよなぁ…

?:じゃあ行かなきゃいいんじゃない?

〇:えっ?あなただれ…………えぇぇぇえ!?!?

?:ひどいなぁ…卒業したとはいえ私のこと推しメンにしてたのにぃ!

〇:あ、い、いや、、、まさかこんなとこにあ、、えっ……齋藤飛鳥さんがいるなんて

飛鳥:も〜驚かせようと思ったら1言目が『だれ』とはど〜いうことっ!?


〇:ま、まことに申し訳ございませんでした

飛鳥:そんな五体投地みたいな土下座はいいから早く〇〇の家に連れてけっ

〇:え?僕の家ですか?

飛鳥:そう!〇〇の家に行くの!

〇:い、いいですけど齋藤さんに見せられるような家じゃなくてですね……

飛鳥:呼び方も前と違って「飛鳥さん」から『齋藤さん』になってるし自分のこと卑下するし前の〇〇はどこにいったわけ?

〇:い、いやその……あの頃は大学生で今は社会人ってわけでもありますし……

飛鳥:ほぉほぉ…じゃあ私が前の〇〇に戻してあげる


〇:そ、それは有難いんですけどね……今日は忘年会が入ってましてですね……

飛鳥:さっき忘年会行きたくないって言ってたじゃん!

〇:いや言いましたけど忘年会に行くことなんて”社会人じゃ当然のルールです”

飛鳥:それは『うっせぇわ』っていわせる流れ?

〇:よくお分かりで……

飛鳥:うっせぇわって言わせるってことは忘年会行かなくていいね?

〇:いや現実じゃ行かなきゃ同期とか上司の目が……

飛鳥:あ〜もううるさいなぁ!今日はとにかく〇〇の家に行くの!わかった?

〇:わ、わかりました…
(よく考えたら”あの”齋藤飛鳥さんからいわれてるんだもんなぁ…許してくれるか





そう思って下手すると犬小屋だと勘違いされるのではないかと思われる〇〇の部屋へと案内した




飛鳥:へ〜〇〇はこんな家に住んでるんだね


〇:狭くてすいません…

飛鳥:あ、そういう意味で言ったんじゃないの!

〇:え?

飛鳥:〇〇ほどのオタクの部屋が思ってたよりも清潔な感じがするの!

〇:まぁ…齋藤さんが卒業してからは僕もオタ卒しましたから……

飛鳥:え?〇〇っていまはもうオタクじゃないの?

〇:はい。飛k……齋藤さんがいなくなってから新しい推しが作れなくて……

飛鳥:もういい加減齋藤さんって呼ぶのやめてくれない?前は『飛鳥さん』とか『飛鳥ちゃん』とか呼んでくれてたじゃん!

飛鳥:〇〇は社会人になったからって変わらないと思ってた!なのに…なんでこうも変わっちゃったわけ?今の〇〇はつまんないっ!

〇:そ、そんなこと言わなくてもいいじゃないですか……うぅ……

飛鳥:あ、ごっ…ごめん……言いすぎた

〇:いや、いいですよ。飛鳥さんが言ってることは正しいですし

飛鳥:あ、やっと名前で呼んでくれた


〇:なんか飛鳥さんって呼ぶと懐かしい感じがしてきました

飛鳥:最後のミーグリにも来てくれなかったから2年は話してないよね

〇:あれはたまたま内定先の大事な会があったんでしょうがなかったんですって!

飛鳥:そうか…で、内定した2年後がこうなってると……

〇:悲しくなるんでみなまで言わないでください

飛鳥:ダメだったか…笑

飛鳥:てか、もうこんな時間だしお腹すいたなぁ

〇:ですね…忘年会の予定だったんで昼もおにぎり一個しかない食べてないです……

飛鳥:ふ〜ん。じゃあその空っぽのお腹に飛鳥ちゃんの料理を食べさせてあげよっか

〇:え?いいんですか!?

飛鳥〇〇が食べたいならいいよ?

〇:食べたいです!ぜひ!

飛鳥:じゃあしょうがない!作りますかぁ




そういって飛鳥さんは持ってきていた荷物と共にキッチンへ向かい料理を始めてた




何もせず待っているのもなんだか落ち着かないので飛鳥さんと一緒にキッチンへ行き…



〇:1個どうしても気になることがあるんで聞いてもいいですか?

飛鳥:なに?

〇:なんで飛鳥さんともあろう方があんなオフィスビルの前にいたんです?

飛鳥:はぁ?そんなの〇〇を待つために決まってんでしょ

〇:え?

飛鳥:ずっと私のこと推してくれてたし歳も近いから今何してるか気になっちゃってさ、それで会うために〇〇の勤務してる会社を調べたってわけ

飛鳥:それで〇〇の勤務が終わる時間にあそこにいたの

〇:ど、どこをどう調べれば僕の勤務先なんかがわかるんですか……

飛鳥:まぁそんなこと気にしない 気にしない!


〇:(めっちゃ気になるんですけど…

飛鳥:それで、会ったときには『飛鳥さんだー!』ってなるのを期待してたのよ

〇:はい……

飛鳥:そしたらあのありさまで流石に怒りかけたよね

〇:だってあんなところにいるわけないと思うじゃないですか……

飛鳥:それもそうか。

飛鳥:だけどね、それよりあれだけユーモアたっぷりで独創性があった〇〇が完全に大人の敷いたレールの上に乗ってる方が悔しかったかなぁ

〇:僕も会社に入ったときは『この会社の今までのやり方全部変えてやる!』って勢いで入ったんですけどね…社会の荒波って怖いです

飛鳥:そっか…。会社って大変だね

〇:飛鳥さんの方が大変じゃないんですか?

飛鳥:ん〜大変だし毎日忙しくさせてもらってるけど好きなことさせてもらってるからそんなに多忙って感じじゃないよ

〇:そうなんですね…僕も好きな仕事したかったなぁ

飛鳥:〇〇ってどんな仕事したかったの?

〇:僕は企画ですね

飛鳥:で、配属された先が営業部だと…

〇:そうなんです……退職代行使って辞めなかっただけ褒めて欲しいです

飛鳥:希望するとこに配属されるとは限らないって良く聞くよね。

飛鳥:私の知ってる〇〇は退職代行なんて眼中にないような人だから褒めることはしないかな〜

〇:うっ…飛鳥さんやっぱり詰めたい……

飛鳥:私は平常運転してるだけだよ?

〇:それは知ってます。笑





それから飛鳥さんはちゃくちゃくと料理を進め……



飛鳥:できたぁ!うにボナーラ!

〇:うわっ…カルボナーラにうにだなんて贅沢すぎて食べれない……

飛鳥:まぁまぁ…そんなことは気にしないで食べなよ。推しが作った料理だよ?

〇:もちろん食べていただきます!




あむっ…あむっ……



〇:んっ!!これすっごい美味しいです!

飛鳥:よかったぁ…これね、お酒にも合うんだよ

〇:でもウチにはお酒置いてなくて……

飛鳥:それがですねぇ………




そういって冷蔵庫を開け…


飛鳥:お!冷えてる〜


〇:いつの間にビール冷やしてたんですかっ!

飛鳥:ビールは必須だからねぇ

飛鳥:もちろん〇〇も呑むよね?

〇:もちろんです!






それから2人はうにボナーラを食べ終えたあともツマミを作りながら酒を飲み続け……



飛鳥:やっぱり日本酒って美味しいよね

〇:そうだね。僕はビールより日本酒の方が好きかも

飛鳥:あすかちゃんがCMやってるんだからビールの方が美味しいっていえ!


〇:ビールはサントリー派だからなぁ

飛鳥:なっ…まぁ分からなくもないけど

飛鳥:てかさ、敬語も取れたし昔みたいになったね

〇:無事飛鳥さんのおかげで昔の僕に戻りましたっ



敬礼しながらそういう〇〇



飛鳥:うんうん。私はやっぱりこっちの〇〇の方が好きだなぁ

〇:またまた〜。リップサービスはいいですよ

飛鳥:別にリップサービスでも嘘でもないしっ

〇:それならありがたく受け取っときますよ

飛鳥:でさ、戻ったついでにしたかった仕事してみない?

〇:えぇ?どういうことですか?

飛鳥:だから!〇〇は企画とかがしたかったんでしょ?

〇:うん

飛鳥:ならさ、うちの事務所に来なよ

〇:そ、そんな飛鳥さんの事務所ってあんなにデカいじゃないですか……僕なんかが入れないですよ

飛鳥:〇〇がもともと持ってた独創性さえあればいける!てか、私がお願いしたらいけると思う

〇: …いきたいです。常識を覆すような企画…作ってみせます!

飛鳥:よし、その心意気があれば大丈夫だね!

飛鳥:うちに入ったからとはいえマネージャーってわけじゃないから仕事で会えることはあんまりないと思うけど楽しみだよ

〇:わかりました!いつか飛鳥さんにも貢献できるように頑張ります!

飛鳥:ふふ。生意気め







それから10年の時が経ち……



〇:あすか〜

飛鳥:ん〜?どうしたの部長さん…笑

〇:もう!家に帰ってきてまでその呼び方されたくない!

飛鳥:いいじゃん部長さーん笑

〇:くっ…面白がられてる……






そう。あれから〇〇は無事企画の仕事に就き、飛鳥が見込んだように〇〇の冴えた企画は反響を呼び部長にまでうなぎ登りで出世し、飛鳥との同棲も始まったのだ




飛鳥:で、この会社に入れたのは誰のおかげだっけ?


〇:それはもちろん飛鳥さんでございます

飛鳥:あの日無理やり忘年会行かなくて良かったね〜

〇:もうその話20回目なんだけど……やっぱり歳とると同じ話を何回もするってホントなんだね

飛鳥:うっさい!





こうして2人は紆余曲折がありながらも何年もの時を経て



『推しメンとファン』

から


『夫婦』


へと歩みを進めるのでした

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