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中1の娘と中3の息子が、親と離れて住むことを決めた(後半)

夫といっしょにシンガポールに行くか? 日本に残るか?

初めての駐在話しに、頭の中がぐるぐるした。


(ここまでのお話は、前半でどうぞ ↓↓↓)


やってたこと辞めて、行くことにしよう。


迷ったうえでそう決めた。


こどもたちに伝えると、

当時、小学4年だった娘は、「おもしろそう!行く!」と二つ返事。

小学6年だった息子は、絶句していた。



そりゃそうだよね。。。

息子は、小学校から帰宅したあとも、毎日毎日友達と遊び、

地域の野球チームに入って、週末は練習に試合、野球仲間と過ごしていた。

たまに喧嘩もするけど、仲良くて、

野球チームの子どもたちは地域の大人からも可愛がられていた。

その野球仲間も一緒に地元中学校に通う予定で、制服も準備が出来たところだった。


「行きたくない・・・・」


小さな声で、そういう息子に、私は大きな声で言った。



「一人でここに残るわけにはいかないでしょ!?

みんなで一緒に行くしかないんだから!」



思わず威圧的な言い方をしていた。

(これは自分に言ってる言葉だ・・・)


その頃熱中していた食育活動や仕事。おもしろくて辞めたくなかった。

でものめり込みすぎて、夫との会話はどんどん減っていた。事務的な会話くらい。


(辞めたくない・・・でも、いま別々に暮らしたら、もう離婚だろうなぁ。元には戻れないだろう・・・ぜんぶ辞めて家族との時間とりもどそう。)


淡々と引越しの準備を始めていった。



4月になった。

中学校の入学式。

制服を着て息子は中学生になった。野球仲間もみんな一緒に。


「うちの息子は、野球部に入ったよ!」

「うちは剣道部。野球はもういいって」

野球チームのお母さんたちから、続々こどもたちの情報が入ってくる。

みんな楽しそう。新しい学校生活、部活。



ふと気づくと、息子は部活にも入らず、家でゲームしていた。



「なんで、部活入らないの?」


私が聞く。



「だって・・・夏休みに、シンガポールに引っ越すんでしょ?

じゃ、一学期だけ入ったって、仕方ないよ。。。」


息子はゲームしながら、ポツリと言った。




あああああああ・・・・・・・


そのひとことで、息子が寂しさを抱えていることが伝わってきた。


(みんな部活で楽しそう。。。自分はどうせここからいなくなる・・・・)


行きたくないけど、両親が行くから一緒に行くしかない・・・僕にほかの選択はないんだ・・・絶望感にも似た空気があった。

そして、きっと現地の学校への不安だっていっぱいあったよね。。。


はじまりは、無理やりだったけど、駐在生活は楽しかった。

親も、そこでの生活は未経験だから、なにもわからない。

親も子もなく家族4人が、それぞれ知り得た情報を提供しあう日々。

現地での習慣、物の使い方、どこで売ってるのか?等々



珍しい形のカタツムリを庭先で見つけて、捕まえようとする私に息子が大声で言う。

「触っちゃダメだよ!! かあさん、そのカタツムリは毒あるよ!」

虫好きな息子は、現地にいる昆虫のことをもう調べてるらしい。



「ほら、プールにつかりながら、ごはん食べさせてもらってる子がいるよ」

「パジャマで買い物に来てるね」

「『ちょっと待って!』は『ウェイ、ウェイ、ウェイ』でいいんだね」

娘は人物観察がするどい。

プールで遊びながら、体は水に浸かりながら、プールサイドにいる大人に、スプーンでご飯を食べさせてもらってる子ども。

朝、パジャマにビーサンで、近くの屋台に朝食を買いに行く親子。

ハンカチで手を拭くのは汚い行為。湿ったハンカチをポケットやカバンにいれたら不潔である。。。。。


親が、自分の経験や、日本での常識を盾にして話すことができない環境。ここはシンガポール。こどもから教えてもらうことがいっぱいだった。


そして、やってきた2007年の初め。

帰国の話しが出る。

その時、"行きたくないけど、一緒に来るしかなかった息子の様子" を思い出したのだ。


シンガポールに来るときは、無理やり連れてきてしまった。今度はこどもたちそれぞれに気持ちを聞いてみよう。


こうして、

「帰国が決まったよ。今度の8月だって。 来るときは、無理やり私たちが決めたから、今度はどうしたいか、それぞれの気持ちを聞かせてね」

そう話したのだった。

娘中1、息子中3、それぞれの学年の終わりが近づいている頃、また息子は卒業式(今度は中学校)、そして入学式(今度は高校)のタイミングだった。


ふたりとも、即座に返事が返ってきた。


「帰る。」と娘。

「うん、いっしょに8月に帰るんだね?」と私。

「ううん、違うの。4月の頭に帰りたい。中学2年になるんだよ。一学期が終わってから帰ったら、もう女子はグループが出来てて、入るの大変なんだよ。父さん母さんがいなくても、私は先に帰りたい。4月から日本の中学校に行きたい」



え・・・な、なるほど。そうかもしれないな・・・娘だけ先に帰す方法あるかな。 あ、、うちの実家!となりの県だけど住民票いれたら、そこから学校に通えるかも! 越境届出したら大丈夫かも!


こどもたちの気持ちを叶えたい、その一心で、アイディアが浮かぶ。




「僕はシンガポールに残りたい」息子もはっきり言う。

「え・・・・父さん母さん、日本に帰っちゃっても?」

「うん、もうこっちの友達の方が仲良くなってるし、全寮制の高校もここにはある。そこに行きたい」


たしかに・・・・


そして息子は、その全寮制の高校に3年間行くことになったのだ。


そして、娘は実家に住民票を入れたものの、毎日通学するには遠くて、結局、中学校近くに住む私の友人宅に居候することになった。私たちが帰る8月まで。。。

中学2年で居候。なかなか珍しい経歴だよね。


そして、2人が自分なりの意見を出すのを見て、私はとても嬉しく思いました。たくましさを覚えました。


(★ トップのトカゲ写真は、シンガポールで撮ったもの。トカゲやヤモリは日常茶飯事。マンションの外壁にはヤモリがいっぱい、洗濯機の中にも隠れていたりした。学校の校庭にはコブラが出たり。ワイルドだった。虫好き・爬虫類好きにはワクワク王国かもね!)



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