市長にメールしたら数日後に電話がかかってきた!
自宅の近くに、市が運営する『地域のフリースペース』ができることになった。
ここは都心にも電車一本で通えるエリアのため、現在、マンションや新しい住宅の建設ラッシュ。保育園もどんどん増え、学校も教室を増室・増室。続々と子どもが増えている。もともとある林や原っぱも残っていて、過ごしやすい場所。若いご夫婦がたくさん引っ越してこられる。
昔から住んでた高齢者さんたちも多い。夏祭りに、どんど焼き、芋ほり会、住民総出で側溝や公園の掃除。自治会も、子育て活動も、老人会も盛ん。
でも・・・そこに入ってない高齢者の方々も多いようで、スーパー内のベンチにずっと座ってる方、公園にずっと座ってる方をよく見かけた。きっと、おうちで一人で過ごされてる方も多いんじゃないかしら・・・。
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子育て中、私は公園ママとのつきあいが苦手で、グループに入らなかった。いっときは孤独感にさいなまれて誰かと話したかった。しかもアトピーとぜんそくのある子どもをかかえて病院通い。いつ治るのか・・・除去食づくりでクタクタ・・・そんなとき、高齢者の方々は優しかった。
痒がって泣く我が子をのぞき込んで
「痒いだろうねえ・・夜泣きする?ママも寝れないから大変だよね」
「つらいのは今だけだからね。もうちょっとの辛抱だよ」
「こんな時は、ここをさすってあげると落ち着くよ」
通りがかりの、見ず知らずの方がほんの少し声をかけてくれて、私は、そのちょっとだけの会話にすごくホッとさせられた。
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そんな体験があったので、『地域のフリースペース』は、孤立しやすい子育てママや高齢者の居場所になると思った。沖縄のオープンなおうち、そんな雰囲気になったらいいなあ・・そう思って開設が待ち遠しかった。
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10月。とうとうオープン!
さっそく行ってみる。
誰もいない・・・・
がらんとしていて、なんの掲示物もなく、どこかの会社の事務所みたい。
外からみたら、法律事務所かなにかが出来たのかと思っちゃう。。。
奥に、昔からあるタイプの事務机があり、そこに男性が座っていた。作業中・・・。
思い切って話しかけてみると、その男性はコンセルジュという立場で、もともと市役所で各種相談にのっていた方が、定年してここの担当者、コンセルジュになったとのこと。
「気軽に生活のご相談にのりますよ。専門機関へおつなぎすることもできます」とその男性は言った。
むむむ・・・ちょっと想像していたものとイメージが違った。。。
でも、気になって、一週間後、
また一週間後、
時々、そこをのぞいていた。
一か月経っても誰もいなーい。
その中で、ちょこちょこ顔を出す私は、コンセルジュさんと顔なじみになっていた。
「外からみると事務所にしか見えませんよ。立て看板おくとか、入口に大きく『街のフリースペース、どなたでもお気軽に』と書くとか・・・」
「このポット、なにが入ってるんですか?」
「え、お茶?自由に飲んでいいんですか?」
「じゃ、それも書いておいたらどうでしょう?お茶ご自由に、とか」
うるさいオバサンまるだし。
でも、やっとできた街のフリースペース。いろんな人が気軽に出入りして、(ここに来たら、ホッとする)そんな場所になってほしくて、口出ししてしまう。市の管轄だから、このままなら、税金無駄使いとして、すぐ閉鎖されてしまうだろう。。。
「そうだ!!」
いいこと思いついた!
私は、脳活性レクリエーション指導の資格をもっていた。義父が認知症だったので、それがきっかけで資格をとった。
(客寄せに、脳活性レクリエーションをやったらどうだろう?
多くの高齢者さんは認知症予防に興味がある。
ここでやったら、みなさん入りやすくなるんじゃないかしら?)
入りづらい事務所的な空気も、一回、ここに来たら、ここの利用法をわかってもらえる。
閑散としたお店に、人は入りづらいけど、中に人がいると入りやすくなる。
そう思って、顔なじみになったコンセルジュさんに声をかける。
「あのー。」
今、思ったことを全部はなしてみると、
「いいとは思うけど、ここ、市長が独断ではじめた場所なんだよ。実験的にね。うまくいったら、ほかのエリアにもこういう場所をつくりたいんだって。だから私には決定権がないの。でも、市長はここが気になって、見に来るんだよねえ。忙しいのに、ちょこちょこ見に来ちゃうんだよ。だから、そういう話は直接、市長に投げかけてくれる?」
顔なじみになってるせいか、ちょっと愚痴っぽく私に言った。
直接、市長に言え、と?!
(そんなの無理じゃない? だいたいどうやって、連絡とるの?)
そう思った瞬間、市のホームページに
★市長と市民の懇談会(抽選で毎月数名、市長と話ができます)
★市長への手紙(FAXもしくはメールで、市長あてにお手紙ください。市政について、市内のこと、なんでも構いません)
そう書かれていたことを思い出した。
メールしよう!
その晩から文面を考える。
『地域のフリースペース』活用のためのアイディア ~脳活性レクリエーションを目玉に、場自体を活性化する~
独身時代、企画会議に出たり上司の企画書リライトをしていたので(※)、
それを思い出して、市にとっての利点、住民にとっての利点、双方を書き出していく。
やろうとしている脳活性レクリエーションのエビデンスや実際にとりいれている介護施設や会社の事例、
そして、自分のこと。この地域に長年住み、ここで子育てと両親の介護をしてきて、子育て期の孤立と老後の孤立を軽減させたいと思っていること。
などなどを書いた。
そして送信!!
(市長あてにメール出しても、読んでもらえるかわからないよね。もし本当に読まれたとしても半年先?一年先くらいかもね・・・)
返事は全く期待していなかった。
でも、できることをやったので、私はスッキリしていた。
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数日後、電話が鳴った。
「市役所〇〇課のものですが、市長から連絡があり、お宅に電話しています」
と。
気が動転して、はっきりなんと言われたかわからないが、
市長が私のメールを読んで、興味をもち、
『地域のフリースペース』担当者(コンセルジュ)と相談して実行してほしい、ということだった。
翌日、『地域のフリースペース』に向かう。
「あ、市長から連絡うけてます」とコンセルジュさん。
そこからは、日程を決め、簡単なチラシをつくり、近隣に配る。
高齢者が寄りそうな薬局や接骨院、コミュニティセンターなどにおいていただく。朝のラジオ体操にも持参して直接わたす。
これまた、昔、駅前でのビラ配りや、店舗をまわってチラシ設置のお願いをした経験があるので、躊躇なくできちゃう。
こうして、市長にメールを出した翌月には、
地域のフリースペース主催 脳活性レクリエーション
みんなで楽しく脳を活性化しましょう!どなたでも参加OK!
が開催されることになった。
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予想した通り、脳活性レクリエーションに参加された方は終了後も、そのフリースペースでお茶を飲みながらおしゃべりをされていた。
それを見て、通りがかりの人が入ってくる。
「ここ、なんなの?誰でも入っていいの?」
もう、コンセルジュさんが説明しなくても、常連のみなさんが説明する。
「ここにお茶があって、ここに紙コップがあって・・・。」
そのうち
「煮物を多く作りすぎたから一緒に食べませんか?」
「家は私だけ。一人でたべると美味しくないのよ。多めに持ってきたから誰かいっしょにこれ食べない?」
このフリースペースで、食事する人が増えていった。
子育て中のおかあさんも入ってくる。
「あら、かわいいわねー」
その場だけの交流だから、お互い気がラク。
兄弟の習い事を、下のお子さんとともに待つお母さん、
誰かと話したくて・・という若いママ。
ちょっとトイレを借りに。
荷物が重くて、ひと休みしに。
いろんな理由で、いろんな人がふらっと寄って行く場所になっていった。
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脳活性レクリエーションが始まって半年後、高齢福祉課の職員さんがお礼を言いに来てくださった。そのとき受け取った名刺には、細かい文字で「市における高齢化社会への対策対応」、「地域活性化の願い:人を生かすということ」、裏面にびっしり市の願いが書かれていた。そのポイントは、私がメールで送った内容とそっくりだった。市の願いと、私の思いが同じで驚いた。双方の「願いの周波数」がぴったり合って、タイミングもぴったりだったから、障害物なく繋がったんだろうなーと思う。そして、脳活性レクリエーションは毎月毎月行われ、6年間続いたのだった。
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※補足
文中に、「独身時代に企画会議に出たり、企画書リライトしてた」という個所がありますが、私は当時、クリエイティブでもなければ企画経験があったわけでもありませんでした。ただ大好きなスキーの仕事をしたくて、親や友人まわりが心配する中、社員6人の会社に勤めたのです。
そしたら社員が少ないから、いろんなことをやらせてもらえて、(いや、見方によっては手が足りないから、なんでもやらされる・・ってことかもしれませんが)。でも上司の方々のやってることを直接よく見ることができました。毎日毎日、その様子を肌で感じることができたおかげで、今も、自分に残っているのだと思います。
きっかけは、自分の好きなことや、自分の思いに正直に行動する、でした。
なので、どんなことも、自分の感覚を大切に進んだら、道が開けるし、すぐでなくても、その経験はのちのち生きてくるのだと思います(^^)
(まわりが心配する中、好きなことを仕事にした話し が知りたい方は、コチラへ ↓↓↓)
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