「レキシの七つのお祝いに」@横浜アリーナ【アラ還の徒然ライブ記】
レキシはミュージシャン池田貴史によるソロユニットで、日本の歴史を時にはファンクに、時にはバラードに乗せて歌う、「知っていると通ぶれる」アーティストである。
そんなレキシのアリーナツアー「レキシの七つのお祝いに」@横浜アリーナに、あまり乗り気ではなかった娘を連れて行ってきた。
ドリームフェスティバルで疲れた足と肩を揉んでもらおうと思って行った近所のマッサージ屋さんのお姉さんが、レキシのファンだった。「あの」袴Tシャツを2枚も持っていると言う。これまで行ったライブではレキシが一番楽しかったそうだ。私はRSRで少しだけ体験しただけだが、とてもよくわかる。
ただライブの楽しさのベクトルが他のアーティストたちとはかなり異なっているので、その楽しさを少しでもお伝えできればと思う。
開場して座席に着く。スタンド席なのでステージはやっぱり遠い。開演までの間、BGMが流れている。
小泉今日子「ヤマトナデシコ七変化」、ウルトラセブンのテーマ、かごめかごめ・・・何だこの脈略のないBGMは??
ピチカートファイブの「東京は夜の7時」、サザンの「エロチカセブン」、バービーボーイズの「なんだったんだ?7days」・・・・
ここまで聞いて気付いた、「七つのお祝いに」だから全部「七」だ!
で、だから何なんだ!?
この細かなネタはどのくらいの人が気付いただろうか。始まる前からこれはやばい。
会場が暗転した。
ステージからセンターに伸びる花道の先、スモークの中、ジャニーズ張りにレキシがポップアップする。
「SHIKIBU」(筆者注:紫「式部」のこと)の「シキシキブンブン、シキブンブン」でいきなり会場は一体と化し、INAHOの光につつまれた。
説明しよう!(©タイムボカン)INAHOとは稲穂のことであり、レキシのライブには欠かせないグッズである。元々は「狩りから稲作へ」という曲で使用するものだったが、今ではこれを振ること自体がレキシのライブに参加する目的の一つになっていると言っても過言ではない。
続いて、クレヨンしんちゃんの映画「ラクガキングダムとほぼ4人の勇者」の主題歌にもなった「ギガアイシテル」が畳みかける。「ラクガキ」と「鳥獣戯画(ギガ)」のマッチングが素晴らしい。「君のその落書きもいつか誰かの宝物」。この曲はマジでよいので是非聞いてほしい。
小倉百人一首の選者である藤原定家の代表作
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
をモチーフとした「Let's Fujiwara」。単にふざけているわけではないことがよくわかる。この記事を書くにあたりちょっと勉強してみた。為になる。
この横アリの公演の前には大阪城ホールでの公演が予定されていたのだが、台風の影響で中止となってしまった。そんな大阪に向けた「真田記念日」と続く。豊臣派であった真田は大坂の陣で江戸幕府に負けてしまうのだが、「大坂〜いつの陣?冬の陣?夏の陣?」というふざけた(いい意味)歌だ。
ここでゲストとして、「あ、たぎれんたろう」が登場。
「たぶんmaybe明治 feat. あ、たぎれんたろう」で会場を盛り上げる。軽快なダンスチューンでこちらも名曲だ。
次の曲の小道具、と言っておもむろに俵を取り出す。俵といえば年貢、「年貢 for you」だ。この曲はもともと「年貢 for you feat. 旗本ひろし、足軽先生」として、旗本ひろしをフィーチャリングしたものだが、最近旗本ひろしが愛想をつかしてゲストとして呼んでも来てくれないんだそうだ笑。そのため、「あ、たぎれんたろう」が続けて歌うことに。ねんぐ、ねんぐが耳に残る。
旗本ひろしの中の人は「はたもとひろし」で変換してみて。
続けてなぜかディスコの話になり、地球風炎の「September」を演った後、レキシから「あ、あたぎれんたろう」に「あれやって」とリクエストが。
「あ、たぎれんたろう」の中の人はAwesome City Clubのatagi(あたぎ→あ、たぎ)。ボーカルの男の方だ。Awesome City Clubといえば「忘勿」。そしてステージ奥を見ると青い髪の毛が見える。青い髪の毛と言えばボーカルの女の子の方だ。確かPORIN。まじか。と一瞬思った。
そんな訳はなかった笑。バンドメンバーが青いヅラをつけているだけだった。なんていう自由さ!ドリフか?それでもatagiはしっかりと「忘勿」を演ってくれた。本物だ。ちょっと得をした気がした。
「あ、たぎれんたろう」が退場して、忍者に恋したお姫様を歌った「Let's 忍者」の後、懐かしのディスコサウンドを彷彿とさせる「古墳へGO!」と続く。彼女と古墳デートは楽しいかもしれない。彼女と一緒なら、円墳とか方墳とかは関係ないだろう。「ただ、あなたが楽しんでくれるかが気がかり」、という歌詞に泣ける。そしてなぜか途中からマツケンサンバへ。RSRでも観た。多分これはお約束なんだ。
小野妹子が男だった、というネタのみで押し通す「妹子なぅ」。あるあるだとは思うが、確かに、それを知った時に軽いショックを覚えた記憶がある。
続いて2人目のゲスト、「にゃん北朝時代」が大名駕籠に乗って登場。中の人は「カネコアヤノ」。お寿司屋で偶然会って今回のフィーチャリングが実現したんだそうだ。カネコアヤノといえばRSRはコロナで参加できなかったんだっけ。残念だったが、藤井風が代打で彼女の「祝日」を演ったのを覚えている。
父と娘のような微妙かつ絶妙な距離感でのやり取りの後、安達祐実がMVにフル参加したことでも知られる「マイ草履」。豊臣秀吉が織田信長の草履を懐で温めたという逸話を基にしたバラードだ。
にゃん北朝時代はこの1曲で退場。続けて、豊臣秀吉と伊達政宗の因縁がテーマの「だって伊達」。単なるダジャレではなかった。すごい。「salt & stone」。大「塩」平八郎と大「石」倉之助の名前を呼ぶだけの曲。ある意味これもすごい。
さて突然だが、レキシのライブグッズにはイルカのぬいぐるみの「吉尾太郎」が付いた「ヨシオ棒」がある。オフィシャルサイトでは「KMTR645」という曲のサビで振ることを推奨しているが・・・なぜイルカか。
深く考えると損をするよ。
「KMTR645」のKMTRはカマタリの略で645は645年を表す。即ち、藤原(中臣)鎌足が、当時権力を思うがままにしていた蘇我氏を滅ぼしたという、「むし(64)もこ(5)ろさぬ」大化の改新の歌であり、鎌足に討ち取られたのは蘇我入鹿。ソガノイルカ。
ぬいぐるみをよく見ると、目がバッテンになっている。討ち取られたからね・・・。
「KMTR645」のイントロが始まり、ステージからセンターに伸びる花道の先、スモークの中、ジャニーズ張りに着ぐるみのヨシオがポップアップする。かと思いきや、顔だけがポップアップ。ステージによじ登ろうとするが着ぐるみのため上手く上がれない。ドリフか?
ヨシオ登場のやり直しのあとの「KMTR645」、めちゃめちゃ盛り上がる。サビの「きゅっきゅっきゅー、きゅっきゅきゅっきゅー」にあわせてヨシオ棒を振るのだ。今回はヨシオ棒は買っていないのでINAHOを振った。楽しい。
その勢いのまま「キラキラ武士」へ。
それにしても、ここまでほぼ暗転なく、ぶっ通しのステージだ。途中はぁはぁ言いながらも、レキシのパワー、テンション、凄いの一言しかない。
少しの休憩の後、最後のゲスト「ぼく、獄門くん」と一緒に登場。「ぼく、獄門くん」の中の人(たち)は「打首獄門同好会」。
登場して早々、「ぼく、獄門くん」は客席のみんなに聞きたいことがあると言う。「狩りから稲作へ」のサビ部分、「縄文土器、弥生土器、どっちが好き~?」なのだが、これに合わせてどっちが好きか聞きたいんだそうだ。
「ユニバ」「ディズニーランド」、どっちが好き~?→圧倒的にディズニーの勝ち。(観客の拍手の大きさで判定笑)
「きのこの山」「たけのこの里」、どっちが好き~?→たけのこの勝ち。
「犬」「猫」、どっちが好き~?→レキシから止められる笑
「日本のコメ」「タイの米」、どっちが好き~?
から「日本の米は世界一」(打首獄門同好会のオリジナル曲)へという流れ。タイの米もカレーや炒飯にすると旨いよねというフォローが入る。世界観がレキシと似ている。
続けて「鬼の副長hizikata feat. ぼく、獄門くん」。新選組の土方歳三の曲だが、肘、肩、腰、というベタな振付が、今このご時世のライブにふさわしい。「ぼく、獄門くん」のデスボイスも聞きどころだ。
そしてアンコールのため一旦退場。会場スクリーンにはポンポンポンポーンというチャイムとともに「お知らせ」の表示が。ストレス発散にはINAHOが効くという、某ボラ〇ノール風CMが流れる。INAHOを持っていなくても手で稲穂の形にすればよいのだそうだ。レキシにはイナホフール。
そして再登場は、ステージからセンターに伸びる花道の先、スモークの中、今度はジュディオング張りに両手を翼のように広げた衣装でせりあがってきた。
最後は「狩りから稲作へ」、本来のINAHOの出番だ。あぁINAHO振りすぎて接触不良だ、電気がうまく点灯しない泣
「縄文土器、弥生土器、どっちも土器〜」「高床式〜、劇団四季〜」ってジョイマンか。
こうしてレキシのライブは終わった。
最初あまり乗り気でなかった娘が「楽しかった」と言ってくれただけで、父としては満足だ。
横アリからは徒歩で家に帰れるのだが、その帰り道すがら「大塩平八郎」って知ってた?とか、「ねずみ返し」って分かる?とか、話しながら帰った。日本史に詳しくない娘は「なんとなく聞いたことはあるかなぁ」だそうだ。こんなやり取りもレキシのライブの正しい楽しみ方だと思う。
最後まで長い駄文にお付き合いいただき感謝。小ネタ満載のレキシライブの雰囲気が、少しでも伝わったとしたら嬉しい。