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#9 『目指せ!チキンマスター』
から揚げや親子丼、シチューや照り焼きなど様々な料理に使われている『鶏肉』。
味が淡白なのでどんな素材やソースとも合わせやすく、和洋中をはじめとする世界各国の料理でも大人気の超定番食材です。
また焼く、茹でる、炒める、揚げる、蒸す、煮る…といったあらゆる調理法に柔軟に適応するため、そのレシピの数は無限大。どこでも入手しやすく価格も手頃とあって家庭の食卓にはもはや絶対的に欠かせない存在です。
鶏肉がもも肉やむね肉など、いくつかの部位に分けて売られていることはご存知かと思いますが、これらの部位にはそれぞれに特徴があり、適している料理や調理法もそれぞれの部位によって異なります。
鶏肉なら何でもいいというわけではなく、各部位の特徴を知って料理に合わせて使い分けたり、ご自身の料理にこれまで使ったことのない部位も取り入れてみることで引き出しが一気に広がり、全く同じ料理であっても見た目や味わいに複数のバリエーションを持つことができます。
今回はそんな『鶏肉』という唯一無二の素晴らしい食材を扱う上で知っておくべき最低限の知識と部位による使い分けなどについて詳しくご紹介していきますので、料理が上達したい方はこの機会にしっかりと頭に叩き込んでおいてください。
そして今まで知らなかった部位を恐れず、積極的に使ってみてください。ほんの数回使えば、その部位はあなたの食材レパートリーに加わり、今後の料理人生の中での選択肢として大いに役立つはずです。
目指すは "チキンマスター" です!(…なんか弱そう)
① もも肉
足の付け根部分の肉で鶏肉の中でもっとも人気のある部位です。もちろん消費量も各部位の中でダントツのナンバーワンです。脂肪が多く、コクがあって歯ごたえも良いので鶏肉特有の美味しさがギュッと詰まっています。
[もも肉を使った定番人気料理]
・ から揚げ(こってり系)
・ 照り焼きチキン
・ チキンステーキ
・ クリームシチュー
・ チキンのクリーム煮
・ チキンのトマト煮
・ チキンカレー
・ チーズタッカルビ
・ 親子丼
・ チキンライス
・ 筑前煮 etc...
② むね肉
文字通り胸部分の肉で脂肪が少なく身は柔らかく淡泊。加熱しすぎると固くなり食感もパサつくので火加減や加熱時間には注意が必要です。あっさり低カロリーなのでヘルシーメニューとしても多用されます。また価格も安いため、もも肉に次いでとても人気のある部位です。
[むね肉を使った定番人気料理]
・ から揚げ(さっぱり系)
・ チキン南蛮
・ 竜田揚げ
・ チキンカツ
・ 蒸し鶏
・ 鶏ハム(サラダチキン)
・ 炊き込みご飯
・ タンドリーチキン
・ とり天 etc...
③ ささみ
むね肉に近接した豚肉や牛肉でいうところのヒレ肉に相当する部位です。形状が笹(ささ)の葉に似ていることから『笹身(ささみ)』と呼ばれています。 むね肉と似て脂肪が少なく淡白な味わいですが体の内側にある肉なので皮はありません。中央にある白いスジを取り除いてから調理します。加熱後に身をほぐして使われることが多いです。
[ささみを使った定番人気料理]
・ あえもの
・ 棒々鶏
・ サラダトッピング
・ ささみフライ etc...
④ 手羽先(手羽中)
翼の先端部分の肉でL字型をした部位で『てばさき』と読みます。身肉よりも皮の部分が多く、脂肪やコラーゲンが豊富で肉質もホロホロと柔らかいのが特徴です。から揚げにして甘辛だれで味付けした名古屋の名物料理としても有名です。また手羽先の中でも身の少ない部分を取り除き、肉厚な部分だけを食べやすくカットしたものを『手羽中(てばなか)』と呼びます。主な調理用途は同じです。
[手羽先(手羽中)を使った定番人気料理]
・ から揚げ(名古屋風)
・ 手羽先ぎょうざ
・ 甘煮
・ 照り焼き
・ 塩焼き etc...
⑤ 手羽元
翼のうち付け根に近い部位で『てばもと』と読みます。骨が太く、よく動く部分のため脂身は少なく、しっかりとした肉質。手羽先よりもボリュームがあり、リーズナブルで美味しいため人気があります。『ドラム』や『チューリップ』と呼ばれるのもこの部位です。肉厚で中心部まで味や火が通りにくいため、あらかじめ骨の両サイドに沿って軽く切り込みを入れてから調理します。
[手羽元を使った定番人気料理]
・ フライドチキン
・ チキンカレー
・ ハーブチキン
・ やわらか煮
・ ポトフ
・ ローストチキン etc...
⑥ せせり
首まわりの部位です。 鶏は常に首を振りながら歩く習性があるため、筋肉が引き締まっています。強い弾力があり、プリプリと歯ごたえが良いのが特徴で『こにく(小肉)』や『ネック』とも呼ばれます。首まわりのわずかな肉をせせる(ほじる)というのが『せせり』という名称の由来です。もも肉よりも濃厚な味わいで焼き鳥屋さんでも人気です。
[せせりを使った定番人気料理]
・ 炒めもの
・ せせりポン酢
・ 塩焼き
・ 香草焼き
・ から揚げ etc...
⑦ 鶏レバー
肝臓です。『肝(きも)』とも呼ばれます。流水でしっかり洗った後、牛乳に2時間ほど漬け込んで再度洗い流し、水気を拭き取ってから使うことで臭みが和らぎます。レバーは好き嫌いが分かれますが豊富な鉄分を含む、体にとっては非常に栄養価の高い部位です。
[鶏レバーを使った定番人気料理]
・ 甘露煮
・ しぐれ煮
・ レバーペースト
・ レバニラ炒め etc...
⑧ 砂肝
胃の一部で『すなぎも』と読みます。地域によっては『砂ずり』と呼ばれることもあります。肝という名称からレバーと誤解されがちですが肝臓ではありません。鶏には歯がないため食べたものを直接飲み込み、砂嚢という器官で小石や砂などを利用してすりつぶします。この分厚くゴムのように頑丈な筋肉でできた胃袋が低カロリー、高タンパク質、低脂肪とヘルシーな上、コリコリした食感で人気なのです。
[砂肝を使った定番人気料理]
・ から揚げ(コリコリ食感)
・ 炒めもの
・ 煮こみ
・ アヒージョ
・ コンフィ etc...
⑨ 鶏ミンチ
鶏肉のさまざまな部位を合わせた挽き肉です(むね肉やもも肉が主原料である場合がほとんどですが詳細な部位までは定められていません)。鶏は牛肉や豚肉とは違い、さばいた後にほとんど端切れ肉が残らないため、他のミンチ肉と比較するとやや割高な場合もありますが、切りにくい鶏肉をカットしたり叩いたりする手間が省け、意外と多用途に使えるので便利です。普段、牛肉や豚肉のミンチで作っている料理も鶏ミンチで代用してみることで新しい味わいを発見できます。
[砂肝を使った定番人気料理]
・ つくね
・ チキンハンバーグ
・ 鶏そぼろ丼
・ そぼろあん
・ チキンナゲット etc...
⑩ その他の部位
一般のスーパーで購入できる鶏肉は上記で紹介したようなものくらいが中心かと思いますが鶏はほとんどの部位が食べられる(もしくは調理に効果的に使える)ため、お肉の専門店やネット通販などを活用すれば他にも以下のような様々な部位を入手することも可能です。
[やや入手しにくい鶏素材]
・ 丸 … 羽と足先のみを取り除き、内臓は抜かれていない丸1羽。
・ 中抜き … 羽、頭、内臓を取り除かれた肉だけの丸1羽。
・ さえずり … 食道・気道。主に焼き鳥の素材。
・ はつ … 心臓。焼き鳥のほか煮物や炒め物に。
・ やげん軟骨 … 胸骨の先端の細長い軟骨。焼き鳥やから揚げに。
・ げんこつ … ひざの軟骨。丸い小さな軟骨で、から揚げが定番。
・ せぎも … 腎臓。希少部位で串焼きの他、煮ものにも。
・ きんかん … 成長途中の数珠状の卵。煮物やすき焼きに。
・ ぼんじり … 尻尾の部分で三角とも呼ばれる。焼き鳥で人気。
・ かわ … 表皮。焼くとパリッと食感。かわ焼きやから揚げに。
・ はらみ … 横隔膜。一羽から10g程度しか取れない。塩焼きに。
・ もみじ … 足先。皮を食べる他、スープの出汁に利用。
・ とさか … 頭上の冠状突起。塩焼きや串焼きの他、刺身でも。
・ 鶏がら … 食用の肉を取り去った後の骨。主に出汁に使用。
⑪ 未知の食材に挑む重要性
料理上達のための重要ポイントの一つは様々な食材に関心を持つことです。
鶏肉に限らず、これまでに一度も使ってみたことのない食材を見つけたら、ためらわずにまずは気軽にネットで検索してみましょう。
今は下処理の方法から人気のレシピまで山のような情報が誰でも無料で収集できる時代ですので、それを活かさない手はありません。そして単に見るだけでなく、レシピの中から美味しそうなものをチョイスして実際に作ってみることが大切です。
所詮ネットですので、中にはマズいと感じるものや解説があいまいだったり、怪しげな情報も多く含まれているかと思います。
ですが、それまで知らなかった食材をあれこれ試行錯誤しながら実際に調理して口にするうち、あなたにとってそれは自然と未知の食材ではなくなっています。
すると後に別の調理法を覚えたときや似たような味わいや食感の素材を使った料理を知ったときに『…もしかして、あの食材でも代用できるんじゃないか?』という引き出しにつながるわけです。
例えば鶏の『とさか』は『牛タン』に食感が似ています。それを経験として知って初めて『牛タン』で作られている定番料理を『とさか』で代用して作ってみよう…という、それまでには絶対に思考が及ばなかったようなアイデアが浮かぶようになります。
そんな経験の積み重ねに裏付けされた発想こそが新しいレシピの生まれるきっかけとなり、料理の世界が広がっていくのです。
料理上手な人(たくさんのレシピを考案して公開しているような人)はそれらを過去の経験から熟知しているため、次から次へと美味しそうな新メニューを生み出すことができるのです。
何も難しく考える必要はありません。
まずはスーパーに列んでいる食材の中で用途が分からないもの、一度も食べたことがないもの、自分で調理したことがないものを1日1品づつでも構いませんので実際に買ってネットで調理法を調べながら食べてみる。
ただ、それを繰り返すだけであなたの調理スキルはみるみるうちに伸びていくはずです。
・ ズッキーニという野菜を使ってみたことはありますか?
・ 冬瓜という野菜を調理してみたことはありますか?
・ ドラゴンフルーツという果物を食べたことはありますか?
・ 生のマッシュルームを扱ってみたことはありますか?
・ アンチョビという調味料はどんな味でしたか?
・ ローズマリーという香草の使いみちは?
・ オイスターソースはどんな料理に使いますか?
あせらず一つづつ、知らなかった食材について知っていきましょう。
⑫ 要点まとめ
・ 鶏肉料理は家庭の食卓には欠かせない存在。
・ 部位の特徴を知り、料理に合わせて使い分ける。
・ 知らなかった部位を積極的に使ってみること。
・ まずはどこでも入手しやすい部位からマスター。
・ 続いて少し珍しい素材にも挑戦してみよう。
・ 料理上達のカギは未知の食材に興味を持つこと。
・ 探究心と経験が調理スキル向上につながります。
※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。
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