自分の店をつくるという選択肢
自分のお店がつくれたら…なんて想像してみたことはありませんか?
そんな小説のワンシーンみたいな楽しい毎日が自身の職業であり、生活の収入源になるなんて、すごく素敵で贅沢なことだとは思いませんか。
僕は今から10年ほど前に長年の夢だった飲食店での独立開業を実現し、まさに今現在そういった日々を過ごすことができています。もっとも理想と現実との間に多少のギャップがあることは否定しませんが…しかしまぁ、概ね楽しみながら仕事しております、はい。
実際のところ、独立開業に興味を持つ方は多くおられます。ただ最終的にそれを実現までされるのは、ほんの一握りの方々に過ぎません。
今回の記事では実際に独立開業を実現した僕から、いつか自分のお店を持ちたいと憧れを持たれている方々へ、特に夢の断念につながりやすい5つの要因について僕なりの考え方やアドバイスをご紹介してみたいと思います。
① 失敗するリスクへの不安
どこかで一度くらいは耳にされたことがあるかと思いますが、個人で開業した飲食店の近年の廃業率は以下の通りだそうです。
いやぁ、あまりに夢も希望もない衝撃的な数値ですね。
10年間営業を続けられている店はわずか10%程度しかないということです。
こんなデータを見せられたら誰でも思い留まってしまって当然です。
ではなぜ、こんな結果になるのかというと飲食店はそこそこのお金さえ用意できれば誰でも簡単に始められてしまうことが原因であると考えます。
まとまった退職金を受け取った定年サラリーマンが好きだからという勢いだけで修行もせずにラーメン屋を開業してみたり、大手企業が特定の流行にのるための経営戦略の一つとしてスピード出店&スピード閉店したり、他にも大した勉強や努力もせず軽い気持ちで飲食事業に参入してくる人々のいかに多いことか…。
自らの人生をかける店のために本気で学び、事前準備も徹底的に整えてから満を持して船出した真面目な経営者の店のみを調査対象とすれば、ここまで悲惨な結果は出るはずがないと僕は確信しています。そういうお店ばかりなら10年後でも半数くらいは生き残っているのではないでしょうか。根拠となるデータなんてありませんが個人的にはそう信じたいです。
さすがにリスクゼロとまでは言いませんが、それを言うならば現在お勤めされている会社も3年後に倒産していない保証などありませんし、5年後には何らかの理由であなただけがリストラされているかもしれません。10年以内には仕事中に大きな事故に巻き込まれるかも知れないし、上司のパワハラが原因で精神的な病に冒されてしまうかもしれません。
飲食店の物件は基本賃貸なので撤退した時点で支払義務は無くなって敷金なども手元に返ってきますし、開業時に購入した厨房機器や備品類も不要であれば、それなりの価格で全て売却することができます。
莫大な借金を背負ってさえいなければ、実は飲食店の開業自体にはその後の人生が破滅に追い込まれるほど強大なリスクは特にありません。
それどころか、もし経営をうまく起動にのせることができれば普通のサラリーマンが生涯をかけて働いても得られないような莫大な収益を短期間で手にできるなんてことも決して珍しい話ではありません。宝くじやギャンブルで当たる確率なんかよりは、よほど現実的だとすら断言できます。
つまり多額の借入に頼らず、料理の勉強や経営に真剣に取り組む姿勢をもった人にとって独立開業は人生上における前向きなチャレンジ行動の一つであり、失敗時のリスクなど特に気にする必要が無いことは明白です。
② 開業資金が貯められない
僕が知る中で最も多い開業挫折理由の一つが、この資金の問題です。
特に独立を夢見ているがゆえに飲食店で修行を兼ねて働いている若年層があまりの手取り給の少なさから一向に貯蓄が増えず、何年経過しても独立など雲をも掴むような話になってしまいがちな現実も、この身をもって体験してきました。
しかし、こればかりは決死の覚悟で貯蓄するほかありません。
モチベーションが維持できない人は開業資金を貯めること自体が独立後のミッションの冒頭だと考えることです。自分の独立は既に始まっていて、その1つめの仕事を実行している。もう後戻りはできず、目標額を達成するしか選択の余地はない!と自分に言い聞かせて努力邁進することです。
もちろん料理に関して必要最低限の習得は達成できたと感じているならば、一時的に短期で稼げる高収入な仕事に転職するのも一つの手段かと思います。
僕の場合は幸運にも早い段階で料理長職に抜擢されたことと、住んでいた家が祖母の持ち家で家賃などの生活費が大幅に浮いていたため、ある程度の余力がありました。
ちなみに僕が独立のために貯めた金額は約400万円です。
この金額は開業資金としては決して多い方ではありませんし、本来目標としていたのは500万円でしたが、たまたま理想的な物件に出会ってしまったことで開業の計画を約1年ほど前倒しして独立を果たしました。
今は当時に比べると消費税など物価も多少上がっていますが400万~500万円くらいなら、その気になればどうにか貯められそうな気はしませんか。
月8万円の積み立てを継続できれば現時点での貯蓄がゼロだとしても約5年で到達可能な金額です。
どうせ開業準備や料理技術の習得にはそのくらいの期間を要しますので現実的に計画が機能しやすい無難なスケジューリングだとも思えます。
今現在の状態が上記のような人でも、その気になって努力さえすれば5年後には自分のお店での独立開業が充分に可能であるということです。
月8万円の貯金を5年続ける程度の苦労であなたの夢が実現できるのです。
動く前から諦めたりせず、一発奮起して本気で挑戦してみる価値は充分にあるのではないでしょうか。
③ 調理や接客のスキルがない
飲食店で独立を考えているのであれば、もちろん調理や接客について最低限のレベルは習得しておく必要性があります。
ただ近年は業務用食品の発展や進化がめざましく、素人離れした知識や優れた調理技術を持たなくとも、街場のカフェや小規模の居酒屋くらいであれば何の支障もなく運営していくことは可能です。
イタリアンやフレンチ、中華料理など専門料理系になってきますと、さすがに一定レベルの知識や技術も必要になってきますが、いずれにせよ必ず一度は自身が開業したいと考えているイメージに近いタイプの既存店で実際に働き、飲食店の運営がどのようなものかを最低でも1年以上は経験されてから独立すべきでしょう。
独立開業のための実技指導をしてくれる学校にでも通っていると思えば、学んだ上にお金までもらえるわけですから願ってもないことです。
当然ながらお店を開業した後も調理や接客の勉強は継続していくべきです。自分のお店なら学んだことを即実践できますから、お店と一緒に自分も成長していけると良いですね。
僕は現時点のスキルに自信がないからと開業を断念する必要など一切ないと思います。分からないことは今から学べばいいだけの話ですからね。
④ 今のキャリアを失いたくない
これまでの人生でコツコツ努力し、積み上げてきた実績や成果。
数々の苦痛や試練を乗り越えてきたがゆえの現在の役職やポジション。
今のそれなりの月収や安定した生活レベル。
そういったものを全て捨て去って独立すると考えると相当な勇気が必要です。何もかも失い、また人生が振り出しに戻るような喪失感を覚えるかもしれません。
でも、そう考えるのは大きな間違いです。
あなたがこれまでに培ってきた経験・知識・思考・行動・スキル・こなしてきたあらゆる仕事の全てが、あなたの独立を支える糧となるのです。
これらはほんの一例です。
飲食店経営とは自分一人だけで会社の全部署を兼任することに似ています。
おそらく実際に始めるまでは想像できないくらい多くの要素から成り立っており、中でもオーナーには総合的な能力が求められるため、全ての経験や過去の実績は何らかの形で必ず役に立ちます。
これまでは自身の能力を会社や他人のために使ってきたかも知れませんが、独立した後はそれらの力を全て自分の目的のために使うことになります。
つまり独立とは何かを失うわけではなく、これまでに得てきた全ての知識や経験やスキルを結集して、自分自身のための新たな居場所をつくるということなのです。
あなたがこれまでに積み上げてきた人生の財産は何一つ無駄にはなりません。
⑤ 周囲の意見や反対の声
家族の理解や協力を得られていない孤立無援状態での独立は正直おすすめしません。
可能であれば家族だけでなく親しい友人や日頃からお世話になっている人など、一人でも多くの人があなたの独立開業に賛同し、気持ちよく応援してくれている状態が理想的です。
独立とはいえ、周囲の人の協力なしには事業が成り立たなくなるようなことも多々あるからです。
ただ、飲食店を開業することについて周囲の人に打ち明けると始めのうちは親密な人ほど反対したり、否定的な意見を言ってくる傾向にあります。
それはあなたのことを本気で心配してくれているからこそでしょう。
でも僕に言わせれば、それは単に相手側にあなたの真剣さや情熱が充分に伝わっていないからです。
始めのうちは反対していても、あなたが来たるべき独立の日に向けて必死で経営の勉強をし、飲食店の実務も経験し、細かな開業計画を練り、料理を試作しては意見を求め、目を輝かせて毎日のように夢を熱く語っている…。
そんな姿を見ていれば、きっと親しい人ほど『そこまで本気なら応援してあげたい!』という気持ちになってくれるに違いありません。
逆に言えば家族や親密な人が自発的に応援してくれるようになるくらいまでの努力や情熱は独立開業を成功させるために最低限必要だと言うことです。
なお、あまり親しくない人や現在の職場の仲間が『ムリムリ、失敗するからやめておいたほうがいいよ!』と言うのは前述したような意味での心配ではなく、自分では到底実行できないことゆえの羨ましさからくる嫉妬の場合がほとんどです。単に同僚に辞められると自らの仕事の負担が増えてしんどくなるから引き止めたいだけという場合もあるでしょう。
そんなつまらないものに人生を変える決断を阻まれている場合ではありません。相手に説得や反論をすることすら時間や思考力の無駄でしかありません。適当に愛想笑いでも浮かべなから右から左へ聞き流しておきましょう。
最後に飲食店の独立開業を夢見ている方に僕がお伝えしたいこと。
自分の店をつくるという選択肢を実現できるかどうかは環境や外的要因などは一切関係なく、あなた自身の情熱次第です。
本気でやろうと思えば貯金ゼロの未経験者だって5年もあれば充分実現できますし、逆に強い意思がなければ、どんなに経験や実力のある人が一生かかっても実現できません。
仮に情熱や意思の弱い人がお金があるからという理由で安易に独立したところで絶対に生業としては長続きしません。それが冒頭の廃業率が示しているような結果へとつながってくるのでしょう。
自分自身に嘘をつかず、ラクな方へ逃げず、ほんの少しは我慢して、ぜひ夢を実現してください。
自他ともに認める飽き性の僕なんかですら実現できたのですから、きっとあなたにもできるはずです。
どうか夢を諦めずにがんばってください!
⑥ 要点まとめ
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