融資に強い創業計画書の書き方
日本政策金融公庫で開業融資を受けるためには創業計画書という書類の提出が必須となります。たった1枚の紙ですが、この資料の完成度次第で融資の結果はほぼ決まると言い切れるほど大変重要なものです。
多くの起業家が書類を作成する際、インターネットの情報を頼りに調べ、その見本通り忠実に書類を作成して提出するのですが、なぜか公庫の審査を通過できず、融資申請が失敗に終わってしまう事例が跡を絶ちません。
一般的なお役所関係書類なら見本通りに書いておけば大概は通るはずです。むしろ、見本通りでなければ書き直しを求められるくらいです。
では、なぜ公庫の融資審査では見本通りに書いても落ちてしまうのでしょうか。
それは公庫側が計画書を通じて知りたい情報というのが、あなたの事業が本当に利益を生み出せる見込みがあるのか、つまりは貸したお金の返済ができるかという一点のみに絞られているからです。
これから立ち上げる事業を『おそらく失敗するだろう』と思いながら始める人などいるはずがありません。その人は当然『こうなればいいなぁ』という希望的観測をもっているわけですが、その願望と第三者が事業計画を見た際に『実際に利益を出せそうだ』と判定する根拠とは全くの別物です。
起業家の夢や情熱、人間性といったものも多少は審査に影響しますが、それはあくまで際どいラインに立った時のプラスアルファ的な要素くらいだと認識しておいたほうが良いでしょう。
飲食店に限ってみても業種業態、コンセプト、立地、ターゲット、サービス、メニュー、販売戦略など世の中に1つとして全く同じ条件下での創業はあり得ず、さらに言えば融資希望額や自己資金、職務経験など起業家本人の個別条件も加味すれば、1000件の創業があれば1000通りの計画書ができるのが普通であり、万人に当てはまる計画書の見本など何の意味もなさないということが分かるはずです。
公庫の担当者側も提出された計画書を目にした際、口には出さずとも『また、どこかの見本の丸写しだな…』ということは瞬時に分かりますので、その時点で本人の事業に対する計画性の低さを疑われ、最初から大きなマイナスイメージのスタートとなってしまいます。
今回は高確率でスムーズに融資審査を通過できる強い創業計画書のつくり方について詳しくご紹介していきたいと思います。
担当者の方とのちょっとした駆け引きのコツも書いておきますので、ぜひ一発で希望額の融資をつかみ取れるよう参考にされてみてください。
① 計画書を2部構成にする
いきなりですが僕がおすすめする必殺技は計画書を『概要版』と『詳細版』の2部構成に分けて繰り出すという方法です。
ここでいう『概要版』とはいわゆる融資申請時の基本提出資料としてフォーマットが公開されている一般的な用紙1枚の創業計画書のことを指しています。
融資審査に落ちている人の大半はこの用紙一枚のみで申請し、内容はどこぞの見本の丸写し。他の添付資料も一切なく、売上予測などの数値も願望だけで根拠なし。面談も熱意だけで強引に乗り切ろうとするパターン。これでは確実に失敗されることを保証します。
公庫から提出を求められる創業計画書のフォーマットはあくまで『概要版』と割り切り、以下で紹介する『詳細版(本命の事業計画書)』を最初に完成させた上で、それに基づいて要点だけを抜き出してまとめた布石程度のものとして捉えておくべきなのです。
それなら『最初の申請時から詳細版も一緒に提出しておいたほうが、しっかり内容を吟味してもらえて印象も良くなるんじゃないの?』と思われるかもしれませんが、そうすると、その後の面談の際に詳細版に記した内容よりも深く突っ込んだことを尋ねられるリスクが高まってしまいます。
ここは自分への印象を心理的に操作する小さな駆け引きです。
最初の申請時にはあえて詳細版の存在は伏せておき、面談の当日に『提出済みの創業計画書の根拠を証明する資料』として詳細に仕上げた本命の事業計画書を追加で持参するほうが得策なのです。
これにより担当者は概要版の記述内容に沿って突っ込もう(その根拠について尋ねよう)と事前に用意していた質問に対する明確な回答を圧倒的な資料で突きつけられることで想定を上回るあなたの計画性に驚き、必ず好印象を抱きます。
また、あなた自身も詳細版の資料を事前作成しておくことで数字などの根拠が明確に理解できているため、面談で問われても臆することなく自信を持って受け答えができるようになっているはずです。
担当者にとっては虚を突くようで少し意地悪な方法かもしれませんが絶対に悪印象はありません。むしろ、最初から分厚い資料を提出しても『気合いは伝わるけど、ある程度は要点をまとめてから出してくれよ…』と逆に面倒に感じられてしまう可能性すらあります。
初期段階では担当者に自分の計画レベルをあえて低めに見くびらせておき、面談の段階になって『言われなければ特にこの資料は表に出すつもりはありませんでしたが開業するのだから当然これくらいは自分で考えていますよ』ということを強烈に印象づけるところがポイントです。
詳細版の事業計画書を見せると担当者は十中八九『…この資料もお預かりしておいてよろしいでしょうか?』と尋ねてくるはずですので『あ…はい、それで良ければどうぞ』と見ていたものをそのまま預けてしまいましょう。
家ではもう一冊、予備を作っておけば良いのです。最初から準備しておいた予備を出して渡すよりも裏の意図を感じさせず自然です。
追加で持参した資料に興味を持ち、担当者が受け取りを申し出たということは決定権のある上司へのプレゼンに役立つと考えたからに他なりません。実際、その資料はどんなに熱い言葉を並べるよりも、閲覧した人の全てにあなたの事業への真剣な姿勢が伝わるものであるはずだからです。
これが僕なりの融資を成功へと導く鉄板の流れです。
それでは早速、肝となる事業計画書(詳細版)の作成方法について以下に解説していきます。
② 事業計画書(詳細版)の作り方
それでは融資対策の要とでも言うべき詳細版の事業計画書とは、どのように作成していけば良いのでしょうか。
以下に僕自身が創業時に作成した資料をベースにご紹介していきますので、同じ流れに沿って、内容をご自身の事業に置き換えながら計画書作成の参考にされてください。
ただ初めにお断りしておきますが、この事業計画書はあくまで僕個人が自己流で作成したものであり、プロの経営コンサルタントや社労士などの専門家の手によるものではありません。
他に追加したほうが良いと個人的に思われる資料があれば自由に追加していただき、不要だと思う資料があれば自己判断で削除してください。そして万一、この資料を参考にされた上で融資に失敗されても僕は何の責任も負えませんことを予めご了承ください(※逆にこの資料のおかげで融資がうまくいっても僕の懐には1円も入ってきませんので何卒ご理解ねがいます)。
1. 表紙
バラバラの紙で複数枚の束があっても情報が散らかってしまい印象が良くありません。ちゃんとした一冊の資料として表紙を付けた上でホチキスなどで綴じ、読みやすいように事業計画書は冊子の状態にしておくべきです。
タイトルは『店名(正式な店名ロゴが決まっていればロゴの表示)』と『事業計画書』の表記。表紙下部には作成日を入れ、公庫へ持参する際には面談当日の日付に変更しておきます。
タイトルを『創業計画書』ではなく『事業計画書』としたのは先に公庫に提出する紙一枚の書類が『創業計画書』という名称であるため、2つの資料が同じ名前だと紛らわしいので区別しているだけです。それ以外の意図は特にありません。
デザインの詳細はどうでも良いのですが基本的にごちゃごちゃ飾らずシンプルに仕上げたほうが真面目な印象が伝わって良いかと思います。
冊子のサイズは1ページA4(見開きでA3)がベストです。これは公庫で扱われている資料類がすべてがA4サイズに統一されているためです。
他の申請書類とサイズが違うとクリアファイルなどへの収納や持ち運びに不便だったり、冊子自体が小さいサイズだと文字が読みにくくなります。2つ折で冊子綴じしたときにA4サイズになるように作成しましょう。
2. 店舗基本情報
まず最初のページには以下のような『店舗基本情報』を見やすく箇条書きにしてまとめておきます。
現実にはまだ開店していないお店なわけですから資料作成時点で未定の項目については『未定』、『(仮)』、『検討中』、『取得中』、『導入予定』などと記しておいても構いません。
ただ、この事業計画書自体は公的な書類ではなく、あくまで『あなた個人の事業計画書』なのであり、ここに書いたからといって後から好き勝手に変更したって何も問題はないものなのです。
融資審査のために全く導入予定のない設備等を書くのは疑問ですが実際に開店したあとの店舗像を頭の中にリアルに思い描き、自店舗のグルメサイトや公式ホームページに掲載する基本情報を編集している感覚で極力、実店舗が既に存在しているつもりで書いていくと良いでしょう。
3. 店舗データ
次のページには以下のような『店舗データ』をまとめていきます。
店舗名や店舗ロゴについては由来や経緯の他、顧客に対してどのような意図や狙いがあるのかまで具体的に記入しておきます。ぶっちゃけ、ネーミングの意図なんて後付けで構いません。とにかく『適当に決めた!』や『友達が考えた!』ではなく、ちゃんと起業者の意図や狙いやこだわりがあるということをアピールします。
近い将来、グルメ雑誌の取材であなたのお店を訪れた記者に『店舗名の由来は?』と聞かれたときに『なるほど!』と思ってもらえるような格好のつく回答を考えておくつもりで、それらしいことを書いておけばOKです。
立地環境では周辺の集客に影響する施設(駅やショッピングセンターや大きな会社)情報の他、店舗前の通行者数(平日や休日の営業時間帯の交通量を計測したデータ)情報なども書き添えておきます。
ちなみに僕は実際に物件を最終確定する前に平日と休日の2回、それぞれランチタイムのメイン時間(12時~13時)とディナータイムのメイン時間(18時~21時)に物件前を通行する人の数を目視でカウントしました。
融資担当者の『店舗前の通行者数はどういった根拠で算出したのですか?』という(少し意地悪な?)質問にも『実際に物件前に立って平日と休日の時間帯別に通行者数をカウントしました。厳密には数日に分けて調査しないと信憑性が高いデータとは言えませんが普段の人通りの状況から見ても調査日はごく平均的な通行量でした。』と即答することで強い説得力があるからです。
最寄り駅のデータはインターネットなどで調べることができます。一日の乗降車数やターミナル駅であるなどといった基本情報の他、駅から店舗までの距離や駅に行くための生活道路道添いに店舗があるなど有利に捉えることのできる条件は全て記しておきます。
ただし、駅から遠い住宅地に店舗があるなどの場合はあまり意味がないので、そういったときは最寄りのバス停などについて書けば良いと思います。例えば『店舗は住宅地にあり駅からは離れていますが仕事帰りの周辺住人のほとんどが物件から徒歩1分の場所にあるバス停を利用しています。』といった具合です。
特性は周辺に競合店が少ない、メインターゲット層が多いなど立地特性として有利な点や店舗商圏内に潜在的なニーズがあることを推察できる理由、駅の改札口から看板が見えるなどといった宣伝効果など現実的な情報も含めて、そこで商売を始めると収益が見込めるという合理的な理由を思いつく限り記しておきます。
3. 業種業態コンセプト
次のページは業種・業態・コンセプトです。この3本柱の重要性については過去の記事でも紹介しましたが融資担当者が審査上で最も重視するポイントのひとつでもあります。コンセプト次第であなたの店が売れそうな店かどうかを客観的に判定しやすくなるからです。
業種業態については周知されていると思われるものであっても簡単な解説を添えておきます。例えばイタリアンバールの場合でも『イタリアンバールという業種業態』について全く無知な人にでも分かってもらえるようにどのような店なのかを丁寧に説明書きしておくのです。
もしかするとあなた自身にとっては常識でも融資審査をする関係者の中に1人くらい『イタリアンバールってなんだ?』と分からない人がいるかも知れないからです。
イタリアンバールがどんな業種業態か分からない人なんているわけがないと思われるでしょうが例えばこれが『コワーキングスペースを開業します!』と言われた場合ではどうでしょうか?
そんなの常識だから分かるという人もいれば、どんな業種業態なのか瞬時にはイメージできない人も多いのではないでしょうか。
コンセプトはメインコンセプトを主軸に商品(メニュー)や顧客(ターゲット)や店舗、接客、地域、ランチ、ディナーなどそれぞれについてのコンセプトを矛盾のないようにまとめていきます。
どれもメインコンセプトさえ決まっていれば難しく考える必要はありません。
例えば『ハワイへリゾートに来たような雰囲気の中で昼は喫茶と軽食、夜はお酒も楽しめるカフェレストラン』というメインコンセプトを立てた場合。
上記のように、それぞれメインコンセプトに沿った具体的なイメージ戦略やサービス内容を記していきます。計画書を読んでいるだけであなたがどんな店を作りたいと考えているのか、その店にはどんな個性があって、どんな人に売るためにどんな商品をどのくらいの価格でどんな風に提供するつもりなかといったことが明確に伝わってきます。
また立地条件がメインターゲット層に合致していることで公庫の担当者にも『このような店をその場所に出店するのであれば失敗の可能性は低そうだな』と認識してもらいやすくなります。
4. 代表者経歴
続いて代表者の経歴に関する紹介ページを作成しておきます。
自身の過去の職務経験(アルバイト含む)や調理師免許や簿記検定など店舗経営に関連する資格、一見は飲食に関連しない職歴でも例えばウェブデザイナーとしての職務経験があるため、ハイスペックな店舗ホームページを自力で作成するスキルがあるなど少しでも有利さをアピールできる点は全て記しておきます。
その他、週1回の料理スクールに1年間通っていた、2週間の海外料理研修プログラムに参加した、学生時代に1年間のアメリカ留学経験があるので英会話が堪能(外国人のお客様に対応できる)など、仕事でなくても役立つかも知れない経験や特技があればそれも書いておくべきです。
学歴は大学の商学部や経済学部を出ていればマーケティングや経済の仕組みに関して一定の知識があるという評価をもらえるかもしれませんし、調理師専門学校などを卒業していれば基礎調理技術や衛生管理面に関しての信用を得ることができます(※学歴が融資審査に影響することはありませんが店舗経営に有利な知識や経験があればプラスに作用します)。
5. 売上シュミレーション
次はコンセプトとならび重要視される売上シュミレーションのページです。
まず上記に関して店舗の基本情報から書き出していきます。
客単価はメニューの売価や一品あたりのボリュームなどを根拠にランチやディナーでそれぞれ想定しているもの、席数は仮押さえしている物件のホール面積やレイアウトイメージから現実的な数がほぼ決まっているはずです。営業日数は30日から定休日を引けば算出できます(休みを交代で回すなど定休日を設けない場合は30日としておきます)。
書き出したそれぞれの数値を上記の計算式に当てはめ、月間の予測売上高を導き出します。
ちなみに公式内の『 0.8 』という数値は満席率です。
満席率とは客席稼働率とも呼ばれ、30席あるレストランが満席状態になったとしても実際に30名のゲストが来店している(満席率100%)ことはほとんどなく、4名テーブルに3名での来店、カウンター席の一部が荷物置きに使われているなど、いくつかは必ず死に席ができてしまうことから満席時の実質来店者数を割合にして表したものです。この計算式では満席のときに8割の稼働率である場合を想定しています。
この月間売上高の予測回転数の部分を以下の6パターンで計算し、それぞれの場合について記しておきます。
それぞれのパターンに当てはめる回転数は店舗の規模や立地条件によって値が大きく変わりますので上記はあくまで参考値としての増減例です。
例えば席数がカウンター8席しかない駅ナカのうどん店などでは日中の回転数は20回転以上にもなり、逆に夜は少し減って10回転程度になったりする場合もあります。
とにかく迷ったときは自店舗を頭の中でリアルに営業してイメージしてみてください。大切なのは明らかにありえないような数値に設定しないことです。
売上予測は甘めに計算するよりもシビアに見積もっている方が信頼度は高まります。かといって利益が出ない想定では問題ですのでバランスの良い数値を見つけ出して無難にまとめておくのがベターです。違和感のない範囲内で数字上の辻褄さえあっていれば融資審査に支障はありません。
現実の経営では計算式のように単純にはいきませんし、開業後の売上が実際にどうなっていくかなんてことは誰にも分かるはずがないわけで、事業計画書の段階でこれくらいまでの説明ができれば予測数値の根拠としては充分に納得してもらえるはずです。
6. 月次収益シュミレーション
月間予測売上高の数値が出せたら次に月次収益予測についてのページを作成します。
上記の項目うち、家賃については確定しているはずです。他の経費については適当な数値ではなく、ひとまず目標とする標準的なパーセンテージで当てはめていきます。
なお、販管費とは販売管理費の略で広告宣伝費や通信費、修繕費や消耗品費などの『家賃、水道光熱費、人件費、食材原価以外のあらゆる諸経費を統合したもの』と考えてください。
上記が正しく計算できていれば月次収益予測の金額は以下の通り、月間予測売上高の20%に相当する金額となっているはずです。
そして、この20%の収益の中から融資の月額返済(最大10%まで)を行った上で月々の純利益を10~15%程度づつ確保できるという事業プランにまとめておきます。
この月次収益予測も先の売上シュミレーションで出した6パターンの状況別に、それぞれ出しておくようにしましょう。
月間予測売上高が低くなってくると金額を変えられない家賃(固定費)の割合が10%を超えてくるはずですが調子が悪い場合でも最低10%程度の収益は確保できるように数字を調整しておく必要があります。そうしておかないと売上の調子が悪い月は返済ができないという理屈になってしまいます。
7. モデルシフト
人件費を28%に収められる根拠としてモデルシフト表も作成添付しておくことで計画書の信憑性と説得力がより一層高まります。
もし社員を雇用しているのであれば固定月給を設定し、PA(パート・アルバイト)は地域によって最低基本給が定められていますので必ずその額を上回る時給に設定しておきます。
いくらモデルシフトとはいえ、明らかに労働基準法に違反したシフトを人件費の根拠にするわけにはいきませんので、原則的には1日最大8時間、週40時間以上の労働にならないよう慎重に仮シフトを組んでいきます。なお、シフト表の従業員氏名は自身の欄以外は社員1やPA2などとしておけば大丈夫です。
諸条件を満たした上で月間の人件費が月間予測売上高の28%以内にきっちりと収まっているモデルシフトになっていれば資料としては完璧です。もちろん、実際にオープンしてからモデルシフトとは違う形態に変わったとしても何も問題はありません。
8. 開業資金シュミレーション
最後にまとめておくべきなのが開業資金シュミレーションのページです。融資申請をした金額に対する根拠を示す重要な項目となります。
例えば公庫に300万円の融資を申請した場合、なぜ『300万円』という金額の申請に至ったのかという根拠を示す必要があるわけです。ただなんとなくでは認められないのです。
計画の内容によっては自ら300万円を申請していても逆に公庫担当者の方から『この計画だと300万円ではなく、500万円を申請しておいたほうが良いのでは?』と増額をすすめられるようなこともあり得ます。
なぜなら公庫側も融資する以上、あなたに成功してもらわないと困るからです。
各項目ごとに可能な限り根拠を証明できる資料に基づいて必要な金額を計上していき、最終的に出た開業費の総額から手持ちの自己資金を差し引いた額こそが融資申請すべき金額となります。
公庫の場合、この融資希望額が自己資金の倍額までに収まっている必要があります。つまり、必要な開業資金総額を900万円と算定した場合、用意すべき自己資金の目安は300万円(1/3)~ 450万円(1/2)程度となり、それだけの自己資金を用意できていれば不足分である500万円 ~ 670万円くらいまでなら融資によって補える可能性が高いといえます。
なお、これらの費用算出の元になった根拠資料(内装業者の施工見積書や家主との物件の仮契約書、購入予定の厨房機器や家具、食器などの商品リストなど)もあれば全てコピーし、事業計画書の最後にまとめて綴っておきましょう。
さらに店舗の完成デザインを立体的に描いたパースや店内のレイアウトイメージが分かる平面図などの資料もあれば追加しておきます。
③ 資料作成は読みやすく
これまでの内容を全てまとめますと、おそらく表紙を含めて10~15ページの分厚い冊子になっていることかと思います。
ちなみに僕がこの事業計画書を作成して公庫の担当者に見せた時には目を丸くして驚かれ『これほど完璧な事業計画書は今まで見たことがないです!』と太鼓判を押されました。
資料はノートに手書きしたものでも努力が伝わって良いのですが、どうしても手書きでは読みづらく、後から修正や変更が加えにくくなってしまいますので、はやり事業計画書はPCでの作成をおすすめします。
WordなどのワープロソフトやExcelに代表される表計算ソフト、PowerPointやIllustratorなど自身が扱い慣れているソフトで構いません。
判読しやすいフォントの活字と表などで構成された読みやすい資料作成を心がけてください。
事業計画書の準備に関してはこれで完璧です。何も言わなくてもこれだけの資料を準備してきたというだけで事業への真剣な姿勢と熱い思いは充分過ぎるほどに伝わるはずです。
あとは担当者の方に人間的に嫌われないよう、落ち着いた身だしなみと丁寧な言葉づかいで接していれば、もう満額融資は勝ち取ったも同然です。
1万字を超える長い記事となってしまいましたが、この情報が事業計画書の作成について悩まれている誰かのお役に立ちましたならば幸いです。
④ 要点まとめ
※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。
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