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漫才素人の会社員2人が #M1グランプリ に出場した話

漫才素人の会社員2人でコンビを組み、「M−1グランプリ 2024」に出場しました。結論を先に書くと、1回戦敗退で何の爪痕も残せませんでした。「めちゃくちゃ悔しかった」と「びっくりするほど楽しかった」の気持ちが両方あります。

自分が応募する際に「過去の経験者の情報」を検索するもほぼ見つけられずちょっと困ったので、「これからM-1に応募される方の参考になれば……」という気持ちで情報をまとめてみます。

漫才の知識が豊富な方からすると、未熟さが目に余るかもしれませんが、”あくまで素人の体験談”としてご覧ください。


どういう人なのか

そもそもこれを書いている人がどんな人間かがわかると各情報をイメージしやすいと思うので、ざっくりと記載します。

私(たけべ)

  • IT企業勤務の30代会社員

  • 神奈川生まれ、東京育ち

  • お笑いは「たまに見る」程度で、決して詳しくない

  • M-1に応募するまで、漫才の経験はゼロ

相方(くまさん)

  • イベント会社勤務の30代会社員

  • 愛知生まれ、京都を経て東京へ

  • お笑い大好きで、めちゃくちゃ詳しい(と、たけべは思っている)

  • 漫才の経験はゼロだが、高校生の頃に学祭でネタを書いたことあり

そんな2人がコンビを組み、実際に出場するまでに起きたことを時系列で並べてみます。

動画を撮りながら練習しているときの1コマ
(これは動画ではありません)

準備のタイムライン

  1. 相方を見つける

  2. 目標を決める

  3. ネタの方向性を決め、ネタ作り

  4. 他者にフィードバックをもらいながらネタ調整

  5. ひたすら体に叩き込む

  6. 応募

【1】相方を見つける

M-1に応募する際の最初のハードルは「相方を見つけること」で、これが結構むずかしいと思います。
私は長年の友人かつ「面白い!組みたい!」と思うくまさんと組めたのでラッキーでしたが、「一緒に組もうぜ」と伝えるときは告白のごとく緊張します。誰でもいいと思って声かけてないからね。

また、「記念受験」のような形であればそこまで難しくないと思いますが、私は「絶対に結果を出す」という気持ちだったので、ネタ合わせの頻度も高く各種準備にかなりの時間を要しました。そのため、「それだけの時間を一緒に費やしてくれて、ネタが面白くなるようにこだわってくれる人」ってあまりいないかも、と思います(特にアマチュアの場合)。

なお、くまさんは、長年の付き合いのため気を遣わなくてよいところと、ネタ調整時に「面白くない」と思うと絶対に頷かないところに「いい相方だなぁポイント」200000点差し上げたいです。

【2】目標を決める

くまさんからOKをもらい、2024年1月に「M-1に出場する」と決めたものの、何から始めればいいかがまったくわからない。私の検索力不足かもしれませんが、過去の体験談もあまり見つけられません(プロの芸人さんの情報は多少出てきますが、素人の一回戦の経験談があまり無いという)。

そこで、Googleドキュメントに「M−1出場時の目標」「応募までのタイムスケジュール」「練習頻度の目安」「今後発生するタスク」を書き出し、計2時間の打ち合わせをZoomで実施しました。

私たちは「ナイスアマチュア賞獲得」という目標を定めました。YouTubeに動画という形で残せるところと、初出場で1回戦を突破するのは狭き門ですが、初出場でナイスアマチュア賞を獲得しているコンビは存在するので、そこも後押しになりました。

【3】ネタの方向性を決め、ネタ作り

続いて、「どんなネタがよいか」や「ボケとツッコミはそれぞれどちらが担当するか」といったものを決めていくために、自分たちが書けそうなネタ案を書き出してみました。

当時のメモ。
自分たちが話せそうなテーマを書き出し、その中から選んだ5つのネタ台本を実際に書いてみます(今気付きましたが、「ツッコ」の舌足らず感)

台本が完成したら、読み合わせをして、それぞれの言葉として自然になるよう調整を加えます。また、何度も声に出して読むことで「ちょっと説明口調すぎない?」「口で言わなくても動作で表現できそう」といった修正点が見えてくるので、それらを反映させてゆきます。
1回戦は「1ネタ2分」という短さのため、この調整を何度も加えて磨いていきます。

なお、私は「起承転結」の考え方でネタを作ろうとしましたが、2分で起承転結をつくるのは難しく、「漫才」というのはまったく別の脳みそを使うんだ、と学びでした(漫才素人の発想すぎてお恥ずかしいのですが)。

【4】他者にフィードバックをもらいながらネタ調整

3で完成した台本の中で、「特に自分たちっぽいな」と感じたネタ2本に絞り、脚本家の友人・お笑い好きの同僚や長年の友人といったメンバーにネタ見せをして、フィードバックをもらいました。

未経験でネタをつくり、「そもそも伝わるのか?」という不安からのスタートだったので、身内とはいえ笑ってもらえたりフィードバックをもらえたりすると自信につながります。

ネタ見せ時のスマホのメモ
(同じネタを作り直す可能性を残したいので、一部モザイクをかけています)

【5】ひたすら体に叩き込む

ここから先は、自分たちとの戦いです。ダンス用の鏡張りのレンタルスペースで、動き・発声・2分以内に収まるかを、ひたすら練習して調整してゆきます。スマホで動画を撮り、自分たちの動きが「客席から見て面白いか」の確認も行いました。

台本完成後も、どうしても私が噛みやすい部分の変更などを行い、最終形に仕上げていきます。

余談:その他の対応タスク

  • 応募用写真の撮影

    • クオリティにこだわりたかったので、カメラマンの友人に依頼

  • 衣装合わせ

    • 「きちんとした衣装を着ている方がいい」という前情報から、友人ご夫婦に選んでもらいました

    • プロの男女コンビの衣装を見比べつつ、「男女コンビだがカップルに見られたくない」「ボケを目立たせたい」といった無理難題に応えてくれた友人に感謝

  • 追加のネタ見せ

    • 2パターンで迷ったときは、ネタ動画をLINEで友人に送って、どちらの方が良いか意見をもらいました

  • 他の方の1回戦を観覧し、ステージの様子や会場の雰囲気、適正な声量を確認

    • サンパチマイクがどのくらい声を拾うのかがわからなかったため、これは行ってよかった!

【6】応募

過去の募集期間が6月末〜8月末だったことから、2024年も同じくらいの時期に募集が開始すると想定し、必要物を準備します。
ただ、「専用エントリー用紙の印刷」と用紙に記入が必要な「1回戦の候補日決め」はエントリー開始後にしかできないことなので、募集開始直後の週末に相方と合流して、一緒に用紙を埋め、投函しました。

綿密に準備したつもりでしたが、我々のエントリーナンバーは196。つまり、1桁台の方は本当に速達レベルで即時申込みをしているのだと思います。すごい。

なお、1回戦の日程は「出場日の1週間前にサイトにて発表」されることと、希望日以外の出場可能性もあるため、自分たちの出場日が確定するまでは毎日M-1サイトにアクセスして自分たちの名前が掲出されているかを確認することとなります。
(8日程も休暇の仮押さえをし、1週間前に休暇申請をするワガママさになってしまいましたが、働きやすい職場に圧倒的感謝です)

1回戦本番

そして迎えた、本番当日。会場の情報が何もわからなかったため、気付いたことをババっと書きます。
なお、私が出場したのは、1回戦の1回目と再エントリー共に、渋谷のシダックスカルチャーホールでした。

サテンシールのスタッフパス。うれしい
  • 待合室があまり大きくないからか、出場者は5組ずつ10分おきに集合するため、1階には受付待ちの漫才師がいる

  • 1階で出場費をお支払いすると、サテンシールのスタッフパスが渡される

    • 1回戦の1回目の出場時はシールに「エントリーNo.」が印刷されているが、再エントリー時はその場で手書きで番号を記入してもらう

  • 観覧者と出場者が同じエレベーターで8階まで移動するため、ややカオスな雰囲気

  • プロの芸人さんは、衣装を手持ちで持ってきて、待機時間に着替えることが多い

    • 私たちは初めてで「現地で着替えられるのか」がわからなかったため衣装を着た状態で会場に向かいましたが、真夏のためめちゃくちゃ暑かったです(現地で着替えるのがおすすめ)

  • 出場者はパーテーションで区切られた空間に入る

    • ここで20分ほど待機

    • 出場者の8割ほどが壁に向かって小声でネタ合わせをして出場時間を待つ(私は「しゃべると頭からセリフが抜け落ちそう」と思ったので、ネタ合わせはせず雑談をしていました)

    • 芸人同士顔見知りの方が多いようで、「お疲れさまです」「髪切った?」のようなやり取りも頻繁に行われており、素人はかなりアウェイである

  • 舞台袖へと移動

    • 「声が響くので、ネタ合わせは小さな声でお願いします。この場所にはもう戻ってこないので、荷物を全部持ってください」と言われ、移動

    • 出場順に壁に沿って並び、出番を待つ(ここでもネタ合わせをしている方が半数くらい)

      • 自分の前の組のネタは見えはしないもののしっかり聞こえます(私は緊張で上の空だったけども、相方は前の組のネタをしっかり聞いていて舞台慣れの差を感じました)

    • 自分たちの出番

      • 運営の方が出番を手で示してくださるので、指示があったら舞台へ飛び出していく

      • このタイミングで初めて客席を見る(ステージ裏にモニターなどはなかった)ので、お客さんの入っている数に「おお」と内心驚く

      • 観客席の様子はしっかり見えます(お客さんの表情も)

      • 東京・渋谷のシダックスカルチャーホールは、固定席127席の小さめの会場ということと、サンパチマイクが優秀なため、しっかり声を出せば後ろの席でも「聞こえない」というのは起こりづらい

      • 適度に笑ってくれるお客さんはめちゃくちゃありがたい

      • 2分5秒を過ぎると警告音が鳴り、2分15秒を過ぎると会場が暗転し強制終了となる(幸い、私たちは時間内にネタをやり切りました)

      • ネタが終わると、出てきた位置と逆側の袖にハケて、荷物を持って退出(これにて出番は終了)

結果発表

結果発表は、出場日当日の19:00〜20:30頃にインスタライブで行われます。その後X(旧Twitter)にも合格者一覧が投稿されるのですが、「当日にもう結果がわかるの?」はけっこう周囲に驚かれました。

  • 私たちは共通の友人宅のお邪魔させてもらい、相方とともに結果発表を見ることに

    • 結果は、前述の通り敗退。番号が呼ばれない悔しさたるや

  • エントリーNo.3000以内の場合は、1回戦敗退の場合も再エントリーができるので、自分たちが敗退したことが判明すると、すぐにフォームから「再エントリーの出場希望日」を選んで送信

    • なお、再エントリーの出場ができるかは、応募多数の場合抽選で決まるため、サイトを随時チェックして確認します

  • 私たちは幸い「再エントリー」ができ、1回戦の2回目の出場も果たすのですが、ここでもあえなく敗退

    • 1回戦の2回目の出場は再エントリーの方のみだったため、体感として1回目よりもプロが多めでした

M-1に出場してみて

悔しいし、「やはり素人の限界かな……」と感じつつ、楽しかった!!!!!です。
神回と言われた2024決勝を見て、「ここにいる方々はすごすぎる」と感じ、そこに敵うとはまったく思わないけれど、「1回戦でもっともがけたはず」と感じました。

※この記事が「M-1グランプリ」に応募する方のなにかの参考になったら嬉しいですが、記載情報はあくまで私の体験談かつ2024年時点のものですのでご注意ください。

なお、2024年で学んだことを活かしたいと感じたため、2025年も同じ相方と再びM-1に挑戦することにしました。「面白いと思われたい」「笑わせたい」「失敗したくない」という邪心まみれの2024年でしたが、今年はもっとシンプルに、「目の前のお客さんがクスクスする2分間をつくる」ところに注力したいです。

コンビ名は引き続き「東京メリノウール」です。「ボケとツッコミをどちらが担当するか」から全部仕切り直しで準備していきたいと思いますので、今年もよろしくお願いします。




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