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なんて巨大で小さな絵

正直に告白すると、その日までエドワード・ゴーリーの本は読んだことがなかった。

いや、だって、明らかに怖い。
大して文字も読めない時分から、その本たちは恐ろしかった。
なんか黒いし、暗いし、平気で子どもがひどい目にあうし。
(文字なんか読めなくても絵でわかる)

シュールとか、ナンセンスと呼ばれるようなジャンルを楽しめるようになったのも
考えてみると最近で、だから絵は知っていてオシャレなのは承知していたけども、
内容まではカバーできていなかった。


だけど、原画展があると聞いたら、そりゃもうどうしても見たかったのだ。
機会があるのなら、見なければならないだろう、と。


大体ハガキサイズ程度の紙に、執拗に、執念深く刻まれるペン画の数々。
500倍くらいに引き伸ばしても充分に見られるのだから、
その圧縮率たるや推してしるべしだろう。

どのくらい緻密かというと、作者本人も嫌になって5年間放置していたくらいだ。
それでも、そんな絵がわんさかある。
中にはハガキサイズどころか名刺サイズくらいの本当に小さい絵もあるけれど、
どれも実に丁寧に細部まで描き込まれている。

どんなに小さくても、壁の模様や、服や小物のデザイン、それぞれのキャラクターのなんとも言えない表情など、ちゃんとオシャレで可愛いく、魅力的なのがニクい。
このサイズじゃないと描けないだろうなという気もしなくも無いけれど。


愛用していた道具類の数々も展示されていた。
当然のようにルーペもあった。
が、何かのオマケか、おもちゃのような適当なシロモノでびっくり。
(普段は眼鏡だったようなので、あんまり立派なものは使いにくかったのかもしれないし、据え置き式のでっかいやつが別にあったのかもしれない)

作風がデビュー当時から一貫して変わらないのもびっくり。
おおむね子どもがひどい目にあっていくスタイル。
どこの出版社でも「これはちょっと…」と断られて、
最終的に自分でレーベルを立ち上げて売り出すんだから、
その熱量や自信は本当にどこから来たんだろう。
(しかもちゃんと世界的な作家になるんだから大したもんだ)


なるほど。
結局、世界的なアートというものは、
圧倒的な熱意と仕事量、
嫌な時にはキッパリ休むマイペースさによって生まれてくるものなのかもしれない。


なお、絵は大変ユニークで魅力的であるが、
物語の内容については、向き不向きあるな…とは、今でもおもう。

ただ、猫だけは絶対にひどい目にあわないという徹底した姿勢と
家族に対して一言ありますか?という質問に
「もっと物わかりのいい猫と暮らしたい」といった点は非常に共感が持てた。
わかりみが深い。

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